戦時中の生い立ち・学歴の効果・ずる賢さ、泥臭い真実(インタビュー動画あり)『夜と霧 新版』ヴィクトール・E・フランクル(著)要約

オーディオブック

著者紹介

1905年ウィーン生まれ。ウィーン大学在学中よりアドラー、フロイトに師事し、精神医学を学ぶ。ナチス強制収容所での体験を元に著した『夜と霧』は、日本語を含め17カ国語に翻訳。発行部数は、(20世紀内の)英語版だけでも累計900万部に及び、1991年のアメリカ国会図書館の調査で「私の人生に最も影響を与えた本」のベストテンに入った。他に読売新聞による2000年の「読者の選ぶ21世紀に伝えるあの一冊」のアンケート調査で、翻訳ドキュメント部門第3位。

生前のインタビュー動画

本書の特徴・概要

  • 第二次世界大戦にアウシュビッツに送られて惨殺を免れた医師のノンフィクション
  • 戦乱時の混乱に必要な「身分」「人格主義」「ずる賢さ」が書かれている
  • 前半のアウシュビッツ収容時の精神の動きの描写が凄い
  • 「私は専門医である」と宣言した後の境遇の変化を著者は書きたくなかった
  • 戦時中に求められる「人格主義」とは?=いい人はみんな死んでしまった

戦中から戦後にかけて、収容所日誌の出版はブームとなっていた

本書は、ウィーン学派に所属して精神科医として晩年、優れた業績を残した医学者が、戦後しばらくしてから書いた収容所日誌である。戦後、実はこのような収容所日誌は数多く出版され、ブームになっている。
日本で言うと当時人口8000万人中の800万人が戦地に駆り出されたという。
単純計算をしていくと、まず男性と絞って4000万人。幼児や老人を排除して2000万人。障害者や不適合者、国内での従軍者などを排除して、おそらく1500万人。いい歳の男の約半分くらいが、戦争に駆り出されたと考えられる。その中で、無事帰還した人間の中で収容所経験者はそんなにいないだろう。多く見積もっても、20万人から50万人。その人々の中からは、当然、自身の体験記を語って作家デビューをしたいと思う人間が出てくるだろう。

本書は、収容所日誌ブーム下火の中で発行

収容所日誌の発刊は、戦前から始まり終戦直後にピークを迎えたらしい。
そんな中、本書は1946年の暮れに出版されている。
出版に際して、著者は「流行した収容所日誌とは違った視点で書こうと思った」と語っている。

著者フランクルの狡猾な生き残り戦略が隠さず書かれている

著者は、アウシュビッツに収容されて真っ先に「お前は目をつけられている。最初に殺されるのはお前だろう」という言葉を言われる。ここから、著者は自分の生き残り戦略を考え始める。

「私は専門医です」と宣言しつつ、精神科医であることを隠す

著者は、フロイトを生み出したウィーン学派のいわゆる「毛並みの良い」精神科医である。
そんな彼が、身を守るために初めに起こしたアクションは「私は専門医である」と名乗るという作戦だ。精神科医では負傷者の治療はできないと思われる。ナチスは職業を聞いたわけではなく、突発的に著者は言っている。そして、その後、著者による殺されるものと殺すものへの精神分析が始まる。

戦時を生き延びるために必要だった「身分」「家柄」「人格」

収容所されると、当然人間が変わる。
それは横柄な人間がナチスの前で、控えめになったり、ありもしない経歴を披露したりなどの行為となる。そのせいで、その人本来の性格・性質が分からなくなり、兵士は当然、無差別になる。
本書は言葉の真意が通じない人々の中での「身分」「家柄」「人格」の評価のされ方を詳細に記している。なぜかというと、それは著者がこれら全てに自信があるからだ。

いい人は全員死んだ。では「戦時における人格主義」とは?

本書は、人格主義(いい人戦略)の本ではあるが、現代の感覚で読むと全く役には立たない。それはこの見出しの通り、いい人は全員死ぬからである。

では、戦時におけるいい人とは誰か?
それは、「余計なことをしない人」であり、「相手の思考を先回りできる」人間である。
当然、これは著者のような精神科医の得意分野である。

結論:本書はどんな人が読むべきか答え:自身の努力が役に立たない職場にいる人

本書は、現代社会では役に立たないと、読んだ人は誰しもが思うであろう。
確かに、読み物としては面白いところはある。
だが、かつてよりもモノややることが多く、時間効率を考える必要の出てきた現代人には、必ずと言って勧められるべき本ではない。

では、どんな人が読むべきか?
それは、今「自分の努力ではどうにもできない職場にいる人」ではないかと思う。
例えば、終末医療現場、刑務所、出世コースを外れた官僚、ガチガチの家族経営企業で働く平社員、全員が自分よりも身体的・技量的に優れている末端スポーツ選手、斜陽産業に従事する人、などである。
それ以外にも、場合によっては大不況や戦争、国家の波乱などでこの本が必要となるケースは考えられる。もし、精神安定剤が欲しいのであれば、そういう人たちには全員、勧めることができる。

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