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著者紹介
瀧本哲史(1972〜2019)
日本のエンジェル投資家、経営コンサルタント。株式会社オトバンク取締役(オーディオブック)、全国教室ディベート連盟副理事長等を歴任した。
東京大学を卒業後、同大学の助手を経てマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、エレクトロニクス業界のコンサルタントを担当。2000年より、多額の債務を抱えていた日本交通の経営再建に取り組む。主な著書に『君に友達はいらない』『僕は君たちに武器を配りたい』(2012年ビジネス書大賞受賞)など。
目次
- 第1章 秘密結社をつくれ
- 『七人の侍』という奇跡を成し遂げたチーム/天動説が消えたのはなぜか/青年よ、小さなゲリラ的チームをつくれ/傍流の記者たちが成し遂げた報道の金字塔、「プロメテウスの罠」チーム/「最高の授業」を貧困地域の子どもに――バングラデシュの「ドラゴン桜」/エンジェル投資は「人への投資」/秘密結社の代表格、フリーメーソン/『ワンピース』ルフィの幻影/本物の海賊の行動原理/ほか
- 第2章 本当の「よいチーム」とはなにか
- マッキンゼーの「チームアプローチ」/SNSでつながることの無意味さ/ロックフェラーのブラックブック/肥満は伝染する/東京大学の合格校が決まっている理由/見晴らしがよい場所に行け/ブートキャンプで自分を鍛えろ/バイトで潜り込むのもひとつの手段/人間の「交差点」がイノベーションを生む/会社はなぜ存在するのか/弱いつながりの重要性/私の成功は、私のまわりの成功で決まる――ネットワークの効用/東日本震災で生命の危機584人の透析患者を緊急搬送せよ/ネットワークの「棚卸し」/ほか
- 第3章 ビジョンをぶち上げろ、ストーリーを語れ
- 成功するチームに必要な「冒険者=ヒーローの神話スキーム」/最初のビジョンは大きいほどよい/教育改革で日本を変えるTFJの取り組み/グーグル、アップル、ディズニーを抑えて人気第一位の就職先とは/ビジョン策定のポイント/「ぶち上げる」ことの持つ力
- 第4章 よき仲間との出会いのために
- 倒産寸前のタクシー会社運転手の言葉に感動した/アルマゲドン・メソッド/クレーマーをも仲間に引き込む/「業界軸」「会社軸」「自分軸」でラべリングする/共感をよぶストーリー/自己開示がもたらすもの/メガバンクに20年以上勤めた男の独白/大企業のなかで変革をおこすチーム/「なぜあなたと仕事をしたいのか」を明確に説明できるか/波紋が生じた岩波書店の採用条件/ほか
- 第5章 チームアプローチはあなたと世界をどう変えるか
- アメリカの強さの秘密/レベルが違うアメリカのリクルーティング/非公式な組織に所属せよ/東京大学で始まる「Lobby」活動/いじめがおこる社会の特性/カリスマから群雄へ/なぜナショナリストには貧しい人が多いのか/「三丁目の夕日」の世界に戻ってはいけない/世界から人々がやってくる国に/ほか

概要(ブログ主によるまとめ)
最近よく耳にする“コモディティ化”という言葉は、瀧本氏によって使われるようになった。
この“コモディティ化”というのは、志向能力や流動的な価値を失い、魅力を失ったモノ・人を指す。例えば、一度安住する人間が上層部に登場すると、その組織は腐敗しやすく、脆くなり、新しい利潤を生み出しにくくなる。そういう状態を揶揄する意味で、頻繁に使われる。
本来、コモディティというのは固定資産で金や銀などのものをさす。それゆえ魅力的な言葉であった時期がある。だが、金や銀、ダイアモンドはそれ自体、何か新たな価値を見出すというものではなく、しかも今はそれらのものよりも煌びやかなツールが増えた。
それに伴い、近年英語圏でこのコモディティは、意味的に確かに変わってきているのだ。
危機の本質は、親友・親・知人にあり
本書は、人間関係のコモディティ化に危機感を持つべきだという書籍である。
昔から付き合いがある、大学が同じである友人、親子関係、配偶者などの人間関係は、何かを始めようとするときにドリームキラーとして、その人の前に立ち塞がり、無意識に邪魔をする。大体は、良心をちらつかせて、道を塞ぐわけだ。そんな経験をした人は少なくないだろう。
前書『僕は君たちに武器を配りたい』(2012年ビジネス書大賞受賞)は、個人のあり方について書かれた書籍であった。本書はその続編で、チーム作りやチームへの加わり方を語っている。
年齢もバックグラウンドも異なる個人が、困難な目標のために集まり、力を尽くす
これからの困難な時代を生き抜き、人生をより豊かなものにする方法とはなんだろうか?
複雑化するこの時代を生き抜くすべとはなんだろうか?
その答えは簡単である。それは、他人の力を借りることである。
だが、他人なら誰でもいいかというとそうではない。ある程度の関係がなければ、連携力が発生しないからだ。本書で語られるのは、そんな人の選定方法と連携力の構築方法である。
エンジェル投資家として、また京都大学・東京大学などで企業分析や起業論を教える人気教官として
多くの人や企業に接し、自ら「成功するチームのあり方」について研究してきた瀧本哲史氏が、
実際に投資してきた企業や古今東西の実例をもとに展開するチームアプローチ論を語る。
Q:どんな人が読むべきか?
A:本書で書かれているのは、頭ではわかっているけど、理解できていない事象が多い。
チームや組織論の本は、周知の通りこの世に溢れている。
そういう前提で、本書を手に取れる人がふさわしいと思う。むしろ、その手の本に失望しており、なんなら本書にも期待していない、というようなくらいのうらぶれた人間がふさわしいかもしれない。
瀧本氏の書籍の特徴として“わかりきっていると思っている事実が、一番理解されていない”というテーマが多く含まれているように見える。
彼は常に“大枠病”に囚われた人間に対して本を書いている。
本来“大枠”というものには、相反する対立軸やリスク、ブラックホールなどが内包しているが、学び方を誤るとそれらを全てスルーする。そんな面倒なことを、もう一度、学び直していいと思う人間だけが読むべきだと思う。
Q:なぜ、瀧本氏の本書は売れたのか?
A:前の問いから続くが、タイトルや目次、概要を読むだけでは、彼の書籍の魅力を知ることはできない。むしろ「そんなこと知ってるよ」と、バカにしたくなるかもしれない。
ビジネスや成功をする過程で「馴れ合いの友達はいらない」など、ある意味恥ずかしすぎて人に言われたくないことである。だが、人間はそういうものを大抵、冷静に思考できない。
瀧本氏の書籍は“わずかな判断の差が全て”ということを、常々、読者に示してくれる。
気をてらったタイトルや内容が一切ないというのが、その表れだ。
私はいつも彼の書籍を読み、その度に、その“わずかな判断の差が全て”というのが、ビジネスパーソンに今、最も大事なことだと思う。凋落が著しい日本人と、世界覇権国のアメリカや新興国の雄の中国との差は、そこに終始していることに気づかせてくれる。
なぜ売れたのか? という問いに応えることはできていないが、こういう地味だが人のやっていないことを継続した点が、世の人に重宝され、部数に現れたのではないかと私は感じている。
あと、ビジネス書籍で黒澤明『七人の侍』を表紙にしたのもいい戦略だと思う。
Q:具体的に、本書のどういう点がいいのか?
A:彼がエンジェル投資家として付き合いのある企業や起業家の例が、山のように書かれている。
具体的な例としては、今回はとりわけオーディオブックのシェアナンバーワンのオトバンクの例が豊富に書かれている。
また、GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック(社名変更:メタ)、アップル、マイクロソフト)よりも全米で高い就職人気を誇るTFA(ティーチ・フォー・アメリカ)というNPOについても、詳しい情報があり、クラウド・AI時代の優れた組織論を語る上で欠かせない情報が書かれている。
ここで語られる人間の労働マインドに関する記述は、とても重要だ。

いずれにしても、瀧本氏の書籍の中では本書はかなりのオススメできる内容だ。ぜひ、『僕は君たちに武器を配りたい』と一緒に読んでもらいたい。
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