『正直不動産』(5)(6)を読むべき人
- 結婚してからマンションや戸建てを購入した夫婦
- 遺産相続で不動産を引き継ぐ可能性のある人
- 孤独死を起こした、もしくは起こす可能性のある親族を持つ人
- 築古戸建て投資をしようと考えている人
- 賃貸に住んでいて、家賃交渉をしたい、値上げされる可能性のある人

『正直不動産』(5)印象
- しょっちゅうクビになる社員が多かったが今回は安定
- 物語のスタイルが安定してくる
扱われている内容
- AD物件(手数料・広告費両取り)
- 中抜き(フルコミッション関連)
- フルコミッション(売れない営業バージョン)
- トリプル両手
- 再建築不可(旗竿地)
- 共同名義(離婚)
- コラム:大島てる(事故物件サイト運営)VS夏原武(本作原作者)対談
関連記事:『正直不動産、読んでます』で詐欺から身を守れ。現代を生き抜く防御マンガ。正直不動産:全巻解説
前半では不動産業界に蠢く人間たちの本性が多く取り上げられてる。給与体系、収入に関わるトピックが多いからだ。
また、共同名義と再建築不可は近しい内容だ。相場より値崩れした不動産物件の主要な出処は、「相続」と「離婚」。特に区分マンション、戸建ての投げ売りは、「離婚」の方が緊急性が高く、値下げ幅も大きい傾向にある。共同名義は、ローンを組む時に有効であるが、その後のリスクについては端的な説明しかされない。
不動産投資家にとって「再建築不可」は、最も知られた購入物件の問題。物件によってケースも様々で、ここには法律の闇がある。だが、本巻は具体的なモデルケース、しかも汎用性が高いケースを採用。これ一話でそれなりの対策ができるものだ。
一般人が投資を初めて考える時、今は「築古戸建」をオススメされるケースが多い。そして「再建築不可」の物件を安さにカマかけて非常に多くの初心者が購入している。業者・プロと初心者の対応ギャップがあるのが、この「再建築不可」であるといえよう。この「再建築不可」に対して、果たしてこの漫画はどんな態度をとるのか。これはぜひ確認しておいた方がいいだろう。

『正直不動産』(6)内容
- 共有名義(後編)
- 埋蔵文化財包地域
- 任意売却
- 賃料増額請求
- タワーマンション
第6巻に関しては一般人に向けられた章が多い。中でも際立つのは、
- 任意売却
- 賃料増額請求
だろう。順に解説していく。
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まず、前回あまりふれてこなった共有名義について。
風風の共有名義でマンションの購入しており、離婚後に泥沼の裁判に発展すると言うことが日本では日常茶飯事で起きている。しかも、縁起の面でこういう物件は売れずらい。ここでは主人公たちが、そのような物件を売る苦労が表現されている。苦労する物件は当然、値段も落ちやすい。
本作では、この問題で一般的に起きそうな内容を取り扱っている。
また、なんと言っても自己破産、夫妻による任意売却の話が良い。コロナで世の中には失業や解雇が多数発生し、現実的にも任売物件が増えた。任意売却は予想以上にハードである。なぜなら、前提としての借金の額があるからである。主人公の長瀬の感情の動きも、現実にはこういう著作物にしなければ見えない要素を多く抱えている。
賃料増額請求は、今のようなコロナショックからのバブル期に突入過程で、これから多発するだろう。私の映画監督の友人でも最近、私にマンションの賃料が大幅値下げさせられそうだと、泣きの電話をかけてきた人がいる。
不動産業は、総意として、家賃の大幅値上げをしつつ、力のない世帯を追い出し、ローンで高額かつ不便で程度の低い住宅を買わせるということを必ずバブル期にする。業界がそう勝手に動くのである。その辺も、この第6巻から読み取ることができる。
不動産に不安のある人は、是非読んでおいて欲しい内容である。