本作はアマゾンオーディブルやオーディオブックで耳読みすることができます。
著者紹介

スコット・ギャロウェイ(1964〜)
ニューヨーク大学スターン経営大学院教授。ブランド戦略とデジタルマーケティングを教える。特にブランド戦略の専門家として著名で、経営者でもある。
L2(ブランド情報分析会社)、Red Envelope、Prophetなど9の会社を起業。ニューヨーク・タイムズの役員も歴任。クレイトン・クリステンセン(『イノベーションのジレンマ』著者・名著!!)、リンダ・グラットン(『ライフ・シフト』著者)らとともに「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出。『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は20万部のベストセラーになり、日本では「ビジネス書大賞2019 読者賞」「読者が選ぶビジネス書グランプリ2019 総合第1位」の2冠を達成、日本に本来のFANGではなくGAFAという言葉を定着させる原因となった笑。
プライベートではTwitter社の株を自腹で買い、株主総会に出席。自分を役員にするように働きかけたり、ニューヨーク・タイムズ役員として社長の交代に動くなど、モノ言う投資家としての面も強く持つ。グーグル、アマゾン、マイクロソフト、アップル、フェイスブック研究は長期に渡る。
目次
- はじめに ニューヨーク大学人気講義「ハピネス」
- 第1講 幸福の講義――激変する世界で幸せになる
- 第2講 成功の講義――格差が広がる世界で金を手にする
- 第3講 愛の講義――残酷な世界を生き抜く
- 第4講 健康の講義――無慈悲な世界で活力を保つ
まとめ(ブログ主の勝手な解釈)
前著『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は名作だった。これは間違いない。
ここまでグーグル、フェイスブック、アマゾン、アップルの見えざる危険性を、わかりやすく現実に即して、しかも時々ジョーク(ハゲネタなど)を織り込んで清々しく話した人間はいない。
関連記事:GAFAの恐怖を暴いたが、実は新卒生向け就職本。GAFAに潰される企業・起業を見抜く『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』スコット・ギャロウェイ
関連記事:コロナ後、GAFAの寡占が強まる。ビックテックの2020-21年動向手法分析『GAFA next stage ガーファネクストステージ』スコット・ギャロウェイ
ただこの著者、スコット・ギャロウェイは、現在はやや引退気味で、ニューヨーク大学の教授としての活動を軸に執筆活動やコンサル活動をしているようだ。
そんな彼が『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の続編を書いてほしい、とい言われながらもそれを無視して次に書いたのが本書『HAPPINESS(ハピネス)』だという。
スコット・ギャロウェイの半生を、学生に笑わせながら語る本
本作はアマゾンや楽天などのサイトで、評価が非常に低い。理由は、前著に比べると格段に得られる知識が少なく、ビジネスに全く役に立たないからだ。
末期癌に犯された母親のことや、老いとの戦い、二度の離婚、勉強ができないのでさまざまな裏口を使って名門大学の学歴を取得したこと、人の下で働けずにしょうがなく行った起業と運などについてで、ニューヨーク大学の学生たちが、どうしてこんなボンクラなおっさんの話を聞きたがるのか不思議なほど、ビジネスともGAFAとも無縁だ。
スコット・ギャロウェイの教訓から導き出される“鉄則”
- 起業は不景気の時にすべき(資金集めに苦労よりも激安な人件費)
- 会社で出世できるなら起業しないほうがいい(ハゲる)
- 親の介護は距離を置け(死に目に合わないくらいが良い)
- 子供は嫌いだが、いたほうがいい(性格が安定する)
- 子供がいて離婚するほうが幸せ(振り返る幸せ)
- 起業しても人の下で働く可能性は高い(企業買収・出資など)
- エイズによって誰がゲイが表面化したのは事実
- 偉くなればなるほど、サボって運動をしろ
- 機械的な礼儀正しさは資産を守る(礼儀作法は反射神経だ)
上記のことを、彼はニューヨーク大学の20代そこそこの人間たちに語った。
どれも共感される可能性は低そうだ。記憶に残って後で役立つという類の、貴重な知識でもない。では、なぜこの講義が人気だったのか?そこについて考えてみる。
ある程度の成功者に直接言われる“妥協的成功感”
世の中の大成功者は、えてして冷たい。本当のことを喋らない。自分のことを喋りすぎる大人で、成功している人は少なく、ちょっとでも有益なことをしゃべっている人はもっと少ない。
それらのこと考えると、決して大成功者ではないちょいリッチのこの著者は、ダサいおっさんの一歩手前だ。だが、最近はむしろこういう人間がかなり少なくなってきている。そして、何よりも著者は遅咲きの部類に入る。むしろ大成功者になる、人間性に前の歯止めがかかった常識人にも見える。
裏テーマ:GAFA時代の大成功者は、奇人だ:奇人に憧れるな
実はよく読むと、本書はGAFAやGAFAムーブメントを長期にわたって研究し続けてきた学者兼経営者による『奇人になることを回避する方法』の本だとわかる。つまり、彼は、自分がGAFAを攻略し、勝てるかもしれない策を講じるとともに、常識人になることを伝えているのだ。
本書を読むと大成功者=奇人が、なぜ幸せでないかがわかる
GAFAを研究するということは、奇人の集団や奇人に憧れる人々を研究することでもあり、そこには著者の最大のテーマであった“ブランド学”も関わってくる。
日本で、一番の金持ちは中小の経営者である、ということが真実であるように、大きなゲームには幸せがないのはアメリカも一緒らしい。
有能な若者は効率性が圧倒する未来に、危機感を持っている。それを当の若者たちもわかっている。だから、本書(本授業)が人気化するのかもしれない。
Q:どんな人が読むべきか?
A:前提として、『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』を読んでいることが望ましい。
なぜから、本来スコット・ギャロウェイという人物は容赦無く、相手を分析し倒して、かなり怖い結末を引っ張り出せる人間だからだ。彼は間違いなく人間味のあるふりをしている。そんな人がこういうハートウォーミングな本を書く。そういうノリで読むべきだと思う。
ギャロウェイは『ブランド学』という欲望学の専門家
『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』では、GAFAの四強の中で、まっさきにFacebookの脆さを指摘しており、最初に脱落するのはマーク・ザッカーバーグであり、メタ社であることを既に言い当てている。そして、2022年からその兆候が現れている。

ブランド分析は『予言力』:facebookの脱落を誰よりも早く予言した能力
著者の専門は『ブランド分析』で、スコット・ギャロウェイのクライアントはフォーチュン500企業の約10〜15%に上ると言われている。かなりの支持率だ。
そして『ブランド分析』という将来性を構築する作業には、当然、未来の人間の欲望を操る技術であるために、預言者としての能力が要だ。それは温かみのある人間ができることではない。
そんな企業にとっての『冷たい』存在が、目の前に学生に対してはこういう、古き良き時代の教育者であろうとする皮肉を、本書で目にすることになる。そんなもの当然、レビューは低くなる。
ただ、こういう裏腹なものは、楽しめる人には楽しめるものなんだと思う。
本作はアマゾンオーディブルやオーディオブックで耳読みすることができます。