中国分析の第一人者である遠藤誉・副島隆彦・石平氏たちの情報から、今後の中国の動向について考える。メイン書籍『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』遠藤誉

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習近平は一体どのような姿勢でプーチンに接し、プーチンが引き起こしたウクライナ戦争にどう対処しようとしていくのか。カオスな国際情勢を、中国を中心に読み解く。

概要

習近平はプーチンのウクライナ軍事侵攻には反対だ。なぜなら攻撃の口実がウクライナにいる少数民族(ロシア人)の虐待で、その独立を認めたからだ。
これは中国のウイグルなどの少数民族の独立を認めることに相当し賛同できない
しかしアメリカから制裁を受けている国同士として経済的には協力していく。これを筆者は【軍冷経熱】という言葉で表している。ロシアが豊富なエネルギー資源を持っていることも【経熱】の理由だ。ロシアがSWIFT制裁を受けていることをチャンスと捉え、習近平は人民元による脱ドル経済圏を形成しようとしている。中国はEUともウクライナとも仲良くしていたい。
一方、ウクライナは本来、中立を目指していた。それを崩したのは2009年当時のバイデン副大統領だ。「ウクライナがNATOに加盟すれば、アメリカは強くウクライナを支持する」と甘い罠をしかけ、一方では狂気のプーチンに「ウクライナが戦争になっても米軍は介入しない」と告げて、軍事攻撃に誘い込んだ。第二次世界大戦以降のアメリカの戦争ビジネスの正体を正視しない限り、人類は永遠に戦争から逃れることはできない。

著者紹介

遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授。理学博士。著書に「ネット大国中国」「チャイナ・ナイン」など。

本書の執筆の秘密

本書の冒頭で、遠藤氏は自身の中国での生い立ちに触れる。そして、ウクライナ侵攻が自信にとって、幼児期のトラウマを引き出し、激しいPTSD(心的外傷後ストレス障害)となって表れたという。

その影響として極度の睡眠障害やフラッシュバックなどが表れた。発症後、どうにかして症状を改善させようと多くの心療内科にかかったが、その結果は芳しくなく、自力でこの症状を改善できないかと考えるようになった。そして、自分が考えている不安を分析し、書籍化するという発想を思いついた。

そうして生まれたのが、本書『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』だという。中国分析の第一人者として政府機関(自民党)に定期的に、相談を受けている遠藤氏は、自分の抱えている不安をロシアの影響を受けた中国を分析して、解消するに至ったということだ。

ブログ主の勝手な解釈

習近平 3期目を分析した遠藤誉氏のインタビューから興味を持つ

関連記事:習近平氏、3期目続投確定 中国共産党大会が閉幕

習近平の3期目続投を決めた共産党党大会の中で、前総書記の胡錦濤が偽の人事リストを渡され、それに対して、隣の習近平に抗議をした瞬間に会場から排除されるという事件が起きた。

しばらくは、この内幕は何が起きたのか明らかにされなかったが、後日手元にあるファイルのやり取りが主な問題であることが明らかになった。

李克強排除より、軍部の腐敗撲滅・連携強化発言に注目した遠藤誉氏

この時に、ほぼリアルタイムで遠藤誉氏が状況解説している動画が、当初YouTubeにアップされており、そこでの遠藤氏の主張に非常に興味を持ったので本書を読むことにした。

遠藤氏の、3期目党大会での注目ポイントは以下の通りだ。

  • ほぼ全ての人事が習近平の亡き父、習仲勲(ちゅうくん)がらみだった
  • 軍部の腐敗撲滅がここ数年の最大の仕事だと、習近平が公に発言したのは衝撃的
  • 2035年まで習近平はトップになる予定であることがわかった

遠藤誉氏の分析は、ウクライナ戦争の影響によって習近平が軍部の腐敗の排除を急いだことに集中していた。それは、軍部の腐敗があるせいで「最新の軍備ができない」こと、また、諜報活動で「ロシアのようになってしまう(アメリカに戦争を仕掛けられる)」ということを懸念したのではないかという話だった。

遠藤氏によると、このように腐敗撲滅運動の内幕を具体的に国民に対し、習近平が話すことは非常に珍しいと言っていた。彼女は、このことに関して、独裁者の習近平は基本的に嫌いだが、敬意を感じるとさえ言った。私はこの部分に、非常に興味を持った。

本書の最大のテーマ=中国は台湾を攻撃することはない

中国出身の右翼系知識人を代表する石平氏など、中国、台湾系の著名人は習近平が台湾に攻め込むと予想するが、遠藤誉氏はその予想とは全く逆の立場をとる。ちなみに、石平氏は日本に帰化してからずっと台湾戦争を煽り続けている。

中国・台湾出身系の知識人とは逆の立場をとる遠藤誉氏

現在、日本の言論界では中国分析分野に中国から日本に帰化した石平氏やトランプ関連で著名ユーチューバーになった台湾人で東北大学准教授の張陽氏など、中華系の著名人が幅を利かせている。

彼らに共通するのは、習近平は台湾侵略を絶対行う、という視点だと言える。

だが、遠藤誉氏は同じサークルにいると言われているこれらの知識人とは、全く逆の立場をとる。

習近平とプーチンの軋轢を証明してみせた

『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』を読んで、この書籍が何のために書かれたのか、私はわかった。というか、非常にわかりやすい書籍だった。

その要点は以下の通り。

  • 2035年に習近平はこだわっている
  • 2035年は最悪遅れても中国が経済でアメリカを確実に抜き去る時期
  • 同時に、2035年は習近平自身が鄧小平の任期年を越す年でもある
  • 習近平は鄧小平に排除された父(習仲勲)の怨念で政治活動をしている
  • ロシアを援助はするが賛同することはない
  • ウクライナは中国の友好国で、核防御協定(ウクライナを核攻撃から守る)を結んでいる
  • ロシアの占領スタイル(小国独立タイプ)は、中国の政策の逆で迷惑
  • ロシアの現在の侵略手法を認めると、ウイグルの独立なども認める方向に行ってしまう
  • アメリカの軍事力に絶対及ばないので、台湾侵略はない
  • 2035年、経済的に覇権国になれば、自動的に台湾が手に入る仕組み
  • ゆえに、中国は台湾侵略もロシアとの軍事連携も可能性はゼロ

遠藤誉氏の著作によると、プーチンと習近平の大きな違いは、ロシアがNATOに加盟しそうな国々を軍事的に切り離して、独立選挙で小国独立をさせる、というスタンスをとるということだ。

これは、中国のとっている小国併合型の思想とは逆である。そのために、ロシアに軍事的に援助をすると、国内世論が割れてしまい、現在の習近平の支援者がいなくなってしまう、可能性が高いのだ。

あらゆる可能性から台湾侵攻が無いと判断

この書籍を書くきっかけは、ロシアのウクライナ侵攻から発症したPTSDで、その源は、遠藤誉氏が幼時期に中国で体験した、日本による中国侵略だという。

そこから、あらゆる可能性を考え、中国の今後の動向を予想したのが本書である。

だが、その結末は同氏が危惧した戦争危機とは無縁というものだった。その結末に至る論理展開は、実に着実で、なかなか覆りにくい。

後半では、バイデン大統領がビクトリア・ヌーランドを使って仕組んだウクライナ信仰のことも分析しており、その内容は佐藤優氏と副島隆彦氏の対談本で導かれる結論とほぼ同じである。

関連記事:あの戦争はビクトリア・ヌーランドが2014年に仕組んだ。佐藤優の目立つ回『欧米の謀略を打ち破り よみがえるロシア帝国』副島隆彦・佐藤優

PTSDを発症したからと言って、無理に非戦の結論をぶち上げ、安心するという感じでは無いのは間違いないし、政治や経済だけはなく、金融や証券市場などにも深い分析をおこなっている遠藤氏の予測は、私はある一定の支持ができそうだと思っている。

Q:どんな人が読むべきか?

A:極東での戦争リスクを懸念する人全般的に役に立つ書籍だと思う。

台湾が独立宣言をしなければ、衝突は起きない理由

書き忘れたことが一点あったが、遠藤誉氏の書籍は、台湾と中国の衝突を否定するにはある前提がある。それは、台湾が独立宣言をしない、ということだ。そしてその独立宣言も、実質的にはかなり可能性が低い。それは本書に細かく書かれている。

北朝鮮・韓国・日本の衝突リスクは、近年の北朝鮮のミサイル打ちまくり状態に慣れてしまった日本と韓国の状況と連携具合を見ればわかる通り、かなり低くなっている。よって、極東での戦争リスクは、残すところ台湾・中国問題だけだと言える。

その中で、遠藤誉氏は習近平の政治スタンスの中に、衝突が起きる可能性が極めてゼロ%であるという要因を見ている。現在、これほど安心できるソースはないだろう。

世間やマスコミ的には、依然として衝突リスクを煽り続けているが、そういうのに意識を左右されやすい人は、ぜひ一度読んでみるべき初期だと思う。今なら、オーディブルの登録は1ヶ月無料だし、本書は読み放題に登録されており、短期間で読むことができる。おすすめである。

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