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著者紹介

ユヴァル・ノア・ハラリ(1976年〜)
イスラエルの歴史学者。ヘブライ大学歴史学部の終身雇用教授。世界的ベストセラー『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』、『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』の著者。著書では自由意志、意識、知能について検証している。離婚歴があり、ゲイを公言している。
目次
- いま何が起こっているのか――?
- すべての現代人必読の21章
- 1 幻滅――先送りにされた「歴史の終わり」
- 2 雇用――あなたが大人になったときには、仕事がないかもしれない
- 3 自由――ビッグデータがあなたを見守っている
- 4 平等――データを制する者が未来を制する
- 5 コミュニティ――人間には身体がある
- 6 文明――世界にはたった一つの文明しかない
- 7 ナショナリズム――グローバルな問題はグローバルな答えを必要とする
- 8 宗教――今や神は国家に仕える
- 9 移民――文化にも良し悪しがあるかもしれない
- 10 テロ――パニックを起こすな
- 11 戦争――人間の愚かさをけっして過小評価してはならない
- 12 謙虚さ――あなたは世界の中心ではない
- 13 神――神の名をみだりに唱えてはならない
- 14 世俗主義――自らの陰の面を認めよ
- 15 無知――あなたは自分で思っているほど多くを知らない
- 16 正義――私たちの正義感は時代後れかもしれない
- 17 ポスト・トゥルース――いつまでも消えないフェイクニュースもある
- 18 SF――未来は映画で目にするものとは違う
- 19 教育――変化だけが唯一不変
- 20 意味――人生は物語ではない
- 21 瞑想――ひたすら観察せよ
概要
本書は、21のレッスンとは題しているものの、それは予言に等しい。
つまり、本書は21の世界を揺るがす重要な要素に対して、現時点で著者が持つ知識や経験をベースに行った未来予言書であり、従来の過去を記述した書籍とは全くおもむきが違う。
『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』などの世界的なベストセラーを発刊後、ハラリは、世界中の有力者などに会う機会に恵まれ、その結果、本書(予言書)を書きたいと思うようになったという。
世界的な学者が、円熟期に残せる業績について
多くの知識人が、その業績のピークに近づくと、預言者として振る舞いを意識する。それは古くはソクラテスやカントであり、近代では『1984』を書いたジョージ・オーウェルなどがいる。
だが、大物知識人の中には予言を外して、消えてしまう人たちも多い。特に、ノーベル経済学賞を受賞した米国人学者が目立つ。日本にも副島隆彦などがそれにあたる。
おそらく、ハラリ氏はこのような予言をするリスクを知らないわけではないだろう。
彼は、歴史の始まりとして扱われるバビロン地区、イスラエルの出身であり、ヘブライ語がわかる知識人である。特に宗教や神に関して、強い言動をしてもいいポジションだといえる。それゆえ、彼は、本書で注意深く、世界中の全ての神や宗教の存在やメリットを否定している。
ハラリ氏の予言は全て、宗教の否定につながる
なぜ、彼が神や宗教を否定するのか?
それは、膨大な情報を集積・分析可能なクラウド・AI技術が誕生してしまったからに他ならない。PCやデータは天変地異は起こせないが、それを超える能力を持つに至った。既に、人間はPCの代わりに慣れない。司令系統としてのAI・クラウド技術は、逆に神になる現実味を出している。
そんな分析から彼の21の自己への厳しい問いかけが始まる。
Q:どのような人が読むべきか?
A:20年以上生きる可能性がある人。
ハラリ氏の予言は、全部は当たらないだろう。
しかし、AIとクラウドが宗教と神を排除するかもしれないという思想は、すぐではなくとも、おそらく10年ほどで具体化してくる可能性が高い。
例えば、人事システムに膨大な資料を読み込んだAIが投入されたとしよう。
AIがNOといった採用結果に、果たして抵抗できる人事担当者はいるだろうか?
「私はどうして不採用になったんですか?」
「当社のAIが、6000万人のデータを集計して判断しました」
「具体的な理由を教えてください」
「すいません、AIがエビデンスを分析して、としかお答えできません」
「なぜですか?」
「私(人間)には6000万人分もデータを読み込むことができないから」
つまり人間は、AIが導き出した答えを、チェックする能力が、ほぼないのだ。
上記のように、ハラリ氏の語ることには、とっぴなものがほとんどない。
むしろ地についた地味な思考ばかりだ。
つまり、多くのものが、自然にことが運べばそうなる。という類だ。
Q:読むことのメリットとデメリット
A:あくまで本書はヨーロッパ主義的な視点で描かれている。
つまり、世界の始まりはヨーロッパとアフリカ近辺であるという考えだ。所々、それでは足りないと思ったのか、日本や中国、インドの事例が補完的にできてくる。が、基本的には、白人社会がパワーを持ち続ける、という前提がずっとある。
ハラリ氏のような学者は、ヨーロッパとアメリカ、ロシアに精通していてもおかしくない。しかし、アジアを過剰な神秘地域として、変に判断しているところがある。それに、日本人はイスラエル人ほど、実は北朝鮮や中国共産党を謎で恐ろしい集団だとは思っていない。
それは身近に中国人や朝鮮系の人がいるし、歴史的にもほとんどの日本人がそれらあとの関わり合いで社会を形成するということをずっと続けているからだろう。
もしかすると、アジア圏の知識人が未来予測をするとき、ハラリ氏のような人間のアラを見つけることができるかもしれない。だが、本書を素直に読んでしまうとそこに至らない可能性がある。
Q:著者はなぜこのような本を書いたのか?
A:やはり知識人は、未来予測をすべきという責任があるからだろう。
ヨーロッパの知識人は、日本人やアジア人よりもこの思想が強い。
アジア圏の知識人は、未来は予想できないという感覚の方が強い。外れたらみっともないし、そもそも予言する気が起きないのかもしれない。でも、リスクはあるが、こういう信用を失いかねない予言に挑んでくれる知識人の書籍の方が、買って読んで良かった感がある。
いずれにしても、この予言書は、今後の数年間で当たり外れが大体わかる作りである。
Q:本書の最大の魅力は?
A:イスラエルという特殊地域の学者の円熟期にあたる時期の視点が読めることだと思う。イスラエルの知識人は、かなり有名にならないと日本では書籍が刊行されない。和訳にもコストがかかる。
現代人で彼ほど、戦争や経済活動に関わる歴史を知る知識人はいないと思う。
加えて、日本にいるだけどわからない知識も、本書には豊富に書かれている。文章も上手いし、学術書に近いのにエンタメ感がある(いつも笑わせてくれる)。
Q:なぜ著者に興味を持ったのか?
A:最初は興味はなかった。
売れすぎたベストセラーは、アクセスが集まらないのでブログを書く意味がない。しかし、彼の言論が半ば常識化しつつあるのでしょうがなく手に取った。
こういうのはナオミ・クラインの『ショックド・クトリン』以来だと思う。

『ショック・ドクトリン』は、本としてのレベルは低かった。しかも、ナオミ・クラインが悪いのか翻訳者が悪いのかわからないが、ものすごく読みにくい本だった。
だが、そこに書かれた理論が、現実の世界で多く起きており無視できなかった。今でも『ショック・ドクトリン』に書かれた理論が、選挙や税金率、ワクチン関連の報道などで使われている。
ハラリ氏の書籍もこのレベルに入っている。
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