フェミニズムがオニババを激増させた。良書だが男性に関する記述は妄想と幼稚な願望が大半『オニババ化する女たち』三砂ちづる

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著者紹介

津田塾大学公式サイトから引用

三砂ちづる(年齢非公表)

山口県で生まれ、兵庫県西宮市で育ち。

1981年京都薬科大学卒業。薬剤師として働く傍ら、神戸大学経済学部(第二課程)卒業、琉球大学保健学研究科修士課程修了。1999年ロンドン大学Ph.D.(疫学)。

ロンドン大学衛生熱帯医学院研究員、JICA疫学専門家として活動。2001年国立公衆衛生院(国立保健医療科学院)疫学部勤務を経て、2004年津田塾大学教授。

専攻は疫学だが一般著作も多く、そのほとんどが女性をテーマとしている。本書『オニババ化する女たち―女性の身体性を取り戻す』は2004年に発行され、著者の本の中でも最も売れたものとなる。

目次

  • 身体は本当は知っている。誰も言わなくなったいちばん大切なこと。
  • 性と生殖への軽視女としての生活を楽しめなかった戦後世代の女性たち
  • 月経血を止められた日本女性
  • お産の達人だった日本人
  • 骨盤底筋がたるんできた
  • 「負け犬」より心配な「その他大勢」の女性たち
  • 少子化対策の的はずれな感じ
  • なぜオニババになるのか
  • 娘の生殖年齢をスポイルする親たち
  • 早婚のすすめ
  • 生き生きした思いを伝えられない性教育
  • 自分のからだを良い状態にする
  • 女性性が男性を導くほか

概要(ブログ主の勝手なまとめ)

女性の活躍に忍び込んだ“フェミニズムの悪”を暴く

この本では、冒頭でフェミニズムの悪影響が語られる。

著者の三砂ちづるの世代の学者は、上野千鶴子というスーパーフェミニストで、今更一人でいることを後悔しているいわゆる「おひとりさま」老婆となったこの学者に翻弄された世代だ。

上野千鶴子氏。『スカートの下の劇場』は、名著だったがしょせん日本の世界的には無名な学者で生涯を終えつつある。

上野千鶴子の代表作として知られる『スカートの下の劇場 ― ひとはどうしてパンティにこだわるのか』は、私も大学院の教材として読んだ。男性が読んでも涙が出るようなとてもいい名著だったが、結局彼女はこの本だけのような気もした。その後は、東大で出世はしたらしい。

日本の女性学者の中で、この上野千鶴子を嫌っている学者が多い。

話は脱線したが、本書の内容的にこの“オニババ化”というのは、明らかに上野千鶴子の逆ポジションを取っているような気がした。少なくともこの前提は加味して読むべきだろう

フェミニズム=オニババ化の原因説の弱点

私は、女性の晩婚化・非婚化はどちらかというと、男性社会(体力主義・極端主義)に流されて、独自の思考を持たなかった女性の活躍の第一世代のせいだと思っている。

が、本書の反フェミニストの立場もうなづけるものがなくはない。三砂ちづる氏の説明の筋道がそれなりに詳細だったのもある。

そういえば、日本国憲法を作ったアメリカ人学者に女性が多かったなあと思う。彼女たちが作った(フィリピン憲法のコピーだが)基本的人権は、間接的にかもしれないが、フェミニズム的な爪痕を残し、それによって後年の日本人女性の晩婚化や非婚を推進したかもしれない、とか思う。

だが、この『フェミニズムによって女性がオニババ化した』というフレーズは、それにしても男性の悪い存在を隠してくれるのに都合が良い。そして、著者はそこに気がついていない。

ここが本書の最大の弱点だと私は思う。

10代の富裕層世帯が出産・子育てを勝ち誇ればムードが変わる

著者は、どうすれば“望んでいないのにオニババ化する女性を減らせるのか?”について本書でいくつか書いており、そのいずれも興味深かった。その中で、私が特に面白いと思ったのは『富裕層に属する10代の女性が、出産や子沢山を勝ち誇り、周りの男がべた褒めすればいい』という考え方だ。

これは倫理的に日本人が一番嫌う非平等ネタだが、もし実現したら、確かに日本の少子高齢化には終止符が打たれると思う。というか、これはインド人の考え方に近い。

これを日本の女性の学者が言い出したところに、面白みと現実的な怖さも感じた。

注意点1:復古純粋主義が激しく、過激派イスラム教徒みたいだった

次に、本書のダメなところを書いていきたい。

本書では女性の身体性について、実に丁寧に何度も『江戸時代や縄文時代のような生活をすれば女性らしさを取り戻せる』と繰り返す。文字面としては論理的だ。

だが、人間の歴史の中で「人間は便利な技術を手放した過去がない」ということを三砂ちづる氏は忘れている。学者なのに。というか、日本の文系の学者の多くが、これを忘れて独自の持論に熱を入れてしまっているケースが、2020年代に入ってもまだまだ見られる。

  • パンツではなく着物がおりものを出しやすい。
  • 出産は、西洋式ではなく、日本古来の産婆式が最高。
  • インディアンの式たりなら90歳でも夫婦はセックスレスにならない。

言いたいことはわかるが、このような思想を持ちつづけて、それを本に出してしまうの人が日本のインテリ層に所属しているということの残念さが、後半で炸裂する。

注意点2:男性に対する要求に幼稚な願望と妄想が多い

本書の夫の記述や異性の記述も、実に子供っぽく、三砂ちづる氏は男性経験がそんなに少ないのかと思わせる記述が後半に続出する。

本書はそのコンセプトの良さから、女性だけはなく、多くの男性が手に取った本であるのは想像に硬い。だが、後半で語られる男性への変則的な白馬の王子様思想に、メンくらわずに平気でいられる男性は少ないと思う。正直に、刺激的な文章を書いたつもりなのだろうが、これも残念だった。

Q:どんな人が本書を読むべきか?

A:第一に津田塾大学で彼女に学びたい人。その次に、更年期女性を相手にする男性(ホスト、販売員、サービス業など)だろう。

私は、本書のいい面、悪い面両方にある種の真実味を強く感じる。

我慢しないで、思いのたけを存分に話し切った、女性の姿が描かれており、たとえ今の三砂ちづる氏が学者として成熟して、ここからだいぶ大人になったとしても、この頃のマインド(渇望感)は彼女の学生になる可能性があるのなら絶対に知っておくべきだろう。

男性に関しては、とても残念なことを言うが、本書には女性を騙すためのまだ世に出ていない大量のヒントが散りばめられている。著者がバラしてしまった。そう言う意味で、とてもお薦めです。

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