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著者紹介
橋本健二(1959〜)
石川県生まれ。東京大学教育学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。1988年から静岡大学で教員となり、2002年から武蔵大学社会学部教授、2013年4月より早稲田大学人間科学学術院教授となって現在に至る。
主な著書
『現代日本の階級構造――理論・方法・計量分析』、東信堂, 1999年。
『階級社会日本』、青木書店, 2001年。
Class structure in contemporary Japan, Trans Pacific Press, 2003.
『階級・ジェンダー・再生産――現代資本主義社会の存続メカニズム』、東信堂, 2003年。
『階級社会――現代日本の格差を問う』、講談社・講談社選書メチエ, 2006年。
『新しい階級社会新しい階級闘争――「格差」ですまされない現実』、光文社, 2007年。
『居酒屋ほろ酔い考現学』、毎日新聞社, 2008年。
『貧困連鎖――拡大する格差とアンダークラスの出現』、大和書房, 2009年。
『「格差」の戦後史――階級社会日本の履歴書』、河出書房新社, 2009年。
『階級都市――格差が街を侵食する』、筑摩書房・ちくま新書, 2011年。
目次
- 「格差社会」から「新しい階級社会」へ───序に変えて
- 第一章 分解した中流
- 第二章 現代日本の階級構造
- 第三章 アンダークラスと新しい階級社会構造
- 第四章 階級は固定化しているか
- 第五章 女たちの階級社会
- 第六章 格差をめぐる対立の構造
- 第七章 より平等な社会を
概要(ブログ主によるまとめ)
橋本健二の本の存在を知ったのは、ユーチューバーの田中キミアキの動画からである。
田中キミアキは、自身の動画がマンネリ化してきたり、登録者が減る場面で、定期的に派遣社員や非正規雇用者を煽る動画をアップすることで知られる。
その時に使われるのが、本書『階級社会 現代日本の格差を問う』や続編の『新・日本の階層社会』である。これは一種の悪用と言えるかもしれない。
時代を作った橋下健二氏のいい時期の名著
だいぶ前の書籍だが、2000年代の彼のこの著作は“格差社会”という流行語を作り出しただけあって、いまだに読むに値すると考えている。
本書が発行された2006年前後は日本国民は、まだまだ中流意識が高く、格差という言葉は理解されていなかった。格差社会という見出しが、メディアに踊ったのは、リーマンショック後の2008年以降である。その起点になった書籍が本書である。
本書の優れた側面として“アンダークラス”という言葉を紹介したところがある。
この“アンダークラス”は、実は日本社会に“昔は存在していた”階層である。
それが高度成長期になって、一瞬消えた時期がある。1970〜1990年代である。そして、2000年代の不況時に復活した時に、新しい強力な負の作用として社会に影響を与えかねないクラスとなった。
キャラクター化した「アンダークラス」
このアンダークラスは、職業や地域に密接に関係しており、それは人々の“金持ちへの妬みのパブリックイメージ”に対して、絶妙な裏付けとなっている。
それを、橋本氏は梶原一騎の『あしたのジョー』『巨人の星』や歌謡曲、山田洋次の映画などに言及しながら、注意深く触れていった。
そもそもこのアンダークラスは、このようにキャラクター化しやすく、芸術作品に人物として登場しやすかった。そのため、用語としても定着しやすく、その結果『格差社会』の言葉の流行に寄与することとなった。
Q:どのような人が読むべきか?
A:ニュースのバイアスに騙されやすいという自覚がある人。
本書で解説された“階級社会”は、実は本当に世の中に存在しているのかは、私はわからないと思っている。そこまで緻密な情勢調査は、政府でもできないし、人々の申告も収集できない。
また、経済的な収入系の調査も、どこまで信用できるのかわからない。何故なら、日本という国は、国民の内情を他の国に比べて集めきれていない国の代表だからだ。
日本は格差が実は少ないと言う考え方もある
橋下氏の本の脆さは、何もデータ使い方だけではない。
海外を少しでも旅して回った人間から見ると、日本は経済格差は全然ない国にも見えなくもない。少なくとも役員が10億円クラスの報酬をもらう慣習があるのに比べて、日本の役員報酬は平社員の2倍行くか行かないかだ(上記の動画参照)。
そう考えると「日本の格差」は、実質的な経済格差はどちらも地を這うようなレベルの差でしかなく、どちらかと言うと、意識だったり、将来の安定性という社会保障の面での格差という話である。
橋下氏は感情面では的確な指摘をしている
しかしながら、この橋下氏の主張は重要なものとして扱われた。
それは、何故か?
それは、私が概要でも触れたように、ネット社会で圧倒的に“炎上のアルゴリズムに乗りやすかった”という点にある。
炎上は、各種ソーシャルメディアが仕込んだ感情を計算式化したアルゴリズムである。
実に巧妙にできている。
要は、人々がその情報に感情を持っていかれやすかったのだ。
それはある意味で正しいのだ。
Q:曰くつきだが注目すべきという意味か?
A:ここまで言ったように、読んでみるといろいろ確かに疑問を感じる点は多い。
ただ、理論としては捉えにくいものを、一瞬確かに捉えた、という感覚が本書を支配しているのはある。これは間違いない。でも、繰り返し炎上しやすいというのは、少し気になる。
広まっているが理論として落ち着かないのは、やはり不備が大きいのは待ちがない。
Q:なぜそんなに距離をおこうとするのか?
A:ははは。まあ、そうなるのもしょうがない……な。
だが、社会学や教育学、栄養学というのは、えてしてそういうもので、スッキリ信用できたり、評価が定まったりするものはほとんどない。
何故なら、医療の外科技術や一部の高額のような、圧倒的な需要欲求とは違い、社会学や教育学、栄養学は、学者の飯の種の側面が強く、助成金や学者の地位のための側面が強い。
人々から懇願されて構築されていく学問ではなく、これは悪いことではないが、あくまで権威産業の要素が強い。現に、社会学者は企業から献金を受けることはほぼない。
日本の社会学は、かなりの確率でのちのち覆される
つまり一言でいうと、このような学問はエビデンスにならない。そしてあとで覆されやすい。
とはいえ、私は素人だから、あんまり大業なことは言えない。でも、これだけ影響力を持つ本なので、なおさら否定的な研究もされやすい。この研究の対象は常に社会的に変化し続けるので、新しい理論が必要にはなってくるはずだ。
Q:読む意味はないのか?
A:いや、それはある。
本書は少なくとも、日本社会のムードをしっかり掴んだ時期がある。
つまり、トレンドの主体としては有効な時期があった。そして、それは今もある程度有効だ。
例えば、自分や自分の家族が、外からどういうふうに見られているのかを判定できる数少ないツールとして、物凄く重要な書籍である。これは間違いない。
見られる身分。これが実質的な社会身分だと言えなくもない。
そういう意味で、とても重要でその効果はあと10年以上はあると思う。
下手に正確な本より、こういう感情から生まれた本は、役に立つときは圧倒的に役に立つ。
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