テスラのエアコン事業参入やデジタル人民元などの最新情報を掲載。『コロナ対策経済で大不況に突入する世界』副島 隆彦

投資

著者紹介

副島隆彦(1953〜)

福岡市生まれ。本籍・佐賀市。早稲田大学法学部卒業。大学卒業後、銀行員(インタビューなどで英国:ロイズ系の金融機関勤務だと答えている)として英国に勤務するも3年ほどで退職し、帰国する。その後、代々木ゼミナール講師(受験英語)、常葉学園大学教授を歴任。

専門はアメリカ政治思想と政治史。選挙や米国政治人材に詳しく、オバマ当選(2008)、トランプ当選(2016)の予測を的中させたが、バイデン当選(2020)を外す。リーマンショックを予測した『連鎖する大暴落』、『逃がせ隠せ個人資産』、『世界権力者シリーズ』はベストセラーに。

目次

1章 副島隆彦の予言 金、株、為替、債券はこう動く
(金の値段/ 株の動き ほか)
2章 緩和マネーと危険な債券
(FRBの「やる、やる詐欺」/ パウエル議長は船の舵取りを放棄したのか ほか)
3章 コロナ対策経済の“副反応”
(新たな大不況の突入点/ 短期国債、突然増発の謎 ほか)
4章 解体されるビッグテック
(IT規制論者の女性法学者が表舞台に登場した理由/ 膨張し過ぎたビッグテック ほか)
5章 3年後の世界大恐慌に備えよ
(世界的な株安を招いた恒大集団の行方/ 「借金の天井」で右往左往するアメリカ ほか)
巻末特集 短期間で急上昇しそうな小型株20(袋とじ)

概要(ブログ主の勝手なまとめ)

副島隆彦氏は、2007年のリーマンショックを日本で一番早く、予想し、的中させた。その後も、早期にオバマ大統領やトランプ大統領の出現を予測して、2010年代まで彼は日本で最も信用できる政治・経済の評論家だった。

私は、彼の『連鎖する大暴落』以降、ずっと愛読しており、時々出版される映画評論やヨーロッパ文化史、日本宗教史などに関する書籍や翻訳書関連も読んできた。

一番好きなのは『私は税務署と戦う』というDVDだ(彼の公式サイトで売っている)。

だが、彼の全盛期は2013年代以降の東日本大震災後〜安倍政権で、その後はパッタリと予想が当たらなくなり、外すことがほとんどなかった選挙系の予測も当たらなくなった。

そこから、言うこと書くことがことごとく当たらない。そんな状況が続き、多くいた弟子も離れていって、彼の学問道場も縮小傾向だ。

そんな彼の近著が本書だ。

こう書くと読む気を失うかもしれないが、彼の書籍の情報はある意味今でも信用ができる。

2024年暴落説から全てを構成:金融では、既にいくつか予想を外している

副島氏は、直近10冊くらいの本の中で2024年暴落説を解き始めた。

理由は明確ではないが、80〜120年周期の歴史周期性を研究したコンドラチェフ波理論と、アメリカの実質的な4500兆円〜4京円(これも副島氏の推定)の債務利払いの限界だと推察される。

また、習近平の三期目、プーチンの引退時期などが、ちょうど2024年ごろに重なるというのも彼の2010年代からの予測である。これは確かに今の所当たっている。

しかしながら、本書はかなり危うい。

まず最初に語られるパウエルFRB議長の金融緩和縮小・テーパリングできない論は、既に外れてしまっており、理論としての正しさは非常に危うい。2021年12月のFOMCでは、早期のテーパリングが議論されることになっている。

中国関連(恒大集団など)や金価格などの面では、預言者は健在

というふうに、米国の政治経済に関しては近年外しまくっている著者だが、彼の強みは他にもあり、それはゴールド(金)と中国関連問題への造詣である。

副島氏の情報網は、特に中国関連が近年強化されており、他の論者やネット系のメディアが外しまくった中で、一人独走して当てている。この辺は、私が尊敬する広瀬隆雄なども外す。

本書を読む上で、この点を重視したい人は是非とも読むべきだろう。

その他にも、テスラのイーロン・マスクがエアコン事業に参入することや、開示されていない情報が多い中国のデジタル人民元関連日本に伝わっていないビックテックの水面下での動向などは、本書でしか読めない情報だ。

私としてはなかなか読みごたえもあり、信用できそうな情報のような感じがした。

Q:どんな人が読むべきか?

A:トレーダーや金融関連の人間。

本書はあくまでもエコノグローバリスト・シリーズという、副島氏の中でも経済・金融に特化した書籍だ。一般人には、あまり必要のない知識も多いし、彼の書籍をずっと読みつづけていないとよくわからないものも少なくない。

そして一番の懸念点は「世間で流れているニュース報道のウラ(逆)」である点だ。一般的なニュースの逆を行きすぎているところがあるのだ。

この辺に関しては、例えば金融のプロであれば、脳みその中身が表とウラに分かれているのが一般的なので、ついていけるし、普段の生活に支障がない。だが、一般人が読むと影響を受けすぎるかもしれない。反発もあるだろう。

バイデン政権誕生後以降、完全に調子が狂っているのが心配

例えば、彼は多くの陰謀論じゃと同じくディープステートという用語を使う。

しかし、副島氏の場合はそのディープステートを闇雲に使わず、ある程度の対象のあたりをつけている。だが一般的には、ディープステートは宇宙人とかUFOとか、ロスチャイルドとかを指してしまい、メルヘン度が高まって話がめちゃくちゃになりやすい。

だが、それでもディープステートという言葉を使いすぎである。

まるで目に見えない情報、自分の当たらない知識の集積に怯えているかのようである。

Q:なぜ、金融関連の情報が信用できると言えるのか?

A:いや、信用できるわけでない。

副島氏自身は、金融商品をほとんど購入したことがなく、例えばETFなどのオーソドックスの知識もなければ、ブラックロックがどのくらい恒大集団の株を保有しているか(1.5%)などの、金融に関する日々の情報のアップデートは皆無だ。ほぼ素人と言っていい。

ただ、弟子筋には腕利きのトレーダーは何人かいる。そこからの情報あるようだ。

金融の素人だが、なぜか時々金融関係の最新情報を繰り出してくる

彼の場合、有識者から情報を集めたりするなどのパターン。なので、むしろMBSやCDS、仮想通貨、もしかすると今後はBNPN(buy now pay rater)などの方面に知識を深める可能性が高い。

大きな動きが起きてから、情報が集まってくるケースが多いのだ。

そういう意味で、今時ではないがアメリカからダイレクトに情報が入ってくるケースがあり、今回の例で言えば、ウォーレン・バフェットの動向やEVの電池の隠された問題、イーロン・マスクのエアコン事業参入などは、それに該当する。

つまりは、変な表現かもしれないが、金融の大枠の最新情報は、まだまだ彼を通して日本に入ってきているものが少なくないのだ。

そういうものが欲しければ、本書は読んでおくべきだろう。

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