多くの詐欺本の起点となったが、本書は……。聖書のスタイルをパクる「元祖メルヘン引き寄せ本」『マーフィー 眠りながら奇跡を起こす』ジョセフ・マーフィー

オーディオブック

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著者紹介

ウィキペディアより引用

ジョセフ・マーフィー(Joseph Murphy, 1898 – 1981)は、米国で活動したアイルランド出身の宗教家、著述家。ニューソートのディヴァイン・サイエンス教会(キリスト教系の新興宗教のようなもの)に属し、主に牧師として活動した。

潜在意識を利用・操作することで自らや周りの人さえも成功、幸福へと導く積極思考(ポジティブシンキング)「潜在意識の法則」を提唱。関連著作は自己啓発書として広く流通している。ニューソート関係の思想家では最も愛好された人物のひとりで、積極思考がポピュラーカルチャーに広まるうえで重要な役目を果たした。元イエズス会の会員であったという。

日本には渡部昇一(上智大学教員)や島津幸一によって、産業能率大学出版部や三笠書房の出版を通して紹介された。

なお、いわゆる「マーフィーの法則」は、ジョセフ・マーフィーの著作のオマージュである。

目次

第1章 無限
第2章 黄金律
第3章 富
第4章 治癒力
第5章 愛
第6章 因果

ブログ主の勝手なまとめ

ジョセフ・マーフィー自体は、アメリカの大恐慌から戦後、アメリカの不景気期間(ベトナム戦争後期〜1970年代ハイパーインフレ期)の、米国人が非常に経済的に苦しんだ時に、積極的な活動を行った人である。

著者自身には悪意はないが、多くの詐欺本・高額セミナー・情報商材の型を作る

本書『マーフィー 眠りながら奇跡を起こす』は、基本的には「悩むことは無駄で、手を動かせ」という本である。当然、読んだ人は普通に悩む人に比べ、成功者が増える。そんなもの、本の効果というよりは、確率の問題で当たり前といえば当たり前だ。

そして彼が賢かったのは、これまでビジネス本の分野で誰もやらなかったことをしたことだ。

  • 聖書の「啓示」スタイルでビジネス本を書いた
  • 努力も罪の償いも不要で、寝るだけでいいという「楽」を貫いた
  • 落ち込んでいる人ほど、勇気づけられる「問題の後回し主義」を貫いた
  • 成功者の気質(ポジティブネス)を、先取りして本書に折り込んだ

楽をして、夢を叶えるの思想

本書を読んで私が思ったことは以下の通り。

  • 成功者は確かに本書の通りの極端なポジティブ思考をしている人が多い
  • それは逆算的ではない。極端なポジティブ思考をしてもダメな人はダメ
  • 悩むことで確かに手が止まる人が多い(多大な時間の浪費)
  • 人間の悩み予測は、的中しない。が本書はそれを若干悪用している
  • 病気は全て、ポジティブになれば治る は、現代だと犯罪(昔の書籍だから書けた)
  • 本書は不治の病の治癒を、悩みからの解放の例え話として逃げている面がある

上記は、私からすると文章記述テクニックの一つだといえる。

つまり、文学的な素養があれば、限りなくブラックのグレーゾーンの文章を書くことができて、それは罪もない一般人の読みたい衝動(救いの衝動)に、すっぽり入り込む。

そして、著者のジョセフ・マーフィーはそれを、聖職者だったがゆえにできた。

とはいえ、真実ではないとは言い切れない

ところが、厄介なのはこの本を読んで、効果があった、夢が叶ったという人間の存在である。

そういう人たちを、追跡して嘘だろ、と詰め寄ることはできないし、読者数が多ければ多いほど、本書がトリガーとなって、才能と能力が元々非常に高い人間が成功に導かれる可能性もある。

書かれている内容は、後半にいくにつれ“まともで控えめ”になっていく

さらに厄介なのは、本書の前半部と後半部に横たわる大きなギャップである。

前半部の内容

  • 嘘でも何でもいいのでとにかくメルヘンを貫き、買わせる書き方
  • とにかくどんな人間も対象で、買えば楽に絶対救われると書く
  • 最後まで読むと、人に言いたくなるような、奇妙な内容

後半部の書き方

  • 前半部の書き方の無茶振りを詫びながら、でも〜というやや卑怯な文体
  • 現実と折り合って、それでもポジティブがいいよね で幕が閉じる

ここでの巧妙な書き方をしておけば、途中で読むのやめた人以外、本書の悪口を言えない。

この『マーフィー 眠りながら奇跡を起こす』は、こういう実に巧妙な記述によって、計画と意志力によって、ベストセラーの仲間入りを果たしたというのが私の分析である。

Q:どんな人が読むべきか?

A:自分のネガティブさで徳をしたことがない人

ネガティブさがクリエイティブに結びつく日本人は実は多い

誰が読むべきかという問いは、本書に限っては非常に難しい。

なぜなら、上記でも述べたように、本書『マーフィー 眠りながら奇跡を起こす』は、前半部が非常に鼠取りのエサ的な、いわゆる詐欺本の元祖となった型を持っているからだ(だからと言って本書は詐欺本ではない)。ある程度の人生経験があると、非常にキナくさく、怒りすら感じる人がいるのが前半部であり、それがあるが故に、むやみに他人に勧めることができない。

それでも、本書があるとしたら自分のネガティブさに助けられた経験がない人間だといえる。いわゆる、根暗でドツボにハマるような、コミ障の人たちなら効果があるかもしれないのだ。

太宰治のように、日本人にはネガティブさをクリエイティブにつなげる人間が多い

ネガティブさとは、元々は人間が野生に生きていた時に、危険を察知するために誕生した思考回路であり、本来はクリエイティブなものだ。特に、日本人に関しては、神風特攻隊的なネガティブさの逆張りができる特殊な民族だと思う。

だが、全ての人がそうではなく、むしろ現代人はこの日本人特有のネガティブさに苦しめられている人が少なくないと思う。そういう人は、ぜひともこの本を読んてみてほしい。

こちらの書籍はオーディブルとオーディオブックで耳読みすることができます。

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