目次
第1章 現場キャリア20年のプロが教える、不動産投資の現状!
(どんどん上がる!?融資のハードル;「融資が厳しくなる前に買え」は営業トーク ほか)
第2章 リアルな不動産投資「失敗事例」とその「解決策」
(「融資」の失敗―「借換え前提で物件を購入したが、借換えができなく返済苦に」Yさん;「運営管理」の失敗―「修繕費に一世帯70万円以上もかかり取得後すぐに赤字経営に」Tさん ほか)
第3章 どんな物件をどのように買えば成功するのか?
(勉強しすぎると買えなくなる!?;「利回り」は絶対ではない ほか)
第4章 累計3,000件売却したプロが教える!物件をできるだけ早く、高く売るためのオキテ
(収益物件の価格は、「利回り」が根拠となる;「土地として売る」は有効な出口か? ほか)
第5章 投資家さんインタビュー―成功大家さんの実例に学ぶ!
(物件価格が高騰する2016年に、地方高利回り物件を購入 木村葉子さん;58室中28室が空室の赤字物件を半年間で満室に! 伏見洋志さん ほか)
著者等紹介
新川義忠(1972〜)
株式会社クリスティ代表取締役、富士企画株式会社代表取締役。
福岡県生まれ。不動産投資専門会社でトップ営業マンとして実績を挙げた後、2012年に独立、富士企画(株)を設立。2016年より老舗不動産会社である株式会社クリスティの代表も兼任。サラリーマンから地主さん、プロ投資家まで様々な案件にて、現在までに約3,000件の物件売買に関わる。「投資家目線でのアドバイス」「すぐには売らないスタイル」の人柄が信頼を呼び、著名大家さんも含めファンが多い。
富士企画が出版・モリモリ塾の組み合わせをスタートした時期の本
実は私は、最初期の富士企画のセミナー(合計8回の講習・無料だったがその後1万円になった)に友人不動産投資家の紹介で参加して、不動産投資家デビューにつなげている。
良心的なセミナーで、不動産投資のリスク、儲かる仕組み、業者との繋がりであり得る危険性、銀行との話し合いの仕方まで、重要なことを習った。
新川義忠について
その四谷の不動産会社である富士企画の社長でプロサーファーでもある新川義忠氏の一番最初の書籍に当たるのが本書だ。彼はその後、不動産物件サイトの楽待や健美家などでも頻繁に登場し、有名になった。定期的に不動産投資家をつれて滝行に行くのでも有名だ。
彼は、多くのサラリーマン投資家を育て、2013〜2017年くらいのサラリーマンに融資がおりやすかった時期に、多くのサラリーマンメガ大家を生み出した(そのうち数人は詐欺をして捕まったりしているらしいが)。カボチャの馬車で、業界が揺れ始めるまでは、順風満帆だったと思う。
彼自身は、正直不動産のモデルではないかと感じるくらい正直だった
新川氏が代表を務める富士企画は、少ない従業員で少数精鋭等感じで運営されており、営業マンには休みはないが、休みは自由にとっていいし、出社時間はいつでもいいとうしきたりがある。
それは新川氏自身がプロサーファーであることが原因だ。
また、彼の営業スタイルは非常に独特で、不動産業界特有の嘘や騙しを知り尽くした、さまざまな手法、こだわりがあった。それを取引者と必ず共有してくれる。
それゆえに、富士企画を通して物件を売買した投資家は、不動産投資の闇の部分も知ることになる。私は、彼らのとのやりとりで“こんなにも不動産投資は怖いものか”と感じたことが数回ある。
2017年ごろから投資家の啓蒙を始める:モリモリ塾・出版業への進出
そんな中でかぼちゃの馬車事件やスルガスキーム事件が起き、サラリーマン不動産投資家の多くが被害を被った。具体的には、医者や弁護士、高所得サラリーマンたちに紛れて低所得サラリーマンたちが自身の借り入れを焦げ付かせ、自己破産などに陥ったのだ。
それに関しては『やってはいけない不動産投資』のレビューにも詳細を書いている。
関連記事:メガ大家の多くが廃業。その影に隠れた手口を暴露『やってはいけない不動産投資』藤田 知也 要約・概要
ちょうどそのころ、元気を失いつつあった不動産投資業界において、啓蒙活動のようなことを始めたのが、富士企画であり、いわゆるモリゼミ(元気モリモリ不動産投資家ゼミ)や本書籍である。
本書の特徴
- 「売らない」仲介業者の視点で書かれた著書
売らない不動産仲介業者とは
- 営業ツールはライン、メルマガのみ
- セミナーで投資家をほぼ無償で育てる(モリゼミ)
- セミナーで不動産投資に向いている投資家以外は、基本声をかけない
- 条件の良い案件も、取引先・顧客の状況により見送ることが多い
本書で語られる「売らない」仲介業者の仕事
- 瑕疵担保保証、値切りなどの交渉など
- 銀行融資(他人の高評価を吸収、統合し活かせる)
- 管理会社、リフォーム業者の詐欺の回避
- 悪質業者から個人投資家を守る
- 悪質業者、悪質投資家から銀行を守る(顧客を切ることもあるということ)
このような、ある意味従来の不動産投資書籍の“逆の手法”で書かれたのが、『出口から逆算する”プロ”の不動産投資術!』ということである。
さらに要点解説
不動産投資をこれからする人にもわかりやすいように、もう少し外堀を本書に書いていることから引用しながら説明しておこう。
不動産業界というのは元来、
- 物件が高額であること
- 契約までの流れが複雑
- 目に見えないトラブルが多い
という、独特な要素を抱えている。そのために、
- 強引に契約させる
- 問題を隠し通す
- トラブルが起きたら逃げる、隠れる
という、営業スタイルを生み出してしまっている。
その結果、騙し、誘い込み、縁切りという、いわゆる「売るための営業」が一般的となってしまっているのである。これに関しては、被害者は初心者不動産投資家だけではなく、銀行であったり、リフォーム業者、熟練不動産投資家など全てのステークホルダーが被害を被るケースがある。
いわゆる、人間不信が業界全体に充満している業界だということになる。
- それに対して、新川社長の企業『富士企画』では、
- 責任をもって最後まで見守る
- 事前に顧客をトラブルから守る
ことを、営業スタイルの一つの特徴としている。ただ、上記は無償で誰にでも提供されるわけでなく、
- 不動産投資家に適している人
- 不動産仲介をバカにしない人
- 不動産仲介から学ぶ人
- 銀行に迷惑をかけない人
が条件であり、ある程度まで顧客を絞り込むという特徴がある。
つまり、富士企画の顧客に誰もがいきなりなることができないのだ。
紹介客を重視する秘密営業スタイル
不動産業界というのは、当然、投資であるがゆえに、欲にまみれた業界である。そこにある種「人情」をプラスして、「どこまで仕事が快適にできるか」というのを、新川社長たちは「実験」しているところがある。
この本が書かれた時点ではこのようなスタイルは、10年ほど成功して、今の所大きな失敗はしていないと述べられている。この「人情スタイル」は、日本人に向いている営業スタイルだと感じている。
江戸時代や、戦後の警察や法律の整備がされていなかった頃は、一部のヤクザや胴元的な人間たちとこのような「人情スタイル」を取る産業が多かった。
富士企画の営業スタイルは、日本の芸能界に似ている
新川社長が行っているこの「人情スタイル」に似ている業界が芸能界ではないかと私は感じている。
特に「ジャニーズ事務所」は、本書を読めば読むほど、この営業スタイルに近い。
人気が出るまではお金が有る無しにかかわらず、「人情」で仕事を行い、発注先が経済的な成功を実現するまで、サポートし、彼らの成功とともに一緒に利益を確定する、という、スタイルである。
ちなみに、私の作品には新人の俳優を採用することが多く、上記のいわゆる『人情』で低コストで有能な若手をよくあてがってもらう。
サラリーマン投資家は本来、逆張り
富士企画は、創業以来3000人の大家を誕生させ、リーマンショックなどの物件下落時に、個人投資家を起点に逆張り的な利益拡大を行ってきた。いざという時のために、個人投資家を育て、業界全体が沈む時に一番儲けるというスタイルである。
このようなスタイルの仲介業者は、かなり少なく、その点であまり不動産投資をガシガシやる人には向いていない書籍かもしれない。が、それでもおすすめの書籍である。