天才になる方法を解説。興味と熟練と持続性『やり抜く力 GRIT(グリット)』アンジェラ・ダックワース

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著者について

アマゾン・オーディブル著者ページより引用

アンジェラ・ダックワース(1970〜)

2006年にペンシルバニア大学で神経生物学の博士号を取得。その後、マッカーサー賞(天才賞・ノーベル賞の番外的なもの)を受賞。その後にマッキンゼーカンパニーに入社するも、地元高校の数学の教師になりならが書籍の執筆を行う。天才・生まれながらの才能というものの本質を研究した、本書『やり抜く力 GRIT(グリット)』は2016年に出版され、世界的な流行となる。

目次

  • 1 「やり抜く力」とは何か?なぜそれが重要なのか?
    ◯「やり抜く力」の秘密―なぜ、彼らはそこまでがんばれるのか?
    ◯「才能」では成功できない―「成功する者」と「失敗する者」を分けるもの
    ◯努力と才能の「達成の方程式」―一流の人がしている当たり前のこと
    ◯あなたには「やり抜く力」がどれだけあるか?―「情熱」と「粘り強さ」がわかるテスト
    ◯「やり抜く力」は伸ばせる―自分をつくる「遺伝子と経験のミックス」
  • 2 「やり抜く力」を内側から伸ばす
    ◯「興味」を結びつける―情熱を抱き、没頭する技術
    ◯成功する「練習」の法則―やってもムダな方法、やっただけ成果の出る方法
    ◯「目的」を見出す―鉄人は必ず「他者」を目的にする
    ◯この「希望」が背中を押す―「もう一度立ち上がれる」考え方をつくる
  • 3 「やり抜く力」を外側から伸ばす
    ◯「やり抜く力」を伸ばす効果的な方法―科学では「賢明な子育て」の答えは出ている
    ◯「課外活動」を絶対にすべし―「1年以上継続」と「進歩経験」の衝撃的な効果
    ◯まわりに「やり抜く力」を伸ばしてもらう―人が大きく変わる「もっとも確実な条件」
    ◯最後に―人生のマラソンで真に成功する

“生まれながらの天才”というものが、人工的に作れることを示した

有能なエリートが次々と脱落するのはなぜか?

本書は、最初から“天才”が人工的に作れることを証明する本であったのではない。

全米で最も厳しい新人育成プログラム「ビースト」※から、なぜ、才能のある優秀なエリートがどんどん脱落するのか、を調査してほしい、という依頼から派生した本だからだ。

※全米の運動能力に優れ、成績も優秀な高校生14,000人以上の中から選び抜かれた1400人ほどが入学する陸軍士官学校(ウエストポイント)の基礎訓練プログラムのこと

その『ビースト』落第者への研究から、本書はさまざまな研究結果を導き出した。細かなもので言うと、持続性だったり、努力と興味と楽しさの関係だったり。

それらを総じて、『やり抜く力』というイシューに集約させた。だが、これはあくまで本を売るための工夫で、『やり抜く力』が本書のメインテーマではないのだ。

「辞めないこと」&「意識的な鍛錬」が、天才の正体

そもそも本書のタイトル『やり抜く力 GRIT(グリット)』と、本書の内容はそのビースト(天才・エリート育成プログラム)から脱落しない力、という意味からスタートしている。

天才性を証明するには、無意識か意識的かは別として、その才能に加えた長期間の訓練・鍛錬が必要だという前提に立っている。ただ、才能と言ってもバスケットボールの身長のような絶望的な素質以外は、全て鍛錬に負けると断じている。そこにあるのが『やり抜く力 GRIT(グリット)』だという。

その GRIT(グリット)の正体は以下の通り

  • 辞めない粘り強さ(ある意味の“どんくささ”“批判に対する鈍感さ”“事前知識のなさ”
  • 訓練をアレンジする能力(本書では“意識的な鍛錬”と語られる)

それに加えて、 GRIT(グリット)の形成を阻害するのは以下の通りだという

  • 才能(低いところから始まることができない)
  • 私は人より優れているという自意識(撃たれ弱さ)
  • 天才に簡単になれないという思い込み(天才を言い訳に使う)

下手で負けていても“楽しい”ということ

GRIT(グリット)具体的な例として、非常にわかりやすいものが本文中に登場する。それは以下の通りの進行で、かなりイレギュラーな道筋である。というか、このエピソードから読者は、『やり抜く力 GRIT(グリット)』というものが、往々にして“裏道”につながることを理解する。

カーネギーメロン大学の心理学部を最優秀の成績で卒業し、心理学者になったスコットの例

  1. ある日、心理学者になりたいと思う
  2. 勉強ができないことを自覚する
  3. カーネギーメロン大学の心理学部が世界最高峰だと知る
  4. 周囲の親、教員に入学は無理だと諭される
  5. 努力の結果、当落ギリギリ成績(SAT)まで上げてくる
  6. カーネギーメロン大学の心理学部不合格
  7. それでもどうにかして入学できないか考えつづける
  8. カーネギーメロン大学の音楽学部は倍率が低く、SATが無関係なのを知る
  9. カーネギーメロン大学の音楽学部に入学
  10. 音楽学部の心理学講義を受講
  11. そこでの知識、コネを利用して音楽学部から心理学部に転部
  12. カーネギーメロン大学の心理学部を最優秀の成績で卒業

この時系列を見るとわかるが、現在心理学者として著名な地位を確立したスコットは、敗北を裏道を通りながら、正面ではなく、斜めの角度から実に巧妙にゴールに到達している。これが『やり抜く力 GRIT(グリット)』の持つ、継続性による効果だと本書は語る。

これは、考え続ける、というアクションによって、倍率の少ない成功方法を見つけ出すというふうに考えることもできるが、心理学者として成功している自分をイメージし、考えることが楽しい、というGRIT(グリット)の本質だと考えるのが、本書を読む限り実に自然だと感じる。

つまり、結果的に裏道になる、というケースが多いのが『やり抜く力 GRIT』なのだ。

GRIT(グリット)エリートは、スポ根漫画の下剋上的な主人公である

本書を読んでいて、真のエリート教育は何かという考えた時、私は少年ジャンプのスポ根もののマンガ(例えば『山下たろーくん』とか『イレブン』『ピンポン』(松本大洋))のいわゆる、下克上スタイルのマンガを思い出した。

意図的な厳しい練習をフロー(高揚感)を感じながら、エスカレートさせる

例えば『山下たろーくん』は、弱小野球部の身長も小さく脚も遅い、主人公がさまざまな秘策を通じて、甲子園に出場するというものだが、この主人公のみんなにいじめられながらも野球を辞めないスタンスがいわゆるGRIT(グリット)であるということがわかる。

実際、この『山下たろーくん』以外にも『イレブン』、『ピンポン』などのが自分達の弱点を強化する練習を本書でいう意図的な激しい訓練でフロー(高揚感)を感じながら楽しみながら克服して、いわゆる天才を打倒するというスタイルをとっている。

このGRIT(グリット)という方程式は、アメリカで文系理論のノーベル賞とも言われるマッカーサー賞(天才賞)を受賞している。かなりバックボーンが集解している理論だ。

さらに読んでみると、下克上型スポ根に慣れ親しんできた日本人に実に馴染みが深い。

Q:どんな人が読むべきか?

A:内容的には、実は『子育て・教育本』としての側面が強い。

どうしてもベストセラーとして部数を稼ぐために、日本ではこの手の書籍がビジネス本として出版されることが多いが、特に読むべきは、子供が5歳以下でまだ初等教育の入り口にいる親が最適だろう。

ただ、大人になって挫折感を感じながら暮らしている人に向けても書かれている。自分で自分を教育するようなイメージを持ちたい人にも優しい本だと思う。

特に、由緒正しい毒親(子供に良心で悪影響を与え続けてきた)に育てられた人にも有効だと思う。

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