フィルム・アート―映画芸術入門:名古屋大学出版会は、映画製作者・映像系学生が読むべき本か? 裏要約・概要

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映像系で以前は必須とする大学も多かった

今回は、恐らくアクセス数を全然稼げないが、思い切った内容に踏み込んで行きたいと思う。

本書「フィルムアート:映画学芸術」は、1960年代からフランスの映画雑誌であるカイエデュ・シネマやアメリカのシカゴ大学を中心に発達してきた映画学・映像学を象徴する大著である。ただし、断っておきたいのはこの書籍は「入門書」であるところだ。本筋の映像学書籍・論文は、日本では「映画理論集成 古典理論から記号学の成立へ」とか「「新」映画理論集成〈2〉知覚・表象・読解 (知覚/表象/読解) 」などの早稲田大学教授であった岩本 憲児さんや武田 潔さんあたりの実際にフランス映像学会の大物のアンドレ・バザンやシカゴ派との交友経験のある方々の編集本ということになる。

↑いずれも分厚く1キロ以上ある。今では触れるのも嫌な書籍。いずれも読んでいる。

ただ、映画芸術という学問自体、1990年以降の論文などは市販されるレベルとしては極端に減ってきており、学会でもさほど有効な動きは見られなくなった。2000年代には完全に廃れており、学問としての単独での有用性は消滅したに等しいと思います。

東京藝術大学では「フィルム・アート」は使用しない

私が学生時代、本書は全く使用されなかったし、話題にも一度も出ることがなく、当然読むべきということにもならなかった。だが、私は他の大学のゼミにも参加していたりしたので、読むこととなった。芸大出身で本書を読んでいる人は、恐らく私くらいじゃないのかと思う。

映像学と心理学がリンクした内容に関しては一定の価値あり

私が本書を今でも参照する箇所がある。それは、本書の「第7章 ショット —— 撮影法」である。

例えば、立教大学は、映像学科を心理学部内に持っている。映像学というのはその独立したジャンルとしては消滅に等しい感じになっているが、他ジャンルと結びついて生き残ってはいる。それは、需給が少ない学問全般に多くあるのだが、他の学問とくっついて新しいニーズを開拓するのである。それらの中の最も代表的なものに心理学だと言っていいだろう。近年でよく知られるのは、心理学と経済学が結びついた行動経済学だろう。

本書が刊行された時に、映像と心理学を結ぶ動きはあったのだろう。そしてそれは効果的だったと感じる。本書では心理学と映像を繋げた部分は少なくない。が、そこは今でもきちんと書かれた書籍が少ないので使えると思う。

「第7章ショット — 撮影法」は、配信時代を生き抜く秘訣が書かれている

この部分が現代でも風化したおらず、重要である唯一の部分であり、そこを読む価値は高い。

このために、本書を買うのも一考である。これが私の結論だ。ここに掲載されている映像技術は、一見基本的なものしか紹介していない。だが、満遍なくその技術を見てみると、いかに現代の日本の映像技術が映像の既存の技術の「特定分野」しか使用していないのがわかるだろう。

例えば、集中や放心状態を表現するときに顔によっていく「ズームアップ」やその逆の「ズームダウン」。これに関しては、古い映画でたまにみるが近年の映像作品で効果的に使ったものはなかなか見られない。実際、映像演出をするようになるとこういうフレーミングに関する技は、本当に使うべき時に脳味噌にヒットしてこない。知識・経験がないと、思いつかないのだ。

今後、配信が中心になると必然的に「途中停止」「早送り」で人は、乱打横断的に映画をみるようになっていく。そうなると心理学をベースにした映像技術に再び頼ることになるだろう。それに追いついていくには、このこの本の第7章を知っておく必要がある。

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