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権威性と選定基準
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負けない国際映画祭応募対策・無名監督にできること


国際映画祭の実際の応募をしてみよう。このサイトで簡単に応募できるけど、いくつも応募するとお金がそれなりにかかる。だから、絞り込みや応募のための準備が必要。ちょっと読むのに時間かかるかもしれないけど、頑張ろう!
PIT監督のプロフィール
東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻卒。現在は金融メディアの編集をしながら、映画を撮っている。全国劇場公開の経験あり。国際映画祭で多数受賞・入選経験あり。出品して自身も現地で参加した映画祭は20以上。一児あり。米国株・日本株・不動産など投資も詳しい。
あなたの作品を救う映画祭を探せ
FilmFreewayは、2010年台中盤から使われるようになった海外映画祭用エントリープラットフォームである。それ以前は、withoutboxが主流のプラットフォームだった。

FilmFreewayは課金構造スタンダードとなるまで
長きにわたって海外映画祭プラットフォームを独占してきたwithoutboxが、なぜ潰れてしまったかというと、実に不透明な課金体制だったからだ。ぶっちゃけいうと、映画祭が映画を見ずにどんどん課金できてしまうため、withoutboxから映画祭で上映に結びつく映画の割合が非常に低下したのだ。応募した映画を見ない。これは詐欺だと言っていいだろう。そのようなことから、数々の問題が起きて消滅に至った。最初はバレないと思ったのだろう。
その点、FilmFreewayは、応募された映画をある程度見ないと、映画祭側はエントリー料金を獲得できない仕組みになっており、透明性が高い。withoutboxにあった三大映画祭や大きな映画祭(審査されてなかった可能性が高いが)はないものの、それなりの映画祭に徐々に応募できるようになってきている。

他にもグレードの高い映画祭をずらりと揃えた応募サイトはあるけど、審査がユーザー側に立ったサイトはこのFilmFreewayがダントツだと思うな。きちんとした審査体制を作れていないプラットフォームは、本当に多い。気をつけて!
FilmFreewayの注意点
それでもFilmFreewayは注意すべきことが多い。
それはどんなことかというと、ダメな映画祭が多いのだ。
ダメな映画祭とはどんなものかというと以下の通りである。
- 開催しているのは不明な映画祭・透明性の低い映画祭
- 参加することにメリットがない映画祭
- 応募作品はなんでも上映してしまう映画祭
以前の記事(国際映画祭の応募・上映・評価について(1)権威性と選定基準)でも触れたが、映画祭を応募者が利用するメリットは、その映画の商品価値を高める権威性の獲得である。映画は、時間芸術で見終わるまで時間がかかる。ぱっと見で良し悪しがわからないという特徴ゆえに、見る前にわかる権威性が必要となる。上記の3点は、その権威性を場合によっては否定するものとなり、応募した作品のクオリティを著しく毀損してしまう可能性がある。
エントリーする前に映画祭選定で考えておくこと

上記の注意点を踏まえ、映画祭を探していこう。
私がおすすめする映画祭検索ポイントは次の通り
- (1)上位の伝統ある大きな映画祭から応募していく
- (2)20年以上開催履歴があり、上映歴をHPにキチンと残している映画祭に応募する
- (3)プロフィール情報を応募前に充実させておく

(1)は、作品にかけた労力やキャストの知名度などから、それに見あった映画祭を探して最初から妥協する必要はない、ということである。インディーズ作品の評価のされ方は、映画祭によるし何が起きるかどうかわからない。映画祭は主催者と審査員のものである。
実際、無名の監督の低コスト映画が、権威性の高い大きな映画祭でかかることは少なくない。なるべく、大きな映画祭から応募していくことをお勧めする。
(2)はなぜ20年以上前かというと、映画祭は継続することが非常に困難なイベントであるということと、20年前はオンライン映画祭がなかったからである。20年も続けば、相当その国での権威性も高まる。中には規模を縮小している映画祭もなくはないが、それでも信用度は高いことが多い。
また、オンライン映画祭は開催が容易であることと、やっているのかやっていないのかがわからないこと、継続しやすい、または経歴詐称をしやすいという点で応募はお勧めしない。
(3)は、とても重要である。英語ができなくてもやれることは少なくないので以下にまとめる
FilmFreewayのプロフィール構築について

まず、Aの予告編・本編登録だ
本編は翻訳字幕をつけたものがマストとなる。
それをYoutubeやVimeoに登録したものをセキュリティをかけておく。個人的には、国別の再生数や評価が見て取れるVimeoがお勧めだ。有料会員でないと使えない機能も多いが、少なくとも応募の間はかなり役に立つので、有料会員になっておくことを検討して欲しい。
また、予告編は国際映画祭に応募するときに最も重要な要素を持つ。
日本国内の映画祭では必須ではないため、予告編を作ったことがない人も多いかもしれない。予告編は結構自由がきく。作品の意図が伝わり易ければ、キャッチコピーをつけたり、内容を表現する文章やレビューなどを入れるのもいい。セリフなしのマスターショット(勝負カット)と音楽をうまく使えば、映画祭向けの一次審査で予告編を作ることができる。私はこのやり方で、海外の映画祭で結構いい結果をだしているものをよく見た。この場合、ストーリーが全くわからなくても良い。
次にBプロフィールである。
これはなるべ入念に書いて欲しい。特に自分にウリ要素がある場合は、重要である。例えば、ゲイ、レズビアン、マイノリティ的な生い立ちは映画祭で上映される可能性が高まる。映画祭は、非常にリベラルなものだからだ。また、経歴や過去に特徴のある人もなるべく書いたほうがいい。そして、できることならば自身の映画業界での戦略や作家宣言などがある場合も書く。これらは、ヨーロッパでの上位の映画祭で好まれる傾向がある。以下に箇条書きをしておく
- 予告編は字幕を入れたものをなるべく作る
- 字幕予告が難しい場合、マスターショット(勝負カット)をまとめたものでも良い
- プロフィールは自分のポジションを丁寧に書く(ゲイ、レズビアン、民族、宗教など)
- 作品が少ないジャンルでも応募できるようにする(ホラー、SFは需要が高い)

最後にCの記事&レビュー欄

記事欄は、メディアで取り上げられたことも載せておくべきだが、日本国内で上映された履歴や、助成金の獲得状況、学生映画であれば大学サイトで紹介されたことなどでもいいので掲載するべきだ。とにかく映画祭は、上映する作品を決めるときに、その作家に「事前にわかる信用」を求める。本当に作品を出品してくれるのか、ちゃんと完成しているのか、できたら映画祭に来て欲しいなど、いろいろ気を揉んでいる。
こちらからどんな情報が欲しいか察するよりは、載せられるものは全て載せる。それが一番良い方法だろう。
エントリー後にすること
もし、映画祭に入選するとそこでのメールのやり取りは結構難しい。なので、できれば英語ができる友人を探しておこう。また、現地での映画祭参加をすることになった場合、パスポートの申請も重要。
現地での上映の際のデジタルデータも用意しておこう。クオリティの高いデータを送信することになるので、一時的にVimeoなどの有料会員登録に切り替えるのも一つの方法だ。

最初はなかなか入選しなくても、一つの映画祭に受かると、その後どんどん受かるということはとてもよくあります。粘って頑張ろう。落ちるたびに、できたら自分のプロフィールや応募方法を見直していけるといいかも。
最後に:映画祭と付き合っていくために
映画祭というのは、競い合っているように見えて、実は横の繋がりが強いことがあります。映画祭を運営している組合や組織がさらに上位にあるケースもそれを示しています。例えば、米国アカデミー協会や英国王立アカデミーなどの支配下の映画祭が、FilmFreewayには多い。また、あそこの映画祭でかかったのなら、品質的にはいいから、こっちでも掛けたい、などどと、ワールドワイドなレベルで、同じような規模の映画祭は意識し合っているケースも見られます。
よって、入選したらできるだけ、親密なやりとりを心がけてください。
その映画の応募が、皆さんの次の作品へと繋がるよう、祈っております。

映画祭での上映は、今後のキャリアにとても影響するので、頑張って!幸運を祈っていますよ!