実は、多くの親が叱り方を間違えているから売れる本。詳しく解説『モンテッソーリ教育が教えてくれた「信じる」子育て』モンテッソーリ教師あきえ

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著者について

モンテッソーリ教師あきえ(年齢非公表・おそらく1980年生まれぐらいだろう)

国際モンテッソーリ教師ディプロマ(AMI)・保育士/幼稚園教諭「子どもが尊重される社会」を目指して、モンテッソーリ教育に沿った子どもや子育てについて発信。

国際モンテッソーリ教師ディプロマ(AMI)について調べて「わかる教育産業のちょっとした闇」

東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンターのHPによると、国際モンテッソーリ協会(AMI=Association Montessori International)から認可された、日本で最初の国際トレーニングセンターである同組織から発行される資格。同組織は、1975年10月19日に開所以来これまで2000名以上の国際レベルのモンテッソーリ教師の養成にあたっている。

その中で、国際モンテッソーリ協会公認プログラムを受講して、全課程を修了し筆記試験と国際試験官による実技試験に合格した者には、AMI公認の国際ディプロマ(3~6歳)が授与される。

ちなみに、モンテッソーリ関連団体を探してみると少し調べただけで3団体あった。

  • 国際モンテッソーリ協会
  • 日本モンテッソーリ教育綜合研究所
  • 日本モンテッソーリ協会

一つのトピックで複数の団体がバッティングしている状況が、日本の初等教育に多くみられるが、これは以前も書いた通り、教育産業が「儲かる産業」でありつつ、過当競争をおこなっているからである。

関連記事:学歴主義が前提だが、子育ての基本を学べる。網羅性が高く、使い勝手に優れた本『世界標準の子育て』船津徹

以下、国際モンテッソーリ教師ディプロマ(AMI)についてまとめる

  • 私設資格(国際とか公認とかつくからややこしい)
  • 取得するための費用は100万円程度(三団体で最も高い)
  • 試験は難しくない可能性が高い

ちなみに、モンテッソーリ資格を取得するまでにかかる費用は

国際モンテッソーリ協会(100万円程度)
日本モンテッソーリ協会(80万円程度)
日本モンテッソーリ教育総合研究所(50万円程度)

私自身は、実はこのような資格ビシネスで高額の受講料を取るのは悪いと思っていない。

なぜなら、そこから生まれる利益で団体としてのコンサルタント機能を強化したり、メソッドとして廃れないようにするために広告費や研修費を積み立てることができるからだ。

私はむしろ、この経済的な組織づくりが「モンテッソーリ教育の強み」だと思っている。

以上のことを踏まえて、この本を読み解いていきたいと思う。

目次

  • 第1章 0-6歳の子育てに「信じる」ことが大切な理由
  • 第2章 イライラ&焦る! 育児でよくある悩みとその対応
  • 第3章 日常生活の「できる」が増える親のかかわり方
  • 第4章 人との関係や言葉遣いで気になること
  • 第5章 その子の「育ちを助ける」子育てを

概要(出版社の文章の要約)

子どもに成長してほしい思いから、「はやくやりなさい」と叱ったり、あれこれ手出し口出しをすることはありませんか?

「子どもは大人が育てているもの」と思われがちですが、実は子どもには「自ら育つ力」があります。
大人はその「自ら育つ力」を信じ、子どもが自分で育っていこうとするのをサポートすることが大切なのです。
そのヒントがモンテッソーリ教育にある――。

ブログ主の勝手なまとめ

本書の秘密を分析

モンテッソーリ教育の親サイドへの入門書として、日本でかなり売れている書籍

しかし、本書に書かれているモンテッソーリ教育のメソッドとは以下の二つのみだ。

  • 縦割り保育(年齢別で分けない、年長者から教師・反面教師的なイニシエーションを受ける)
  • 親による放任主義(子供の自主性を尊重し、極限までフォローしない)

実際、モンテッソーリ教育の主たるテーマは確かにこの二つなのだろう。

では、本書には他にどのようなことが書かれているのか。

“教育に失敗してしまった”と嘆く、親たちに向けたリスタートの意味でのモンテッソーリ

本書の前半30%くらいまでが、モンテソーリの手法を詳しく述べているのに対し、後半の60%以上は、親たち(特にママ)の感情面での共有面、まるで宗教の懺悔のような“失敗してもいんですよ” “叩いても自分(親)を許してあげましょう” “叱ってもいいんですよ” という言葉の乱打が続く。

これは、日本の家庭内の初等教育が実は、かなりの割合でうまくいっていない証拠だと言える。

つまりこれをもっと言うと、世間で思っている以上に、しかも尋常じゃないレベルで実は「日本は叱り方を間違えている」という状況を示している。

本書は、その日本の教育現場(しかも見えにくい家庭内での)の病みを知る著者によって書かれた可能性が高い。

自分は悪いことをしているのかもしれない。でも誰にも相談できない

本書をレビューするにあたって、いろいろ調べてみた。何かザワザワするものがあったからだ。

これは私の仮説だが「自分は悪いことをしているのかもしれない。でも誰にも相談できない。そんなターゲットが、本書では明確に設定されている」と、感じたのだ。

すると、それにちなんだ結果のようなものが出てきた。

アマゾンで「モンテッソーリ」を検索すると5000件以上の書籍がヒットするが、その中でも「叱り方」に関する記述がある本は、群を抜いてレビュー数がある。上記の左から3番目の『ほめ方叱り方』という本は他の本よりレビュー数が一桁多い。

ちなみに同書籍も高評価だ。Kindleでは読み放題として読める。

本書が売れていることで、私が感じた日本の初等教育の「教える闇」

私にも小さな子供がいて、その教育の難しさと相反するSDGs的な世間の風潮にはいろいろ思うところがある。日本人にとって今は、さまざまな子育てに関する問題を隠してしまう時期になると思う。

このような考えに至るきっかけは、角田光代氏の小説を読んだのがある。

関連記事:子育ての未経験の文豪が書いた、意欲作だが残念な駄作。経済整合性に欠いた“絵空事”『坂の途中の家』角田光代

この小説は、赤ん坊を殺した母親の陪審員に、平和な子育てママが選ばれてしまう。という、ストーリーだが、その子育てママが実は自分の娘に対し、気づかずにひどい叱り方をしている、という展開だ。

『モンテッソーリ教育が教えてくれた「信じる」子育て』は、その角田光代の小説の主人公の超平和的だと思っていたママたちへ書かれたアンサーソング的なメッセージにしか思えなかった。

モンテッソーリ教育は、果たして誤った叱り方を減らせるのか?

そろそろ結論に行きたいと思うが、モンテッソーリ教育は果たして、親が行う子供への誤った叱り方を減らせるか?という問いだが、本書を読む限り「確実に減らせる」と感じる。

なぜなら、モンテッソーリ教育の根幹は、子供の高度な教育を促すと言うよりは、子供と対立しない、と言うところに重きを置いている教育に見えるからだ。

結果的にたまたま高度な教育へと繋がるだけで、おそらくマリア・モンテッソーリ自体はそこを目指していない可能せすらあると思う。そんなことを本書を読んで思った。

Q:どんな人が読むべきか?

A:ズバリ、子供との意思疎通が年々悪化している人。

本書には確かにモンテッソーリ教育の情報は少ない。そして、どちらかと言えば、親の精神面を支える本である。

モンテッソーリ教育自体に、困っている毒親を食い物にするところはある。だが、それでも問題が解決する可能性が、日本独自の初等教育論よりはあるような気がするし、何よりも金を払っても人が群がる教育法であるということは、効果があると言うことだ。

その入り口になり、罪悪感もある程度晴れるなら、まあいいんじゃないかなと思う。

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