
著者紹介

1972年、沖縄生まれ。琉球大学教育学研究科教授。専攻は教育学、生活指導の観点から主に非行少年少女の問題を研究。1990年代後半から2014年にかけて東京で、以降は沖縄で未成年たちの調査・支援に携わる。
テープ起こしを基本とした少女たちの「リアルな会話」
私が本書を手にした理由は、実は「沖縄」や「女性の権利」に興味があったというわけではない。本をパラパラとめくった時に散見された、非常にイレギュラーでリアルな10代の会話が収録されていたからである。どうしてこんなものが書けるのか?その謎は後ほど解決した。これは著者が、ICレコーダーをベースに文字起こししたものを書籍化したからである。
東北人の私が読んだ感想「冬の死の恐怖がない」から起きること
私は東北の豪雪地帯出身である。そんな私が本書を読んだ感想は、悩みや苦労はわかるが、この問題は沖縄独自の側面が非常に強い、という点だ。
経済規模が限られた地方としては、暴力と妊娠の問題は沖縄同様
沖縄は本土に対して経済的な交渉をきちんとしていて、過激な思想を持っているように見える分まともなところがあるというのが私の長年の感覚である。要は、諦めないのである。
東北には、軍備施設もあるが少ない。その代わり、放射能施設が多い。これは沖縄にはない。私からみて、地政学的な差別は沖縄と東北の差はあまりない。では、なぜ見た目の違い「運動が活発か活発ではないか」というのがあるとしたら「冬」の存在だと本書を見て思った。
簡単に言う。沖縄では風俗さえ出来れば、女性は子育てできるのだ。
月の暖房費が5万以上かかり、観光地も少なく性風俗が発達していない東北では不可能である。
私が本書から得られたもの「10代の追い詰められた女性の会話」
私が好んで作るような作品の脚本には、この沖縄の少女たちのような暴力・妊娠に苦しむ女性は登場しにくい。だが、本書に膨大に登場する少女たちの会話には「苦しむ人の会話」の典型があった。
それは一言では言えないが、「会話をする」という意識よりも「情報を早く・強く伝える」という、非常に動物的でもあり、しかしAIや翻訳サイトにも現れるような、「目的重視の会話方法」である。

会話の優れた本を読む理由
本書は「女性の権利」に対して、著者が主眼を投じて書かれているものです。その辺は私もわかります。ただ、私が皆さんに伝えたいことは別の点です。それは『会話の優れた本を読む』と言うことです。
会話には、当然その発声者の年齢、時代、立場が含まれています。しかし、それも重要ですが、本書のような書籍は、激しく揺れ動く内面の状態であったり、経済的な切迫感、など、地の文で説明するとつまらない数字の羅列になりがちなものも含めて、表現できます。
これに関しては、私も本を出したり、執筆したものを作品化している経験があるので、言えるのですが、著者が意図していないものであったり、他人の協力を経て表現できる場合が大きい。
例えば、本書はICレコーダーで録音したものをベースにし、取材者に原稿確認してもらうという工程で、複数の第三者の協力を取り付けており、どんな文豪も書くことができない優れた会話を成立しています。私もケースで言えば、映画は俳優がセリフを覚えて、それに準じて表現してくれるので、リアルな会話を表現できます。私の場合、ほとんどの俳優さんにセリフの改変を許可しているので、本書のような効果を生み出すことが多いのです。
会話の無い女性の権利について書かれた書籍に読み飽きた人に、新たな発見をもたらす、という意味で本書は名著だと思う。
これが私の結論です。本書は、会話という生活に基づいたものを忠実に表現しているが為に、追い込まれた人特有の滑稽さ、荒唐無稽さもきちんと表現されています。それがどんなにすごいことか、ぜひ、興味のある人は本書を手に取っていただけたらと思います。
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