著者紹介
TED出演の著者

キャロル・S・ドゥエック(年齢非公表)
スタンフォード大学心理学部 教授。社会心理学、発達心理学等における世界的研究者。どうしたら人は成功を収められるのか、達成を促進できるかといったモチベーション、人間関係、精神保健に関する研究で大きな業績を持つ。
読むべき人はどんな人か?:掲げた目標に遠く及んでいない人
本書を読むべき人は、女性・子育て中の人・教育者などであるとされている。
なぜ、男性じゃないのか?なぜ経営者ではないのか?
非常にざっくりとした仕分けだが、その分け方には意味がある。
つまり、こういうことである。
- 女性は男性に比べ、限られた条件(体格とか)で状況の判断が必要
- 子育て中の人は、そうでない人よりも予算も時間も制限されている
- 教育者は、通常の仕事と違うクライアントの抱え方をしている
ようは、いろいろな条件によって「後ろ向きに考えてしまう要素が強い人種」ということになる。
日本人の嫌いな二元論で本書は進む
「しなやかマインドセット」「硬直マインドセット」
ならどう反応するか? というしつこいくらいのケーススタディの二元論で話が進む。
しかし、日本人は、結構この断定的な二元論が嫌いである。
「なんでそんな言い切れるのか?」
「決めつけてしまっていない?」
といった反論をする人が少なくない。
私もその傾向があり、その文体に腹が立つことも少なくなかった。だが、本書を読み進めて行く、どうしてこの書き方をしなければいけないのかが徐々にわかっていく。
感情と判断の曖昧性を極力減らすために「二元論」を採用
人間を説得するためには、実は高度な言葉は必要ない。
周りの人もある程度納得し、説得されている人もある程度ふに落ちるような、むしろ型通りの文章が実は好まれる。気持ちを癒したり、過去を振り返るには高度な言葉は必要であるが、行動にしていくのには、曖昧な言葉は必要ないのである。
本書は、そういう系統の文章で「短文・言い切り」のスタイルだ。
しかし、読み進めて最後に近くに連れ、それはスティーブン・コヴィーが「七つの習慣」で、時間をかけて解説した『人格主義』だと気が付く。「人格主義」の書籍の多くは、非常に曖昧である。この本はそこをあえて、スッキリとさせるためにリスクを犯した。
天才も多くが挫折して終わること。しかし、それは「マインドセット」という『内的な人格主義』で回避可能なのだ
本書では、結構、世間的な成功者(マッケンローなど)が失敗者として描かれる。しかし、本書で描かれる成功者は、確かに彼らの得た名声に比べ、幸福感が少ないのが明確にわかる。
それに対して、世間的な成功者ではない人間が成功者として描かれることもある。その基準は、エゴではなく、もっと長期的なものである。それはおそらく数字に勝るものかもしれない。
もちろん本人の至福感が重要な要素として考えられている。
つまり、「マインドセット」は「結果」から判断しない。
あくまで自分の価値基準、自己肯定感が中心となっているわけである。
これ一種の内側に閉じこもるような活動である。だが、努力や進歩をすすめていくためには、むしろ外的な要因が不要なのだ。むしろ、このポジティブに限定していく思考が本書の醍醐味だといえる。
『数字は後からついてくる』を信じるな
『数字は後からついてくる』という言葉をよく耳にすると思うが、これは本書を読むと「マインドセットがうまくいっている瞬間」の人間が、ほんの一瞬だけ言える言葉だというのがわかる。
つまり競争社会の罠、数字の罠に陥っていない状態に、たまたまあるというだけのことである。
そこには、自分はない。そこを目指さないという、強い調子を出すために本書は構成されている。
つまり、後からついてくる数字も悪なのだ。では何が一番重要か?それは本書に書いてある。
「楽しむ」を忘れた人間が、「楽しむ」を取り戻すまで
本書を読めば、競争社会の中でギスギスしない気持ちを獲得できる。
これは日本人が、長らく続く、義務教育や受験戦争、新人社員研修などで傷つけられ、ボロボロにされてきたものである。だから、日本でこの本がヒットしているのだろうと思う。
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