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著者紹介
堀内都喜子
長野県生まれ。フィンランド・ユヴァスキュラ大学大学院で修士号を取得。帰国後は都内のフィンランド系機械メーカーに勤務する一方、ライター、通訳としても活動。
2013年よりフィンランド大使館広報部でプロジェクトコーディネーターとして勤務。
著書『フィンランド 豊かさのメソッド』(集英社新書)。『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書) 翻訳作品『チャーム・オブ・アイス~フィギュアスケートの魅力』(サンマーク出版)著書に『フィンランド 豊かさのメソッド』(集英社)『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ社)がある。
目次
目次(一部抜粋)
1 フィンランドはなぜ幸福度1位なのか
・2年連続で幸福度1位の理由
・「ゆとり」に幸せを感じる
・自分らしく生きていける国
・ヨーロッパのシリコンバレー
・「良い国ランキング」でも1位
2 フィンランドの効率のいい働き方
・残業しないのが、できる人の証拠
・エクササイズ休憩もある
・コーヒー休憩は法律で決まっている
・「よい会議」のための8つのルール
・必ずしも会うことを重要視しない
3 フィンランドの心地いい働き方
・肩書は関係ない
・年齢や性別も関係ない
・ボスがいない働き方
・歓送迎会もコーヒーで
・父親の8割が育休をとる
4 フィンランドの上手な休み方
・お金をかけずにアウトドアを楽しむ
・土曜日はサウナの日
・心置きなく休む工夫
・休み明けにバリバリ働くフィンランド人
・おすすめの休みの過ごし方
5 フィンランドのシンプルな考え方
・世界のトレンドはフィンランドの「シス」!?
・ノキアのCEOも「シス」に言及
・職場でも、シンプルで心地いい服を
・偏差値や学歴で判断しない
・人間関係もシンプルで心地よく
・コミュニケーションもシンプルに
6 フィンラドの貪欲な学び方
・仕事とリンクする学び
・2人に1人は、転職の際に新たな専門や学位を得ている
・学びは、ピンチを乗り切るための最大の切り札
・将来を見据えてAIを学ぶ人も多い
概要(ブログ主の勝手なまとめ)
GDPランキング44位(日本は2位)のフィンランドへの「隣の芝」バイアス
本書は、著者が日本からフィンランドに移住して大学に入学し、帰国した後に書かれている書籍である。書籍執筆当時は、日本のフィンランド系メーカーに勤務していたとのこと。
内容的には、思わせぶりな表題からはかけ離れた、単なる行動様式・文化の違いの内容がほとんどで、労働効率性の指標となる税制・所得率・休暇取得率などの具体的な記述はゼロである。
フィンランド人の“冷たさ”と日本人の“人情”を天秤に
だが、フィンランドの人の親族・家族以外へのドライさ(を様々な切り口で分析したもの)は、ある意味役に立つかもしれない。これは、私もよく欧州に行くのだが、全体的に北欧にあるものだ。
しかしながら著者の配慮が欠けているので、ただ単に日本と違う、というだけで、その憧れを羅列しているようにも見える。そしてその国民性が、あたかも労働と関係しているかのごとく定義づける。
確かに、日本人の儒教的精神や組織思考、礼節などは一部の企業の日本で言われるサービス残業の実態と密接につながっている。だが、これらはフィンランド人のドライさを伝えたからといって、置き換わるものではない。それよりは、やはり経済効率性を具体的な数字と施策で講じたほうがいい。
“自殺率が高い” “失業率も低くない” “国連の“幸せ度1位”統計を疑うフィンランド人”
だが、視点を変えると本書はかなり良書となる。それは、滞在記やインターン日記として、気軽にフィンランドの労働効率に関する考えを読む、という視点だ。
- フィンランド人はそもそも国連の幸せ度ランキングを信じていない
- 自殺率も実は高いという記述がある(会話だが)
- 労働効率性はIT技術によって高いが、所得が高いという表現はない
- 新卒者の就労の難しさと、生涯のスキル変動率が高い(安定しない)ことが書いてある
- フィンランド人の諦めの良さを書いている
などが、私が本書を読んだ、いいと思ったところだ。
日本は、アジアトップ・女性を差別する社会
話が脇に逸れるが、かつて1990年〜2000年代前半にかけて、カナダに移民する女性の90%以上が日本人だったことがある。まだ、経済力がそれほど落ちていない頃である。
そしてその移民した日本人女性の大半が、高学歴だった。
これは何かというと、日本という国での女性の生きづらさの表れである。
本書は、そういう女性たちに向けた書籍であるという側面もある。つまり、働く女性への理解、子育てや家事分業への欧州人のおおらかさが、むしろ緻密に書かれていると言っていい。
そういう意味で、「労働時間を減らしたい」という考えではなく、自分が暮らすいい国を探したい、という視点でもし読むなら、とてもいい本になる可能性は高い。
Q:どんな人が読むべきか?
A:まずは学生だろう。
著者はフィンランドで、自力で入れそうな大学を探し、外国人の助成制度を探し出して、留学をしている。これからの若い世代は、いい学歴を得るというよりは、こういうスタンスのほうが評価される世の中に生きていくことになるような気がする。
私が歳をとってから東京藝術大学に入学のもそうだが、自身でリスクを取りたい人で、自分の中になにか理想のようなものがある場合は、それが日本では実現できるかできないか、するとしてらどういう手段が必要かを、当たらなくてもこの著者のように自力で試行錯誤するのはいいと思う。
その次に、無駄とは言っても、経営者や要職の人間には読んでもらいたい。
日本人は、会社のムードでやはり苦しんでいるのは、事実だからだ。
Q:財務や経営の情報が入っていないが、やはりないとだめか?
A:労働時間をこの本のように減らしたいのなら、そこはマストだと思う。
フィンランド人がこのような労働スタイルを実現できているのは、おそらく、見積もりや月次の利益率などを自身で把握している、あるいは、会社の経営状況を熟知している。などの、背景の認識が絶対にあると思う。
そういう経営的な安心が前提にないと、これらのフィンランド人の自由な行動は、どの国でも企業の雇い主に対して、単なる傍若無人に行動であるのは間違いないからだ。
勘違いしている人が多いが、外国人が許容力が日本人よりもあるわけではないのだ。
日本人社員は、圧倒的に自社の経営状況を知らない。これまで利益率や自分の労働単価を知らなかったが故に、雇用の不透明さで、過酷労働をしている。
その硬い童貞を打ち破るには、もっと深掘りしたフィンランドの税制、労働収益率などの数値が必要だ。著者には、今後はもっとこれらの情報を開示してもらえることを願っている。
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