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著者情報

ハンス・ロスリング(1948年7月27日 – 2017年2月7日)は、スウェーデン出身の医師、公衆衛生学者。カロリンスカ研究所の国際保健学の教授および、スウェーデン・ストックホルムに拠点を置く自身が設立したギャップマインダー財団のディレクターを務めた。世界的ベストセラーとなっている『ファクトフルネス(英語版)』の著者。WHO、ユニセフでもアドバイザーを勤める傍ら、アル・ゴア元アメリカ副大統領の『不都合な真実』への捏造・改竄データを拒否するなど(本書でも語られる)、その誠実な行動が世界的に評価されている。
本書を読むべき人
- 日々、格差を感じながら生きている人(生きづらい系)
- 悲惨・残酷な悲劇的情報に心を痛めやすい人
- 周囲に、偏見を持った人が多い人
- 世の中を変えたい人
- 子供の教育に苦労している人
ファクトフルネスという究極の精神を安定させる思考法
本書は2018年から2020年の初頭にかけて、非常によく売れた書籍で見かけた人も多いだろう。ではどのようなことを書いた本なのか? それは、人が思っているほどこの世が荒廃してはおらず、むしろ年々良くなってきているということを示した本だ。
悲劇的なニュースやアクシデントがエンタメ化している
アフリカの貧困や貧富の格差などのニュースソースが、いかにいかがわしいかが本書では書かれている。と同時に、メディアや報道関係者が、生活の糧のために人々の注目を集めなければやってこれなかった近代史についても触れている。
つまり、報道の嘘や隠蔽、または調査不足は、報道関係者の給料のためなのだ。決して、世の中を支配する陰謀論者のためではない、という。
だが、それを知ったからと言って、人間はこのような「ファクトフルネスから外れた行い」を正せないとも本書は言っている。人間の本能が、それらを求めているからだ。
※『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』はオーディオブックにも収録されています
ネット社会になり、ファクトフルネスがさらに必要になる
以上が、本書の簡単なまとめとなるが、本書は分厚く内容も濃い。
ファクトフルネスという定義と現象自体を、概要から把握しきることはできず、多くのモデルケースを知りながら、把握する作業が必要である。それが、分厚いベストセラーとしての本書の特徴だ。ただ、それでもよくまとめられているので、一度の通読でかなり自身のレベルアップになる。

私が経験した早稲◯大学と学習◯大学での経験
私は、大学院探しをしている時から東京芸大在学中前後にかけて、映像学において負のファクトフルネスに陥っている大学を幾つか見た。それが早稲◯大学と学習◯大学だ。
この二つの某映像系の大学院では、1960〜70年代の古い映像研究書籍を用いて、無理矢理難しく映像学を考えるという作業をしていた。時代は2010年代で、4DXシアターなどができていた時代だ。
1960年代のフランス人が、世界に先駆けて、普遍的とも言える映像学を設立しようとしてヌーベルバーグという運動をしたのはわかる。だが、いくらなんでも若い人にそれを“今でも使える”とか“今のハリウッドがむしろ間違っている”という教え方をするのは、どうだろう。
だが、2000年代〜2010年代というのは多くの映像系の大学でそのような教育が行われていたのだ。そのことに関して過去に記事を書いている。
関連記事:フィルム・アート―映画芸術入門:名古屋大学出版会は、映画製作者・映像系学生が読むべき本か? 裏要約・概要
これは、本書で書かれている欧米の白人が、アフリカや東南アジアを見下して、商売の機会をみすみす見逃し、中国においしいところを持っていかれる状況に似ている。
世界は、確実によくなっていて、前に進んでいるのだ。
というか、過去がずっと良かったことなど本当は一度もないのだ。
現に、私は東京藝術大学に進み、世界で最先端の映像学がどんな状態かを知ったし、中国、アメリカ、フランスからの留学生たちからも、世界の最前線の映像学事情などをいろいろ聞いた。
1960年代の映像業界の出来事は尊重するべきだが、もう使えないのだ。
このようなことが世の中でたくさん起きている。

アル・ゴア『不都合な真実』への捏造・改竄データを拒否
最後に、本書に書かれていた驚くべき内容について書いておきたい。
著者のロスリングは、アル・ゴア米国大統領が『不都合な真実』を書くときに、発展途上国の医療に関して、資料を提供することを求められたという。いわゆる、権威的な学者からのエビデンスである。
そこにアル・ゴアが、もっとドラマチックな要素を足して欲しいと追加の依頼をしてきた。
本書には、人間の能力を引き出すために“ドラマチックにことをすすめる”必要があるという内容がある。結構な分量が割かれている。なぜ、そんなに分量があるのかというと、これは逆に劇薬の側面があるからだという。
ロスリングは、アルゴアの申し出を断った。
アル・ゴアは『不都合な真実』の発刊後、5年くらいは時代の寵児となってエコロジー業界で剛権をふるった。だが、今では彼の気象パネルが捏造であったことは誰でも知っている。彼は、結局善意を持つ、だが世界を騙したペテン師として人生を終えそうだ。
ロスリングは、ファクトフルネスの研究を極めたが故に、この長期的な目線を持つことが出来たし、アル・ゴアがガンガン売れている時も、自分のそのスタンスを崩すことはなかった。
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