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著者紹介

ジョン・C・ボーグル(1929-2019)
バンガード(ヴァンガード)創設者。
生まれる前年に大恐慌(1928〜)に見舞われ、資産のほとんどを失ったニュージャージー州モントクレアの家族の元に生まれる。恐慌によって父はアルコール中毒になり、幼少期に両親の離婚を経験。
幼い頃より学業が優秀であり、就労奨学金を得て、ブレアアカデミーに編入。 その後、プリンストン大学を卒業。卒業後は、ウェリントン・ファンドに入社し、のちに投資ファンドを作る。その後、1967年には独立して、ヴァンガードグループを創設。
1976年、ポール・サミュエルソンの論文の影響を受け、ボーグルは世界初となるインデックス・ファンド(バンガード500インデックスファンドの前身)を創設した。 サミュエルソンは2005年の講演で「ボーグルの発明は車輪、アルファベット、グーテンベルク印刷に匹敵する」と評価している。
ヴァンガードは現在のETFの世界標準であるVTI、VOO、VYMなどを軸にETFや投資ファンドを運用しており、ブラックロック、ステイト・ストリートとともに世界三大投資顧問として知られる。
目次
- 監修者まえがき
- 記念すべき第10版に向けての序文――勝者のゲームを敗者のゲームにしてはならない
- 第1章 寓話――ゴットロックス家の人々
- 第2章 根拠ある熱狂――株主の利益は企業の利益と一致しなければならない
- 第3章 企業に賭けろ――簡潔にして勝て、オッカムのカミソリを頼りにしろ
- 第4章 どうしてほとんどの投資家は勝者のゲームを敗者のゲームにしてしまうのか――簡単な計算という冷徹なルール
- 第5章 もっともコストの低いファンドに集中せよ――資産運用会社の取り分が増えれば、それだけ投資家が手にするものは減る
- 第6章 配当は投資家の最良の友なのか――だが、投資信託はあまりに多くの配当をかすめ取っている
- 第7章 大いなる幻想――うわぉー、投資信託が公表しているリターンを投資家が手にすることはめったにない
- 第8章 税金もコストである――必要以上に国に支払うことはない
- 第9章 良き時代はもはや続かない――株式市場も債券市場もリターンが下がるという前提で計画を立てるのが賢明
- 第10章 長期的な勝者を選択する――針を探すな、枯れ草を買え
- 第11章 「平均回帰」――昨日の勝者は明日の敗者
- 第12章 ファンドを選ぶためにアドバイスを求めるのか――転ばぬ先の杖
- 第13章 簡潔さと倹約の王から利益を得る――株式市場に連動するコストの安い伝統的なインデックスファンドを保有せよ
- 第14章 債券ファンド――ここでも簡単な計算という冷徹なルールが支配する
- 第15章 ETF――トレーダーのおもちゃ?
- 第16章 インデックスファンドが市場に勝つことを保証する――新しいパラダイム
- 第17章 ベンジャミン・グレアムならインデックス運用をどう考えただろうか――バフェットはインデックスファンドを支持するグレアム氏を支持している
- 第18章 アセットアロケーション その一 株と債券――投資を始めるとき、資産を積み上げるとき、そして引退するとき
- 第19章 アセットアロケーション その二――引退後の投資とあらかじめアセットアロケーションされているファンド
- 第20章 時間という試練に耐え得る投資アドバイス――ベンジャミン・フランクリンとのチャネリング
- 謝辞
ブログ主の勝手なまとめ
新鮮な情報は書かれていない、ただ重厚なファンドの歴史は書かれている
内容に関しては、誰もが読むべき本ではない。特に、現代人の中級者以上の投資家にとっては、儲けるための知識に限定しては不要である。
つまり、投資の効率を上げたり、知見を深めるような新たな知識は、ほぼ皆無と言っていい。この本に書かれているのは、はっきり言って歴史だと言えるからだ。とにかく歴史が書かれまくっている。
投資ファンドの歴史を知る意味

では、ボーグルの語るヴァンガードや投資ファンドの歴史を垣間見て、どんな知見があるのか?
それは、インデックスファンドが市民権を得るまでには、さまざまな投資銀行、投資顧問、著名投資家(ジョージ・ソロス、ジム・ロジャーズ、ジム・ジムクレイマーなど)などによる妨害に近い悪評などを読むことで得られる知見ということだ。そこにはもちろん、地獄的な側面もある。
そして、そこで起きた数々の問題は今後もその論争を振り返される可能性が高い。
また、その歴史を知ることでインデックス投資をする胆力を固められる。と私は考えている。
少々強引だが、その流れで本書を読み解いてみよう。
インデックス投資をする(本書を読む)前提について
その前にこの本の前提を書いておくと……
- インデックスファンドとアクティブファンドの違いがわかる人向け
(インデックスファンドとアクティブファンドの中間的な存在もある)
アクティブファンド・インデックスファンドに共通すること
- 個別株ではない
- 数銘柄で構成されている詰め合わせパック型のETF・投資信託
ETF(リアルタイム)と投資信託(後日精算)は購入方法が違う
アクティブファンドとは
- 特定の人員(アナリスト・マネージャー)がファンドの構成・入れ替えを行う
- 参照する決まった指標がない
- 銘柄数が少ない(だいたい100銘柄以下)
- マイナーな指数に連動している場合は、アクティブファンドとほとんど変わらない
- 手数料が0.1%以上(場合によっては2%ほどのものがある)
- メジャーな指数に連動していても特定のテーマがある場合は、アクティブファンドになる
インデックスファンドとは
- メジャーな指数に連動しているファンド
- 銘柄数が200〜4000程度の個人の判断では取り扱えない数が前提
- 手数料が1%以下(最近は0.1%以下が常識)
上記の内容をなんとなく頭に入れておくだけで本書は読むことができる。わからない場合は、上記のリストを繰り返してみたほしい。
かつてETF・投資信託は危険だと言われた時期があった
ここから、著者のボーグルの主張を書いていく。
本書は、さすがインデックスファンド(ETF・投資信託を含む)のファウンダーであるボーグルが描くだけに、その生き字引的な膨大な情報量を堪能することができる。
今では市民権を得ているETFや投資信託などの、要するに株式詰め合わせパックだが、ボーグルがインデックスファンドを作成した時には頻繁に「騙しだ」とか「個別株以外は投資活動じゃない」とバカにされた。と、ボーグルは語る。
だが、それは単なる脅しではなく、現実でもあった。
- ETF・投資信託が安定化するまで、商品や運用会社の破綻は相次いだ
- 世界三大投資顧問ステイトストリートもかつては商品を乱造して破綻したことがある
- 個別株よりも寿命が短いETFや投資信託が多い
- ETFや投資信託は破綻時の資産保全はされるものの、たいていはその前に暴落する
- ETFや投資信託の運用が暗転すると、手数料が上昇するケースもある
- 強制決済(ETF・投資信託の破綻)の時は、資産よりも時価総額が下回るケースも多い
このような驚くべき内容が、本書内で長老のボーグルより語られる。
彼のいうインデックスファンドの歴史というのは、現在の安定・安全なイメージが裏切られるほどの内容だ。それなりに危険で騙しも多かったことがわかる。それでもどうにかETF・投資信託市場は、40年ほどの時間をかけて徐々に安定化したのが本書でわかる。
驚くべきは現在は世界三大投資顧問だったステイトストリートも過去に破綻に追い込まれたことがある、ということが本書では語られていることだ。

これらの歴史を踏まえて留意するのは、以下の点だとボーグルは伝える。
ボーグルの提唱する4原則的なもの
- 手数料が同等のジャンルのETF・投資信託より安いかどうかで決める
- 資産残高が高いこと確認する
- 細分化されたセクターETF・投資信託は悪。近づくな
- たとえ投資対象がアメリカであっても成長が止まったら、さっさと手を引く
特に、最後の『たとえ投資対象がアメリカであっても成長が止まったら、さっさと手を引く』がアメリカ人のボーグルの口から出たことは興味深い。現在、この部分は特にほとんどの投資家がマークしていないことだ。
私たちインデックス投資家は、指数も株価も見なくても(笑)、アメリカの成長に関しては神経を尖らせている必要があるのだ。
Q:どんな人が読むべきか?
A:相反する人が読むべきだと思う。
- A:全くの素人
- B:物凄く投資歴が長く、熟練している人
読んでみて、本書には「超初心者」に必要なことが書かれている反面、「熟練者」が忘れていたり、気にもかけなくなった、泥臭いことが書かれている。
特に、ETF・投資信託の破綻の歴史は熟練者がさらに長く投資を続けていくためには重要かもしれない。そもそも初心者は、常に投資で失敗したらどうしようと考えている点で、この「破綻の歴史」を考えているに等しい精神状態にある。だが、熟練者はここを長い投資機関によって失っているのだ。
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