こちらの書籍は、オーディオブックとアマゾンオーディブルで読むことができます。
目次
- 序章 市場と道徳
- 第1章 行列に割り込む
- 第2章 インセンティブ
- 第3章 いかにして市場は道徳を締め出すか
- 第4章 生と死を扱う市場
- 第5章 命名権
出版社のキャッチコピー
刑務所独房のグレードアップ:1晩82ドル。
インドの代理母:6250ドル。
暴走する「市場主義」に警鐘を鳴らし、「善き生」を考える。
著者情報

サンデル・マイケル [SannDel, Michael J]
1953年生まれ。ハーバード大学教授。専門は政治哲学。ブランダイス大学を卒業後、オックスフォード大学にて博士号取得。2002年〜 2005年にかけて大統領生命倫理評議会委員。1980年代のリベラル・コミュニタリアン論争で脚光を浴びて以来、コミュニタリアニズムの代表的論者として知られる。類まれなる講義の名手としても著名で、中でもハーバード大学の学部科目“JUSTICE(正義)”は、延べ14,000人を超す履修者数を記録
ブログ主の勝手なまとめ
アメリカのリベラル派(民主党員)が、本質を忘れ、凶暴化する行動原理を解説
本書をざっくりと解説すると『賄賂を認めた』アメリカのリベラル(民主党員)の心の中を描いた書籍だと言える。なぜ、アメリカ人はここまで凶暴化してしまったのか? そんなことがわかる。
アメリカ民主党は、本来貧乏人のために誕生した
なぜ、この本に書かれているように、金銭の効率的な活用を、アメリカ人が怯えながら、過剰に悩んでいるフリをしつつ、受け入れてしまったのか? なぜ、こんなめんどくさいポーズをしなければいけないのか? そこには、アメリカの民主党の成り立ちを知る必要がある(本書には書かれていない)
本書を読む前提
本書を読むためには、アメリカ人の政治観の前提を知る必要がある。それは以下の通りだ。
共和党支持層と民主党支持層
アメリカ人は、二つに分けることができる。
それは、共和党支持層と民主党支持層だ。
日本と違い、アメリカの政権はこの二つの政党によって交互に支配されて運用されてきた。その背景には、必ずどちらかに票を入れるアメリカ国民の心の動きがある。
共和党支持層:いわゆる保守的。だが、後ろに引く動きにも極端な強さ(例参照)も現れる。
例:相手が核ミサイルで攻めてきても、ライフルで立ち向かう(と、結構みんな本気で思っている)
民主党支持層:革新的な思考を優先する。ミスを恐れない。効率性を重視する。基本的に過激だが、共和党支持層の過激さは嫌い、その点では保守的な態度を取ろうとする。
マイケル・サンデルは、民主党支持層を常に先行して研究する
日本人が親しみを覚えるアメリカ人は、民主党支持層
本書で描かれるのは、民主党支持増のアメリカ人の“本質”である。
それは、日本人には馴染み深く、そもそも海外に興味がなく国内にとどまる共和党支持層に対して、日本に来るのは、いわゆるグローバリスト(海外干渉主義者)の性質を持つ、アメリカの民主党支持層である。だから、NHKなどでマイケル・サンデルの番組を日本人は違和感なく見られる。
その民主党委員が、近年、過剰に金銭を信望し、それによって共謀的な行動、例えば、膨大な大金を払って臓器ドナーの順番を騙し取ったり、政治的な汚職をいとも簡単にしてしてしまう。
これらは、実は数十年前までは、腐敗しやすい“共和党支持者”のイメージだった。
だが、それが今では、民主党支持者のイメージになっており、そこに良心がどんどん欠落して過激に表出してしまっている、とマイケル・サンデルは嘆くフリをして本書を書いているのである。
ダフ屋の権利を“認めてしまった”ことが、すべての狂気の始まり
本書は、いわゆる「そんなものをお金で買うんですか?」的なソフトな例から始まる。
冒頭では、ブロードウェイのチケット販売に、並んでチケットを定価で買い、それを10倍程度の値段で転売するダフ屋(チケットブローカー)について、書かれる。
それが、最後の最後には、凶悪犯罪人へと繋がっていく。
マイケル・サンデルは、凶暴化を許し、さらなる過激化を促す
本書を読み続けると、読者はやがて、マイケル・サンデルの主張のどこかが、一貫して空虚なことに気がつくだろう。嘆いているが、代わりの代案を出すわけでもなく、改善策を示すわけでもない。
マイケル・サンデルの口から語られるのは、
◯以前の私たちは、もしかしたら鈍臭かった
◯あるいは、騙されやすかった
◯はたまた、意味不明な“善”に悩みすぎて、スピード感がなかった
と言うものだ。それを、冷淡じゃないジェントルな書き方をしている。
貧乏な障害者を切り捨てる思想でも、効率性が勝る
SDGsの思想を生み出したのはアメリカ民主党であるのに対し、この書籍で書かれているアメリカ人大衆の行動原理は、効率主義で拝金主義の極みである。
お金で時間を買う、もっと言うと、お金で買うのは相手の時間であり、有名人、著名人、優秀な医者などが本書で描かれる例だ。
それを突き詰めると、貧乏な重病人・障害者は死ぬしかない社会の誕生である。
ここには何があるのか。
サンデル教授は、アメリカの歴史からどの答えを導いている。
金で幸せは買えない、だが、買えるところまで買ってみよう、の精神
アメリカには、いわゆるヨーロッパ白人とは違う点がある。
それは、ヨーロッパの白人と比較して名誉や死んだ後の幸福を重視しない人種であると言う点だ。つまり、その権威性を否定しなければ、今日の発展途上国と資本主義の理想的なミックス国であるアメリカによる世界覇権は生まれなかった。
このことをサンデルは十分知っており、今回のテーマの原因であることも最初から知っている。
本質的に悪びれているが、悩んでいる・理想を求める姿勢は、一応する
この流れで本書の内容を再考すると、サンデルが本書で果たそうしている目的は、『おい、アメリカ人たちよ、お前の頭の中に、外国人たちが気がついている、もう少し身を正せ』である。
効率化とITによって欲望にダッシュしすぎて、アメリカ人は、倫理的にも欲望的にも、世界の他の国や、はたまた自国の高齢者、共和党支持者などよりも先走りすぎている。
一旦、冷静になろう。形だけでも。そんな内容が書かれている。
この本は、決して、現代のアメリカ人の苦悩の本ではない。そのフリをしながら、もう一度状態を立て直して、冷静になろうと言う、整形的な圧力を目的とした本である。
Q:どんな人が読むべきか?
A:アメリカ人に騙されたくない人が、注意深く、深読みに深読みを重ねて読み返す本であり、マイケル・サンデルの本が好きだから読む、というスタンスは通用しないと思う。
真の意味で、アメリカ国内の流通を目的とした本だ。
マイケル・サンデルの他の本に比べると対外色は低い。
その意味で、アメリカ人を知るにはもってこいの本だとは思う。こういうことを理解してから読む必要があるし、そうしないと解釈を間違いやすいと思う。
こちらの書籍は、オーディオブックとアマゾンオーディブルで読むことができます。