コロナ後のリモートワークの流行に騙されるな。地方在住者が目を背けたくなる都会の真実。この署名はハッタリではない『年収は「住むところ」で決まる』エンリコ・モレッティ

オーディオブック

著者紹介

エンリコ・モレッティ

イタリア出身の経済学者。カリフォルニア大学バークレー校教授。
専門は労働経済学、都市経済学、地域経済学。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)国際成長センター・都市化プログラムディレクター。サンフランシスコ連邦準備銀行客員研究員、全米経済研究所(NBER)リサーチ・アソシエイト、ロンドンの経済政策研究センター(CEPR)及びボンの労働経済学研究所(IZA)リサーチ・フェローを務める。ボッコーニ大学(ミラノ)卒業。カリフォルニア大学バークレー校でPh.D.取得。

目次

  • 第1章 なぜ「ものづくり」だけでは駄目なのか
  • 第2章 イノベーション産業の「乗数効果」
  • 第3章 給料は学歴より住所で決まる 
  • 第4章 「引き寄せ」のパワー
  • 第5章 移住と生活コスト
  • 第6章 「貧困の罠」と地域再生の条件
  • 第7章 新たなる「人的資本の世紀」

本書を読むべき人

  • 子育てをする母親・父親
  • リモートワークができるので地方に移住しようとしている人
  • Uターン・Iターンを考えている人
  • 上京して大学入学をしたい人
  • 新卒者(就職先の選び方)

本書の概要

世界最高の都市の歴史を知る学者によって書かれた「恐ろしい真実」

著者のエンリコ・モレッティは、イタリア出身の学者で、都市構造の専門家である。

イタリアは中世から世界覇権国として栄えたため、都市の変遷の重要な資料や情報を多く揃えている。そのため、都市構造学としての最先端の研究はイタリアから出ている。

そのような環境で研究者時代を過ごしてきた彼が、ドイツのボンでの研究者時代を経て、アメリカに渡った。ついに、アメリカの近代史を通して、戦後の多くの都市の新しい潮流を発見したのだ。その結論部分は、本書にもあるとおり、人間は住む場所で年収が変わる、という事実だ。

それを一般人向けに書き記したのが、本書となる。

シリコンバレー(サンフランシスコ・サンノゼを徹底リサーチ)の家庭事情を公表

本書ではいくつかのモレッティのフィールドワークが公表されるが、その中でも注目すべきは、アメリカのシリコンバレーの代表的な都市:サンノゼのケースを紹介しているところだろう。

仕事のできるできないや情報共有すべき人材の判断・信用は “土地”に影響

単に、多くその系統の人材が集まる、という話に本書は治らない。

どちらかというと“集まる”という偶発的なことよりも“集まった後”のリサーチに注目すべき記述がある。本書ではその例として、高度技術の“共有”を上げている。

欧米白人は、プライベート空間でのつながりは薄いといわれてきたが、本書を読むとそんなのは嘘で、思いっきり、ご近所付き合いの文化で仕事が成り立っているのがわかる。

それもそのはず、証拠を残さない組織を変えても支え合う、というのは土地の近いことからくるつながりに寄与することが多いからだ。これが総じて、子供の教育にも影響を与える。

アメリカ社会の意図しない“秘密裏”について書かれた本

そういう点で、上司や会社の同僚との飲み会などを嫌がるアメリカ人だが、異種的なパーティーをしたがるのは非常に道理にあっている。アメリカ人はそういう付き合いを、意図しないふうに行うが、実際そうだとしても、そこに踏み込んで何かを探すこのような書籍の役割は非常に大きい。

学術書に近いせいか、読みにくさが若干あるが、ここに書かれていることは重要だ。

Q:なぜこのような本が書かれたのか?

A:まず第一に、著者が外国人であるため、このようなアメリカ人の恥的かつ重要な情報を、海外には発信するのに躊躇しないポジションだったのが大きいと思う。

加えて、アメリカという国が“住む場所によって貧富の差があるという”というのを、否定する人々が多いのも挙げられるだろう。基本的に、共和党の政治家はこの考えを否定してきた。

これを事実をベースに覆したところに、本書のベストセラーたる所以がある。

都市の状況としては、日本もアメリカとほとんど同じ状況だと言っていい。

Q:読むとどのようなメリットがあるのか?

A:一番には、子育てにとって住む場所が最重要だということがわかる。

そのこともあり、私は、本書を読むべき人に、子育て世代と書いている。

ただし、転職希望者や新卒就職者にもかなりの割合でメリットがある。

日本はやがてジョブ型雇用(参照:ジョブ型雇用とは?特徴を詳しく解説)という、フリーランサーを予備軍を社内に抱え込んで、企業が発展を目指すスタイルに変わっていく。

今までのような、転勤を重ねてオールラウンダーを育成するような、年功序列型の労働資源はもう存立ち行かなくなる。

その点で、いずれアメリカと同じ就業システムになる、もしくはアメリカ人よりもさらに排他的な日本人の行動様式を考えると、本書の指摘は厳しさを持って受け止める必要があると言っていい。

Q:読みやすいか?

本書は、学者が書いたいものだ。写真的にはイケメンイタリア人だが、文章はかなり学者的で硬い。本を読み慣れていない人は、オーディオブックなどの、自動的にぐいぐい耳に文章を送る読書方法にしたほうがいいかもしれない。

また、知識の前提としては、1910年代から1940年代に最盛期を迎え、長期間アメリカを支えた自動車産業の中心地オハイオ・デトロイトと、コダック社の本社があり、デジタル映像革命が起きる前の1990年代まで栄華を極めたロチェスター、マイクロソフトとアマゾンの拠点として1990年代以降に栄えたシアトル、スタンフォード大学を中心に発展したシリコンバレーなどの、地名と知識は若干必要かもしれない。

Q:日本人はこの本をどう捉えるべきか?

本書を読むことで、子供の教育は確実に変わると思う。

そして、地方都市や首都圏に関しての人の動きと知恵の動きが、見えるようになる。

はたまた、海外で暮らす場合、意識しなければ地獄に堕ちかねない問題も事前に可否できるだろう。単なる「年収あおり本」だとは思ってはいけない。

今後も日本もアメリカ同様にエリアが人種差別をしていく、という構造が進む。知らない人は騙されるのだ。騙されるというよりは、勝手に転落するという言い方がふさわしいかもしれない。

資産や家族の防衛策として、読んで損はない本だと思う。

タイトルとURLをコピーしました