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著者について

アダム・グラント(1981〜)
アメリカの心理学者である。現在、ペンシルベニア大学ウォートンスクールの組織心理学を専門とする教授を務める。 彼は28歳でテニュアを取得し、ウォートンスクールで最年少のテニュア教授となった。
目次
- 1 あなたは、まだ「ギブ&テイク」で人生を決めているのか
―いま「与える人」こそ、幸せな成功者となる - 2 「名刺ファイル」と「フェイスブック」を見直せ
―「与える人」の才能(1)「ゆるいつながり」という人脈づくり - 3 チームの総力を活かせる人
―「与える人」の才能(2)利益の「パイ」を大きく増やす働き方 - 4 荒野で“ダイヤモンド”を見つける法
―「与える人」の才能(3)可能性を掘り出し、精鋭たちを育てる - 5 「パワーレス」の時代がはじまった
―「与える人」の才能(4)「強いリーダーシップ」より「影響力」 - 6 「与える人」が気をつけなければならないこと
―「成功するギバー」の、したたかな行動戦略 - 7 気づかいが報われる人、人に利用されるだけの人
―「いい人」だけでは絶対に成功できない - 8 人を動かし、夢をかなえる「ギブの輪」
―未来を変える「因果応報」のルール - 9 「成功への道」を切り拓く人たち
―あとに続くのは誰だ
ブログ主による勝手な解釈
人間を3つのタイプに分類
著者は、人間を欲望をベースに以下の3つのタイプに分類した。
- テイカー(自分の利益を優先させる人)
- マッチャー(損得のバランスを考える人)
- ギバー(惜しみなく与える人)
その上で、彼らの年収や仕事などの人生の全般をリサーチしている。
年収が最も高いのは「ギバー」だが、年収が最も低いのも「ギバー」
本書はビジネス本であり、その全てが成功やお金のために読むといって差し支えない。そういった文脈の中で、著者はまず「ギバー」と「テイカー」に対してこう語る。
収入が最も高いのはギバーだが、最も低く不幸な人生を歩むのもギバーである。
テイカーは、確かに嫌われ者だが、不幸になる確率も貧乏になる確率も低い
“お人好し”にならない方法、“擬似的ギバー”を生み出す方法
本書のテーマは、抽出してみると以下の通りになる。
- ギバーは、マッチャーに変身することができる
- テイカーは、擬似ギバーに自分を作る変えることが出来る
- マッチャーは、テイカー見つけると痛めつける傾向がある
本書には、著者がアメリカの実業界や歴史などから拾ってきたエピソードを持ってして、この3つのタイプの人間のわかりやすい例を出していく。
読む限り、この3つの人間タイプは決してわかりやすいものではなく、複雑で、状況によって様々ケースがあり、その結末もとても多彩で一様なイメージを抱けない。
だが、それでもお人好しとしてのギバーは地獄に落ちる。
そして、エゴ剥き出しのテイカーも地獄に落ちる。
とはいえ、最も注意すべきは、隠れテイカーであったり、自分自身の不幸に気がつかないギバーである、というのが、本書の中盤までの大まかな結論だといえる。
そして終盤にかけ、著者はこの3つのタイプはそもそも固定的なものでは無いとして、その変容状況と変容における諸条件を、少しづつ開示していく。ここからが本書が役に立つ部分だ。
テイカーが“ギバー”に変身する条件とは
かつてアメリカ最大の大企業だったエンロンの創業者であるケネス・リー・レイは、代表的なテイカーとしてその生い立ちから私生活までを詳細に描かれる。


ケネス・レイの例から、著者は「テイカーは、注目を浴びる場所ではギバーになる」ことを暴き立てる。その傾向として、エンロンの統合報告書の写真が提示される。
例えば、テイカーの学生にボランティア活動をさせようとすると、あなたがすべきアドバイスは次の通りになると言う。
ボランティアは偽善でヒマだ。だが、有益でもある。なぜならその経歴は、君の就職を助けるし、ボランティア活動に熱心者が多い富裕層の人脈も、実に簡単にできてしまうからだ。
裕福だが、世間から恨みをかって退場する傾向にあるテイカーの要点を実にわかりやすく書いている。だが、本書は実は「ギバー」に書かれた本である。著者はギバーに、このテイカーの特徴を知って、その上でうまく操ったり、連んで欲しいと願っているのだ。
そして、これが私個人的にはメインテーマだと思うが「テイカーにギバーのふりをする」ことを書いている。テイカーの特徴を知らないギバーよりも、ギバーのふりができることをうまく意識できないテイカーの方が断然に多く(しかもエンロンのケネスのように大物でも知らない)その点で考えると本書の最大の読むメリットは、テイカーではないかと感じる。
ギバーとして、お人好し扱いされない方法が後半に書かれている
ここではもうこれ以上ネタバレをすることはできない。
だが、最後に言っておくと、本書の最終章には“ギバーがお人好しにならないテクニック”が掲載されており、また同時に“ギバーにしか行使できない最大の権力”についても書かれている。両学長がYouTubeで宣伝して有名になった本だが、彼が推奨しているところが実に興味深い本だともいえる。
Q:どんな人が読むべき本か?
A:実はテイカーが読む本である。だから、両学長(ギバー的テイカー)がオススメしているのだろう。
私の感覚として、ギバーは、普通に生きたら絶対成功しない。そもそもテイカーしか成功をしたいとずっと願い続けたりはしないだろう。
アメリカの自己主張が強い教育環境は、ギバーよりもテイカーを育てることに特化していることは、紛れもない真実だ。そしてこの手の人間はプチリッチに非常に多いと思う。
だが、その人として優秀なテイカーを取りまとめている胴元は、悪賢いギバーなのだ。
私は、テイカーが失敗を減らしたり、自分の高次元の能力を他人に利用される前に、本書を読むべきだと思う。一見、ギバーがギバーを助けるために書いたように思える本書だが、それは完全に違うと思う。
この本はそのようなメルヘンでハートウォーミングな本では無い。
なぜなら、著者が最年少でテニュアを獲得としているところからも伺える。
ここでは詳しく書かないが、大学の教員というのは名誉に最も近い。ましてやペンシルバニア大学のウォートン校となれば、ただ天才であるだけの人間がなれるはずがない。
ギバーが読む時は、気を付けて読む
それゆえに最後に付け加えたい。
もし自分が紛れもないギバーで、むしろお人好し度が高いと感じている人が本書を手に取る場合、厳密にきつい意識でガリッと読み込むことをお勧めする。
本書は、きっとあなたをいい気分にさせる。
だが、それで終わってしまうと、むしろ逆効果なのだ。
出来るだけでいいので、注意して読んでみて欲しい。