本作はアマゾンオーディブルやオーディオブックでも耳読みすることができます。
著者紹介

岸田 文雄(きしだ ふみお、1957年7月29日 – )
広島出身の日本の政治家。
自由民主党所属の衆議院議員(10期)、内閣総理大臣(第100代・第101代)、自由民主党総裁(第27代)、宏池会会長(第9代)、自由民主党広島県連会長。
中小企業庁長官、衆議院議員を務めた岸田文武は父。戦前戦後に衆議院議員を務めた岸田正記は祖父。参議院議員・経済産業大臣を務めた宮澤洋一は従兄弟。
開成高校出身で東大受験に三浪した後、早稲田大学法学部に入学。その後、日本長期信用銀行に入稿するも、勤務5年目に父・文武の秘書になる。さらに5年後に父が急逝し、弔い選挙で初当選。
本書に書かれている雑学プロフィール
- 酒がかなり強い
- 海外では必ず広島出身だと宣言する(被曝のイメージでビビらせる)
- ジョン・ケリー米国国務長官にPerfume(同じ広島出身)をあっせん
- イギリス首相のボリス・ジョンソンと古くからの友人
- ギターが弾ける
- 加藤の乱で分裂した宏池会(加藤派・河野派)を悲願にしている
- 野球部出身
- 何気に株価暴落は怖い
- アベノミクス完全否定
- 大平正芳の「田園都市構想」を実現しようとしている
- 基本的に、嫌韓で親中
目次
第1章 分断から協調へ
第2章 ヒロシマから世界へ
第3章 「信頼」に基づく外交
第4章 人間・岸田文雄
第5章 「正姿勢」の政治
第6章 闘う宏池会
概要(ブログ主の勝手なまとめ)
本書は大まかに
「第1〜3章」は政策
「第4〜6章」は岸田評伝
という構成になっている。
政策に興味がある人は第1〜3章のみで十分だろう。だが、この前半部は随分厳密に書かれており、これを岸田文雄が一人で書くことは不可能だ。おそらく、数名のゴーストライターで書き、有識者が10名くらいでチェックしているのは間違いない。
注目すべきは、第1章と第6章。安倍晋三が排除できれば、長期政権の気配
私は岸田文雄は、不思議な印象を持ち続けている。
それはどんなものかというと、楽な政権運営をしつつ、総理大臣職を楽しんでいるというイメージだ。そんなことは現実にはあり得ないだろうし、彼もそれなりに悪人だとは思うが、それでも何か素直なものを感じる。それがなんなのかはわからない。
総理大臣広報ポスターの写りかたや記者会見の喋りかたは、まるで安倍晋三のモノマネで、本書では安倍晋三を“命の恩人”的な多大なリスペクトで記述している。
だが、周囲の人間で安倍晋三を排除したいと思う人間が多いのだろう。
だったら、安倍晋三を排除しましょう。そういう物腰の柔らかさがある。
ザ・姥捨山政権の岸田シフト 基本政策:老人から搾り取り、若者に再分配
本書を読み込むと、老人に恐ろしい未来が待ち構えているのがよくわかる。
岸田は、遺産相続を根こそぎ奪い、医療費は上げて、年金や配当金もできれば奪おうとしている。だが、彼の穏やかさに今のところ老人たちは騙されている。
きっと老人がネットが使えないことを武器に、ネット選挙もやるのだろう。
マイナンバーは、スマホ主体と書かれているので、老人は資産を把握されるだけで、マイナンバーの恩恵はほとんど受けない社会構造を作ろうとしているのが書かれている。
75歳以上の老人が選挙に行けなくなってきているのを、おそらく数字で把握しているのだろう。そこにネット選挙を導入すれば、自民党はもう二度と“団塊の世代”を気にせず選挙対策ができる。
前半部では、そんなことが分かりにくいが、割とはっきりと書かれている。
アメリカと小泉政権に破壊された「宏池会」を蘇らせる
私は本書を読むまで、自民党の派閥の系譜を全く知らず、読んだ後に調べた。
かつては、最大派閥でバブル崩壊前後までは、総理大臣を多く輩出してきた宏池会は、岸田文雄で約30年ぶりのメインストリーム返り咲きを果たしたということだ。
宏池会は、森喜朗と小泉純一郎とアメリカにぶっ壊されて、かなり長期間落ちぶれていた。
そこにドラクエの勇者ばりの岸田文雄が登場したというのが、どうやら自民党内の評価らしい。そして、ほんのり宏池会系の麻生太郎がお膳立てし、その流れで、反宏池会の安倍晋三が排除されようとしている。麻生太郎は、ずるく穏やかに引退するのだろう。
安倍晋三は、自民党内では小泉の流れを汲みアメリカの傀儡で過激派という評価なのだろう。
しかし岸田自身は、安倍晋三に発掘された。恩も感じている。その“恩(リスペクト)”を最大の防御としながら、岸田は安倍晋三を徐々に追い込んでいる様子が本書から受ける。
自民党は党内派閥で、アメリカの「民主党」と「共和党」のような役割分担がある
本書を読んでいて、森喜朗と小泉純一郎の登場によって、自民党内部に内蔵された「民主党」と「共和党」の二大政党みたいな右・左システムが正常に機能しなくなったことを、私は初めて知った。
岸田の宏池会は、おそらく役割的に「民主党」だろう。
岸田は、今回総理大臣になるにあたって、この二大体制を取り戻すことを、最大の使命としているようだった。本書には、外交での目的も、国内での目的も実は書かれていないのだ。
この「まずは自民党の再構成が大事」というスタンスが、岸田をミステリアスにしている。彼自身は政策や外交、法案に関しては周りの意見を採用するだけなので、確かに本に書く必要はない。
つまり、この「自民党の再構成が大事」だけは、彼の使命なのだ。これだけやればいいのだ。
あとは、周りが機能してくれるのを利用すれば(いわゆる優柔不断な感じ)、安倍晋三みたいにそれなりに上手くできる。
子育て給付金10万円などはその意思決定プロセスの代表的なものだろう。国民的には、かなり優柔不断で迷惑だったが、結局、あのやり方が官僚、政治家、有権者の三法を説得できる唯一の方法であることは間違いないのだ。
その辺をじっくり研究するのに、本書は役に立った。
Q:どんな人が読むべきか?
A:岸田文雄の政策に不安を抱く人だと思う。
岸田は、就任早々、金融資産課税や自社株買いガイドラインで世間を騒がせた。おそらく、株式投資をしている人で、彼の存在に怯えている人が多いと思う。
だが、岸田のターゲットは、明らかに“逃げ切り老人”であるのが本書で明確になった。
岸田は、企業や労働者を地獄に落とそうとは思っていない。去年の衆議院選挙では、老人有権者を切り落とし、世代交代を上手に、かつ静かに実現した。
その反面、過激で凶暴な一部の団塊世代の老人逃げ切り有権者が、維新の会に投票したが、これもおそらく彼は想定していたことなのだろう。
まあ、しょせん政治家なのでどこでコロッと変わるかはわからないとはいえ、今のところ岸田文雄は本書に書かれた方針で政権運営をしている。
今年の参院選の結果いかんでは、まだ二重人格になる可能性もなきにしもあらずだが、それでも本書を読み込んで彼の行動をみることでだいぶ心は安らかになると思う。
Q:本書を信じていいのか?
A:本という形で記述した時点で、弱みを見せたことになると考えると、ある程度の信憑性はあると思う。要は、彼の普段の言動と乖離がないことが前提だが、そこもクリアしているような気がする。
ただ、安倍晋三のように、当初のプランがおかしくなった時、また新しいキーワードを掲げて、新しい本を書くと、うやむやにできるというのはある(それも彼の長所ではあるが)。
岸田が、今後、新しい本を出したときには、要注意かもしれない。
本作はアマゾンオーディブルやオーディオブックでも耳読みすることができます。