ここ5年でNo.1の名著。精神の闇から抜け出す最高のヒントを驚きとともに『平気でうそをつく人たち』M・スコット・ペック

オーディオブック

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著者紹介

M・スコット・ペック(1936-2005)

アメリカの精神科医・作家。13 年連続でニューヨーク・タイムズ紙ベストセラーにランクインした「愛と心理療法(The Road Less Traveled)」の著者として知られる人物であり、ベトナム戦争当時の米軍で9年間精神科医とした勤務した後、コネチカット州で心理療法家・精神科医として活躍。1978年に「愛と心理療法」を発表した後、非営利団体「コミュニティ・エンカレッジメント財団」を設立し、全米各地で講演やワークショップを行う他、文筆活動を続けた。

目次

  • はじめに―取り扱いに注意
  • 第1章 悪魔と取引した男
  • 第2章 悪の心理学を求めて
  • 第3章 身近に見られる人間の悪
  • 第4章 悲しい人間
  • 第5章 集団の悪について
  • 第6章 危険と希望

ブログ主による解説

翻訳者の名編集・名翻訳により、本書の魅力が強くなった

著者のスコット・ペックは、医大を卒業後に志願してベトナム戦争に軍医として勤務する。そのときに米軍に抱いた疑問がベースとなり、以後、軍人のメンタルケアのサポートを行うようになった。そのことが影響して、アメリカのさまざま経済問題やウォーエコノミー(戦争経済)などから、生まれる精神的な諸問題を生涯にわたって問い続けた人物である。

ただ、彼には大きな欠点がある。

それは、宗教観で福音派(キリスト教プロテスタント極右派)の影響を受け過ぎているために、“悪魔”という存在に囚われ過ぎてしまったという点だ。

本書の原書は、用語にかなり専門的な宗教用語が用いられており、思想にもその兆候が顕著に表れ、そのままでは非キリスト教の人々には難しい作りなっているという。

本書の日本語版では、翻訳権を獲得した森英明氏が、この宗教色を排除し、本書のエッセンスだけを日本人に向けて抽出するためにこだわった。そのため、ベストセラー作家であるにも関わらず、草思社に決まるまでは、なかなか出版先が決まらなかったという。

キリスト教右派の宗教色が強過ぎたと言われる米国版の『平気でうそをつく人たち』。その宗教観を、日本人向けに極限まで削ぎ落とし、効果を高めようとした翻訳者の森英明氏。彼の名采配と草思社のジャッジがなければ、このような名著にはならなかった。

聖書に次ぐ発行部数を稼ぐベストセラー作家のスコット・ペック

著者のM・スコット・ペックは、1978年に発行した「愛と心理療法(The Road Less Traveled)」がヒットし、ヒットの恩恵を最大に受けた1979〜80年には全米で聖書に次ぐ売上(学校導入本を含めて約400万冊程度だと言われている)を誇って、国民的な作家となった

だが「愛と心理療法」は日本ではほとんどヒットしていない。

これはおそらく、著者の独特の宗教性だろう。本書『平気でうそをつく人たち』は、翻訳者の森氏が翻訳権を取得するまで、手付かずだったのはそのためだったのではないだろうか。

全米で聖書に次ぐヒットとなった『愛と心理療法』だが、日本ではその宗教性のためヒットしなかった。

精神の病に、会話で真っ向から対峙した著者

本書の特徴は、心理学の本であるにも関わらず、言葉がダイレクトであるところにある。

通常、この手の本はユング・フロイトなどの心理学や、薬事的な治療法などを用いる医師によって書かれることが多いため、高尚で遠まわりな文章表現が一般的だ。

これはペック氏のカウンセリングが、実に真っ向勝負であることが関係している。

本を読むとわかるが、彼は自分のもとに訪れる患者に対し、今起きている精神の混乱をどんどんつまびらかに話していく。隠し事をしない。それゆえに、本書で語られる彼の言葉は、わかりやすく、感情を揺さぶられるものとなっている。

読者が精神の病を抱えた人々とシンクロするような文章

本書では6組のカウンセリング例が登場する。

そのどれもが、私の場合は感情移入がしやすく、まるでその患者や場合によっては治療しているペック自身とのシンクロするような感覚に襲われた。恐ろしさや辛さ、感情面を共有するのだ。

他人を傷つけるウソの正体を「ナルシズム(自己愛)と怠惰」だと発見

結末を先に書いてしまうと、本書でスコット・ペック氏が発見したのは、精神病にならない“普通の人間”の有害性に他ならない。

意図する・しない関わらず、他人を必要以上に痛めつける人間の動機の部分に“ナルシズム(自己愛)”と“怠惰”のいずれかが主要因としてある。そして、他人をこの“ナルシズム(自己愛)”と“怠惰”で傷つける人間は、むしろ世間では普通の人間として扱われており、彼らは自分から傷ついて精神を病んで病院に来ることがほとんどないのである。

こんな恐ろしいことを、著者は本書でさらしてしまったのだ。

Q:どんな人が読むべきか?

A:自分が精神的に苦しんでいるという全ての人だろう。

本書を読むことで、おそらくその多くの人が“誰がどのように自分を追い込んでいるのか?”を解読することができるようになると思う。だが、それと同時に、その自分を追い込んでいる人間を、目の前から排除することがかなり難しいことも同時に知るケースが多い

また、本書の最初でも警告しているが、本書を読むことで、他人を傷つける術をも身につけることになる。この点は、子育てをしている世代などは実に注意して読まなければいけない。

Q:読むことで精神的に強くなれるか?

A:多分なれる。

少なくとも、自身の精神を苦しめているものを推察・考察する能力は格段にあがる

だが、もともとメンタルが弱い人は、もしかすると本書を読み切ることができないかもしれない。特に冒頭のカウンセリング例は、刺激が強く、読むのに精神的な忍耐が必要だと思う。

私は、オーディオブックで本書を読んだので、途中で辛くても読み切ることができたが、これが、紙の本だったら確実に途中で本を読むことを断念している。そういう本だと思う。

こちらの本はオーディオブックで読むことができます。

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