『賢明なる投資家』ベンジャミン・グレアムは、本当に今でも読む価値があるのか? 権威古書本ビジネスを暴露しつつ、注意深く読む

オーディオブック

本書はオーディブルで無料で読めます

前提:古書権威本の版権ビジネスの闇

なぜ、このようなページを作ったのかを最初に言っておきたい。

世の中には、というか世の出版社には、“古い激安版権を買取り、それを課題に評価して再度収益を得る”というビジネスモデルがある。実は私もこれに従事していた。

例えば、電子書籍版の『星の王子さま』『吉川英治』関連の書籍などは、版権が乱立しており、それらに出版社がアルバイトを起用してレビューを書きまくって、売り上げを挙げている。

つまり、“その本にあった権威を、最大限に活用する形で、目立たせて売る”という手法だ。

そして、私はこの『賢明なる投資家』という書籍もその類に入ると推測していた。

ということで、果たして本書はそのような古書権威本の版権ビジネスの闇』の部類に入るのか?を、本書を2度再読した検証結果を元に、述べていきたいと思う。

著者紹介

ベンジャミン・グレアム(Benjamin Graham, 1894年5月9日 – 1976年9月21日)は、アメリカ合衆国の経済学者。今日でもよく「バリュー投資の父」「ウォール・ストリートの最長老」と呼ばれるプロの投資家であった。

グレアムが最も知られているのは、億万長者の投資家ウォーレン・バフェットの育ての親としてであろう。バフェットはコロンビア大学でのグレアムの教え子の中で唯一A+をもらった生徒である。他によく知られているグレアムの生徒にはウィリアム・ルアーン、アービィング・カーン、ウォルター・シュロス、チャールズ・ブランデスがいる。

目次

  • 投資と投機―賢明なる投資家が手に入れるもの
  • 投資家とインフレーション
  • 株式市場の歴史―一九七二年初めの株価
  • 一般的なポートフォリオ戦略―保守的投資家
  • 防衛的投資家のための株式選択
  • 積極的投資家の分散投資―消極的な方針
  • 積極的投資家の投資―積極的な方針
  • 投資家と株式市場の変動
  • 投資ファンドへの投資
  • 投資家とそのアドバイザー
  • 一般投資家のための証券分析
  • 一株当たり利益に関して
  • 上場四企業の比較
  • 防衛的投資家の株式銘柄選択
  • 転換証券とワラント
  • 特別な四社の例
  • 八組の企業比較
  • 株主と経営陣―配当方針
  • 投資の中心的概念「安全域」

まえがきとあとがきには、日本版はウォーレン・バフェットが担当(かなり長い)

結論:読むのは時間の無駄(ただし専門家は後に必要かも)

これは私のあくまで個人的な考えだというのを断っておく。

本書を読むのは時間の無駄である。ただし、証券の歴史家や一部の専門家にはまだまだ需要があるかもしれないと思った。だが、一般の個人投資家にはどう考えても不要である。

よって、本書を一般投資家に買わせようとしているビジネスモデルは、かなり疑い深い。

同書は、半世紀以上前に書かれた書籍の四版で、それでも1974年の書籍である。書かれている内容のネタバレになるが、そもそもこの頃の債券・社債は、平均して5〜7パーセント台だったはずだ

また、同書では何度も『ちゃんと配当金を払っている企業の株に限る』みたいな記述が出てくる。つまり、証券電子化以前の、戦後の株式投資において、ちゃんと提示した配当金を払っていない企業が多かったのだ。これは、今ではありえない。

これらによって、わかるのは現代とリスクの考え方が全く違うと言うことだ。

S&P500の生き残り平均年数は96年→12年:個別株の死

そもそも、そう言った法規やレギュレーション以外にも、市場の状況も大きく変わった。

本書が書かれた頃にはなかったS&P500(本書ではS&P180が出てくる)の、上場維持期間は、この2000年台からのたった20年弱で、96年から10年程度と、かなり短命になっている。

つまり、同書で語られるような、あるいはウォーレン・バフェットが2000年以前までやってきた個別株の長期ホールドという神話は、もう完全に崩れ去って久しいのである。

投資ファンドの戦略完全な時代遅れ

また、本書で語られる投資ファンドの戦略ももう完全なる間違いである。

同書では『規模の大きなファンドは買うべきではなく、中規模から小規模のファンドを買うべし』という方向性で、投資ファンドにそれなりのページがさかれているが、これを今やったら全財産を簡単に失ってしまう。

当時は、規模の小さい投資ファンドが、廃止されるというリスクがなかったのだ。

それに、資産規模が大きな投資ファンドで、指数に勝てるものが多く存在している現代とは、全く状況が異なる。

市場での取引に関する記述は1/3もない:個人投資家には無駄

また、本書は現在のように市場で株を買うよりも、市場を解さず株や債券を引き受ける手法が豊富だったためか、そのジャンルに関する記述が多すぎる。

例えば、転換権利付き社債などは、ほぼ現在は個人投資家が対象外である。

ただし、言っておけば、これはまだ存在する分野で、その道のプロが参入している。不動産取引でいう、破産後の競売のようなジャンルで、その道の人間にとっては、本書はまだまだ利用価値はあるかもしれない。

いかがだろう。短く『本書が個人投資家には不向きな理由』を書いてきた。

同書は、ほとんどが実際の過去の企業を例に出した検証結果を分析する書き方で書かれており、なおさらそこは今の個人投資家にとっては、ちんぷんかんぷん度が高い。

結論としては、“権威本ビジネスの闇”とまで言える騙しレベルで本書は販売されているとは、断言できないが、バフェットのあおりの帯などを見ると、謝って買っている人が多いと思う。

煽り系の帯の本書。バークシャーハザウェイ(バフェット)は、もうすでに個別株のバリュー投資からシフトチェンジをしつつある。

本書を読むなら、よく注意して欲しい。
できるなら、ぜひ『株式投資の未来』などの書籍を読むことをお勧めしたい。

関連記事:みんなが読み間違えてる伝説的書籍をざっくり解説「株式投資の未来〜永続する会社が本当の利益をもたらす」ジェレミー・シーゲル著 要約・概要

タイトルとURLをコピーしました