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ビル・キャンベルとは

ウィリアム・ヴィンセント・キャンベル Jr.(1940年8月31日 – 2016年4月18日)
アメリカの企業経営者であり、コロンビア大学の理事会の議長およびIntuitの役員会会長。Appleのマーケティング担当副社長兼取締役、 Claris、Intuit、GO CorporationのCEOを歴任。グーグルのラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン、エリック・シュミット、サンダー・ピチャイ、そして、スティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、Twitterのジャック・ドーシーとディック・コストロ、Facebookのシェリル・サンドバーグに対して経営相談役としてコーチした。
著者紹介

エリック・シュミット(1955〜)
アメリカ合衆国の技術者、経営者で、Googleの元CEO。Alphabetの元取締役会長。現在は技術顧問。カーネギーメロン大学、プリンストン大学の理事も務めている。字句解析器生成プログラム lex の共同開発者でもある。ドイツ系アメリカ人。
ジョナサン・ローゼンバーグ
Googleの製品担当シニアバイスプレジデントであり、現在Alphabet Inc.の経営チームと取締役会のアドバイザ。
アラン・イーグル(実質的な執筆者)
2007年グーグル入社。エグゼクティブ・コミュニケーション(経営幹部の広報)担当ディレクター。エリックやジョナサンを含む複数の幹部のためのスピーチ作成のほか、コミュニケーション活動を指揮。ダートマス大学でコンピュータ科学を専攻。ペンシルバニア大学でMBA取得。
前提としての知識:コーチングについて
ぶっちゃけ、日本人にはコンサルタントとコーチングの違いはわからない。
簡単にいうと、コンサルタントは相手がクライアントで、対等の意味合いが強いが、コーチングは完全に相手がコーチの下である。コーチの言うことに従わざるおえないのだ。
それは逆に言うと、大企業の社長がコーチングを受けている、というと、場合によっては『あの会社はそんなに経営陣がやばいのか?』と、バカ扱いされる可能性がある。それだけ、コーチングを受けると言うのは、企業にとってリスクがあるし、コーチの責任は重大なのだ。
その前提で、現在の世界最高企業であるGAFAM(日本以外ではFANG)のほぼ全ての企業に強い影響を与えた、ビル・キャンベルの評伝だと考えてほしい。
コーチングの基礎知識
アメリカのコーチングの誕生は1980年代に遡る。
そのころ、グリーンベレーの隊長オペレーション(リーダーが死んだら誰が次のリーダーか?とか、援軍体制が変わったらどう行動を変えるのか?)から、派生して、その戦略メソッドがアメリカンフットボールや水泳、野球などのスポーツに移植された。
そして、それらがさらに発展して、企業の幹部候補育成プログラムとして導入され、本格的にビジネスの分野でも導入されていく。その先駆けとしては、ルー・タイスなどの第一人者がいる。この中に入っているのが、キャンベルである。

コーチングは米国では常識。よって本書では理論は書かれない
『1兆ドルコーチ』のアマゾンレビューでは、この辺の前提が理解されておらず、「理論がわからない」「何をしたのかが見えない」と星を低くつけるレビューアーが非常に多いが、それは間違いである。
米国人は、徴兵制があるためこのコーチングの基礎は誰でも知っているのである。
よって、米国人のエリート層は、ビル・キャンベルの評伝を読みたいというときには、それらよりも実際彼がFANGの中で行ったアクションや言動を知りたいと思っているのだ。
もちろん、門外不出の彼独自の理論もあるだろうが、当然の前提として、コーチはその部分を簡単には明かすはずがないし、人間関係もあるので、それらを墓場まで持っていくのはほぼ間違いない。
よって、この前提に立って本書を読むべきである。

本書の概要
本書は、スティーブ・ジョブズが起業したアップルの初期CEOのスカリーの補佐として、シリコンバレーでのキャリアをスタートした、ビル・キャンベルの評伝である。
ビル・キャンベルは、アップルのジョセフ・オーウェルの『1984』をもじったあの有名なCM仕掛け人としても活動。やがて対立するジョブズとスカリーの間で、ジョブズのサイドに立つ。
そして、ジョブスがアップルに復帰した1997年以降、本格的に現在のグーグルやマイクロソフト、アマゾンなどに関与していく。
そんな彼の姿が、当事者で本書の著者でもあるアルファベット(グーグル)元CEOエリック・シュミットやグーグル社員、多くの関係者から語られていくのが本書の醍醐味である。
Q:どんな人が読むべきか?
A:先にも語ったが、アメリカのコーチング文化が前提としてわかる人だと思う。
はっきり言って、コーチングの前提がわからないと、意味がない。そして、実際はほとんどの読者がコーチングを全く知らないで読んでおり、単なる鬼教官的な偉人の書籍だと思っているのが、アマゾンレビューで明白になっている。それは全く違う。かなり高度な本だ。
(このブログの程度でも十分だと思う)
Q:読んでみてどう思ったか?
A:本書を読むと、ビル・キャンベル自身が実は大したコーチではないのがわかる。が、彼の何が凄いのかと言うと、それは後のFANG + M(Facebook、アマゾン、グーグル、アップル、マイクロソフト)に特化した、数々の特徴を持っていることだろう。
それはここでは語れないが、彼は実にハイテク産業の特徴を熟知していると言っていい。また、ハイテク産業特有の人事にも造形があるのがみて取れる。

Q:日本でなぜ、彼のような存在がいないのか?
A:おそらく日本のIT企業家が、過剰に自由主義を心棒しているからだと思う。
本書を読むと、シリコンバレーが実は軍隊発祥(www.を開発したのは米国空軍)で、人間も人事制度もモロ軍隊だというのがはっきりとわかる。序列も上下関係、人間関係も、軍隊由来だ。
だからこそ、世界を支配すると言う目的を、業界全体が共有できるのだろう。
この辺が、本書でキャンベルを通して、明らかにされる。
Q:本書を読んでどうするべきか?
A:まねるべきではないし、無理だと思う。
アメリカのIT産業のベースが軍隊である以上、日本のIT企業の前提や常識や未来を重ねることは無理である。そういう現実的なものも本書から学べる。
本書によって日本人がやるべきは、日本人にしかないスタイルの追求だと思うようになるだろう。
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