著者紹介

C.ジェームズ・ジャンセン(1941〜)
大学時代に百科事典のセールスマンとしてのキャリアを開始。たちまちセールスマネージャーとなり、28歳の時には上級副社長兼最高経営責任者となる(1969年)。その後、さらに異なる業界でのリーディングカンパニー2社の社長兼最高経営責任者ともなる。
セールスマン時代に受講した自己啓発セミナー(『眠りながら成功する』ジョセフ・マーフィの系列:直系ではない)に衝撃をうけ、潜在意識に興味をもつようになる。エグゼクティブコーチング、コンサルティング、様々な企業へのアドバイザリーサービスなどを提供しているほか、ノエティック・サイエンス研究所、アスペン大学、シュガーメイド社などの取締役を務める。会社経営のかたわら、潜在意識の重要さを説くセミナーを開講。
元本著者

ジョセフ・マーフィー(1898年5月20日 – 1981年12月15日)
本書の原著として掲げられている『眠りながらに成功する』の著者。
米国で活動したアイルランド出身の宗教家、著述家。ニューソート(新興宗教)のディヴァイン・サイエンス教会に属し、主に牧師として活動した。
潜在意識を利用・操作することで自らや周りの人さえも成功、幸福へと導く積極思考(ポジティブシンキング)「潜在意識の法則」を提唱した。関連著作は自己啓発書として広く流通している。ニューソート関係の思想家では最も愛好された人物のひとりで、積極思考がポピュラーカルチャーに広まるうえで重要な役目を果たした。
日本には渡部昇一や島津幸一によって、産業能率大学出版部や三笠書房の出版を通して紹介された。なお、いわゆる「マーフィーの法則」は、ジョセフ・マーフィーの著作のパロディである。
目次
- 心の中には「宝の箱」がある
- 自分の心を上手に操る技術を学ぶ
- 「心の声」が人生の「結果」を左右しているという事実
- 自分を変える方法を学ぶ
- 潜在意識が起こす奇跡は誰でも体験できる
- まず習慣ができる。そして、習慣が人をつくる
- 意識と潜在意識の関係を徹底的に理解する
- アファーメーションで潜在意識を再プログラムする
- 望むものを手にするカギは「できるだけクリアなイメージ」
- 正しい自尊心が潜在意識の力を増幅させる〔ほか〕
概要(ブログ主によるまとめ)
ジョセフ・マーフィーのクレジット・言及がない
本書は、著者であるジェームズ・ジャンセンが何度か本文内で断っているように、ジョセフ・マーフィー『眠りながら成功する』のリライト・オマージュ作品である。しかしながら、なぜか、原著としてのジョセフ・マーフィー関連のクレジットが見当たらない。
通常、このような書籍では原著者の正式なクレジットと、あとがきなどでの著者への言及があるはずだが、何かトラブルがあったのだろうか? のっけから疑惑が深まる。
基本、スピリチャルの書籍
内容としては、いわゆる『引き寄せの法則』に近い。ナポレオン・ヒルの『悪魔を出し抜け』の引用をしたり、経緯を払っているが、明らかにキリスト教や神を信じており、全体的にスピリチュアル度が高い。私はこれに後から気がつき、ややしまったと思う。
ナポレオン・ヒルは、反宗教でアンチスピリチャルの自己啓発書の大家である。私は彼は尊敬しているので、このような書籍での引用はやや疑問を感じる。
関連記事:詐欺師か、世紀の伝道師か。ナポレオン・ヒル完全解剖解説 現代でも影響を与えつづける“金儲けの思考”とは
潜在意識を“超意識”と名づけ、本人がポジティブにかつ、前向きに考えることで、自然に問題は解決していくというスタンスを取る。
もっと具体的にいうと“意識的に”日常的なものを考え、解決していき、到底困難な問題、普通にはどう考えても実現不可能な目的は“超意識”が解決してくれる。そういう塩梅だ。
全ての失敗は“自信のなさ”と“頑張りすぎ”という、とんでもない基本概念
健康さえもイメージで改善する。らしい……。
逆にいうと、ネガティブな想像・考えが病気を生み出すというスタンスで、ある意味、ストレスの存在を示しているとも思えるが、過剰なスピリチャルの側面がある。
また“豊かになる”ためには、具体的な金銭や成功のイメージを持て、という指針を示し、ここでも宇宙の存在や非論理的なアファメーションを推進するなど、私は読んでいてかなり危機感を持った。
潜在意識というは、確かにあるが、本書でいう“潜在意識”というのは、聖書で書かれたキリストのごとく奇跡を起こしまくりすぎで、はっきり言っておかしいと思う。
Q:読むべき人はどのような人か?
A:いやー、この本は誰も読むべきではないと思う。
なぜ、アマゾンであれほど高い評価を得られているのか信じられない。それほどこの世には心が病んでいる人がいるのだろうか? 私には理解できない。
Q:褒めるところはないのか?
A:前半部分の前向きなスタンスを大事にしようとするところは、まあ、いいかもしれない。だが、アファメーションの定義もせずに、頻繁に『アファメーションすればなんでもいける』的な感じなってから、怖さしかない。
アメリカの独立の父であるリンカーンを支え、反奴隷主義のラルフ・エマーソンを仕切りに本書と紐づけようとしているが、エマーソンが果たしてこのような奇妙な“引き寄せの法則”を信じていたとは考えにくい。
しかし、書かれている内容のほとんどは日本人に馴染みのないことばかりなので、騙されてしまうのだろうか? 一体どうなっているんだろう。
Q:けなしすぎではないか?
A:確かに、不安や恐れのない人生は、体にいいし幸せに近いだろう。
だが、本書に書かれていることを信用してしまうと、第一に“現実が歪んでしまう”。
この本を読んで、本当に役に立ったという人がいたのなら、最初からとんでもない能力があったのか、それとも成功の途中でたまたま本書を読んだかどっちかだと思う。というか、正直、私はアマゾンのほとんどのレビューに関しては、出版社のサクラを疑っている。
タチが悪いのは、フロイトやエマーソン、ナポレオン・ヒルなど、偉人が頻繁に登場し「彼らはこういった」というやり方で、自説を補完するところだ。
到底信じられない記述が多い。
私が何か間違ってしまったのかと思ってしまった。
もしかすると、ジョセフ・マーフィーの親族か財団かが、本書の原典に『眠りながら成功する』の使用を許可しなかったのではないかと、私は疑ってしまう。
まあ、でも心が弱っているとこういうのもいい感じい読めてしまうのかな……。
買う場合は、本当に注意して読んで欲しい。