
本書『正直不動産』(3)(4)読むべき人
- 賃貸契約などで付き合う不動産業者の実態を知っておきたい人
- 不動産投資に興味がある人
- 親の家や土地資産を相続する可能性のある人
- 不動産業界で働こうとしている人
- 都市計画に従事する人
- 設計事務所関連
- 個人事業主として生業を拡大しようと考えている人
『正直不動産』(3)内容
- 賃貸借契約(家族内無償賃貸)
- 預かり金(賃貸・買付)
- 賃貸契約後の賃料値上げ
- あんこ業者(元付け・客付けの間に入る業者)
- 借地権(底地と借地権の統合)
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本作はこの第3巻から、ドラマチックな感じでいきなり複雑化する。しかしながら、アマゾンのランキングや在庫状況から見てシリーズの中で一番売れているのはこの第3巻であり、本作を全国的な知名度にしたのは、この巻あたりからである。
理由は、一般人の需要として
- 預かり金
- 賃貸契約後の賃料値上げ
もう一つは、プロの投資家や業者からの需要で
- 預かり金
- あんこ業者
- 借地権
の項目があるからだと想定される。
場合によっては、借地権は一般人にも関係しているかもしれない。
内容ダイジェスト
祠を壊したタタリのせいで引き続き、嘘がつけない正直者化した永瀬が、自身の売り上げを激減させながら、社会にはびこる不動産投資の悪を追求していく。
中でも一般人にとっては、買い付け証明書の「ローン特約」で、ある手法を投じれば、返却されるはずの多額の「手付金」が奪い取られてしまう、という情報と、エサ的な激安賃料で契約させておいて、契約直前でいきなり高額な賃料値上げが法律的にできてしまう事実はかなり衝撃だっただろう。
また、インターネット時代になってから全滅しかけている「あんこ業者」の登場とその新しい利用方法は、多くのプロをうならせたに違いない。
思ってみれば、区分投資物件などの限られた分野で、今でも「あんこ業者」が、「一般の無知の素人を騙すため」に使われているのは、非常にリアリティがあるし、実際にこの漫画と同じ手法が使われている匂いがプンプンする場面も、現実に多数存在しているのが、多少のアマチュアにもわかる。
もし、これらが気になる方がいれば、すぐにまず第3巻だけでも買って読んだ方がいいかもしれない。

『正直不動産』(4)内容
今回は過去にニュースで連日メディアを賑わせた『地面師』が登場する。プロ寄りの内容で、キャラクターの過去にもスポットが当たるが、知識をつけるよりは、一般の人にとっては、このような雰囲気があるということをドラマとして楽しめる内容である。
取り扱われる項目
- 借地権(大型案件 前号から続き)
- ホームインスペクション(築浅物件)
- 地面師(積水ハウス事件と類似)
- リバースモーゲージ
- フルコミッション(不動産営業の給与形態)
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内容ダイジェスト
第3巻の高揚冷めやらぬ中で、引き続き、借地権からのスタート。
ただ、借地権の案件はいかにもオーソドックスな権利の集約に終始し、あまり面白みがないといえばない。だが、本巻は注目は「地面師」だ。通常、不動産業界で働いていても、この「地面師」に会うことはない。なぜなら、地面師の登場にはいくつか条件があるからだ。
- 利便性の良い広大な土地
- それを買いたいと思っている資金的余裕のある企業
- 表面化していない売却がしづらい背景
金額自体が非常に大きいことが、積水ハウス事件の55億円という金額でもわかる。
全容も掴みづらいし、そもそも事件にキャッチーな見出しをつけることができない。要は、大型の「手付金詐欺」に近く、販売契約を結んでトンヅラするというものだが、今まで人々が興味を持った「そこに至るストーリー」を、初めて記した漫画となったであろう。
物語の制度は低いものの、不動産に関わる職種や一般人にその全容がわかるように提示できたのは大きい。
そして、フルコミッション。業界の人間はこのテーマをどう扱うか、非常に気になっているのではないか。この「正直不動産」は、2巻も3巻も4巻も「業界人が知りたいネタ」を半分だけ載せて、次号に引伸ばす傾向がある。全体的にネタが尽きてきそうな感じだが、まだもう少し、追ってみたいと思う。