スマホでつまらなかったが、プロジェクターで見て感動した作品。理由を考える。視聴サイズと音の考察:映画『コロンバス』(2017)

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本作はアマゾンプライムビデオとU-NEXTで視聴することができます。

はじめに

映画監督をしているとはいえ、私自身シネフィルでもなく、なんでも間でも映画館で見るべきという

いわゆる「シアター至上主義者」でもない。

ずっと昔から多くの映画をPCで見てきたし、年間で言うとスマホで見る映画の本数は、劇場や画角の大きなプロジェクターで見る本数に比べて20〜30倍違う。

だが、今回人生で初めてスマホではつまらなかったが、大画面だと異常に面白い映画が存在すると言う経験をした。それについて、一体なんだったのか?というのを考察してみる。

映画『コロンバス』の情報

あらすじ

モダニズム建築の宝庫として知られるインディアナ州コロンバスを舞台に、対照的な2人の男女の恋愛模様を描いたドラマ。小津作品に欠かせない脚本家の野田高悟にちなんでコゴナダと名乗る映像作家による長編デビュー作。

講演ツアー中に倒れた高名な建築学者の父を見舞うため、モダニズム建築の街として知られるコロンバスを訪れたジン(主人公・男性・韓国系という設定)だったが、父親との確執から建築に対しても複雑な思いを抱いており、コロンバスに留まることを嫌がっていた。

地元の図書館で働くケイシー(ヒロイン・コロンバス出身)は薬物依存症である母親の看病のためコロンバスに留まり続けていた。ふとしたことから出会った対照的な2人は建築をめぐり、語り合う中で次第に運命が交錯していく。

キャスト

ジン:ジョン・チョー(1973〜)

韓国籍の俳優だが、近年までハイバジェット(大作)の端役が多かった。なぜか、韓国系の監督作品の出演が少ない。ソーシャルネットワークの中だけで展開する『サーチ(Search)』に主演して、知られることになった。本作の演技は、今までの彼の作品とは全く違うのが面白い。

ケイシー:ヘイリー・ルー・リチャードソン(1995〜)

アメリカの若手女優だが、元々はダンサー出身である。決して美人でもなく、長身であったり、スタイルがいいわけでもない。ヒロインは本作が初めてだが、単独の主演は2019年の『ファイブ・フィート・アパート』が初となり、注目された。

ローリー・カルキン(1989〜)

ローリー・カルキンは、『ホーム・アローン』のマコーレー・カルキンの9歳年下の実弟である。本作ではちょっと童貞っぽい面白い役どころを演じているが、私の目からみて彼はかなりの演技派であり、容姿の特徴からして今後ブレイクの予感が漂う俳優に見える。顔の印象が強い。

もしかすると、兄よりも出世するかもしれない。

プロジェクター視聴環境:popIn Aladdin 2

本作を1回目に見た時は、iPhone SE2とイヤホンはワイアレスイヤホンのSound Peatsの最高級モデルで聞いていた。イヤホン的には当然悪いモデルではないが、如何せん、過去に述べた中音の出力が良くない(例:ユーチューバーのトークや環境音などの出力が弱い)。その代わり、高音・低音は実に優れており、音楽を聴くのは最適だ。

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popIn Aladdin 2の特徴:高解像度で、実は音声が映画向き(中域音が強く出る)

自宅用のプロジェクターが数多く発売されているが、この『popIn Aladdin 2』はその中でも目立った存在ではある。だがそれはむしろ取り付けやすさや、画面サイズといった副次的なものだ。

YouTubeでも紹介動画は多い。だが、果たして映画を見るのに必要なスペックが揃っているのかは謎で、誰も語っていないに等しい。

映画監督として私が、プロジェクターの性能で重視する点は以下の通り。

  • 中域音(足音、所作音)の迫力があるか?
  • スクリーンなしでも最低限の解像度はあるか?
  • スムーズな再生ができるか(Blue-rayディスクのような酷い環境ではないか?)

解像度は問題なかった。というか、音質の良さに非常に私は驚かせた。

ハイレゾ・高品質イヤホンでも全く対応できていない中域音が素晴らしかったのだ。

中域音によって、映画の情報量は数十倍に広がる

なぜ、中域音に私がこれだけこだわるのかを次に説明していく。

中域音の効果で注目する点は以下の通りだ。

  • ため息や衣擦れ、会話発音の芝居などの心理描写が明白になる
  • フレーム外の音も明白になり、展開や連続性に差が出る
  • 無音状態・停止状態にかなりの迫力が出る(無音粒子音が聞こえる)

実写において「俳優の動き」や「息づかい」、「小道具との体の連動感」といったものが、アニメーションに比べて特に優れている。そして、これらはほぼ全て中域音を発する。

いわゆる予感・印象・心理面を引き出すのが中域音なのである。

また、アニメや音楽などで消えてしまう自然音・環境音(エンジン音、遠くの人の声、風の音)などもこの中域音に入る。これらが聞こえることで、実際の世界との連動性が生まれる。

映画との相性:中域音は、大画面の環境でシンクロしやすい

映画『コロンバス』は、登場人物が少なく、そのショットのほとんどは建物の内観や外観にピントが合わせられており、むしろ俳優の会話はそのBGMであるという印象を持たせる。

そして音楽もほとんどなく、聞こえるのは常に環境音・俳優のセリフのない動く音となる。

これらの中域音が聞こえる中では、画面の大きさも意味が違ってくる。

私がおそらくiPhone SE2でつまらないと感じたのは、本作の画面情報もさることながら、音の情報の多くを取り逃がしていた可能性が高い(監督の意図するしないは関係なく)。

映画『コロンバス』は、実は環境音が通常の映画に比べて非常に多い

例えば、主演のジョン・チョーは韓国訛りの英語を話し、硬い革靴を履いているため、靴音が常に建物を反響している。また、ヘイリー・ルー・リチャードソンは図書館勤務のため、登場シーンに独特の重さがある。やたら音がしない場所で、ヒソヒソ話が多い。

たまたまだと思うが、これらの音の情報がスマホでは消えやすい。

ということで、今の所推論を出ないが、私は知らないうちに本作を“プロジェクター向きの映画だと判断した”可能性が高いのである。

以上です。

本作はアマゾンプライムビデオとU-NEXTで視聴することができます。

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