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著者紹介
ジェリー・ミンチントン(年齢不詳)
アメリカの自己啓発作家、エッセイスト、実業家、講演家。どうやら実名ではなく、プライバシー情報の公開は一切していない。謎の多い人物だ。
自尊心やモチベーションに関する著書を多く発表している人物であり、その著書では長年における企業経営の経験から「自尊心を高め、自らの価値を確信することが自身の成功や幸せに直結する」と説いている。また心理学や東洋哲学にも造詣が深い。作家業や公演活動などを行うかたわら、出版社アーンフォードも経営している。が、この出版社も見当たらない。
目次
- 第1部 自分を好きになる
自分に寛大になる
自分を大切にする
自分を受け入れる
自分の価値を信じる
自分の人生を生きる - 第2部 よりよい考え方を選ぶ
視点を変えてみる
自分と出会う 人と出会う
ポジティブに考える
ありのままの自分を見る
自分の手で人生を創り出す
概要
本書は、100の“自尊心を傷つけず、人生を好転させる考え”を紹介している。
しかしそれよりもまず私が興味を持ったのが、この本の謎めいたところである。
例えば、著者の情報をいくら探しても見つからないどころか、この本の初版がいつだったのかさえ分からない。日本では1999年に刊行されているのが記録として残っているが、それでも既に50万部で、大ヒットという見出しがついている。
出どころが不明で、著者も実質不明。アメリカの版元の出版社公式サイトは見つからず、一体どういう流れで世に出ているのかが一切わからない。こういう本は、実に珍しい。
自尊心の回復を目指し、無駄な文章が無いストレートな内容
本書は基本、親の教育であったり、学校の成績、会社の仕事についていけない人に向けて書かれている。つまりは、精神がボロボロになった落ちこぼれを救済する本である。
そのために、文字数は極限に減らされている。
それでもって、内容は引き締まっていて、最後の方では普通に考えたら高難易度の考え方もすんなり入るように出来上がっている。実によくできているのだ。
類似本に注意:同じ形式の劣化した内容やスピリチュアルな本がたくさんある
ただ、注意してほしいのは、100個紹介される“自尊心を守り、人生を好転させる思考”は、いずれもその根拠やストーリーが書かれていないということである。
それに、私の知る限りこの本と同じ形式で書かれた怪しい本はかなり多い。
というか、この形式(エビデンスなしで教条を羅列するスタイル)で、内容がまともなのは正直、この本が人生で初めてかもしれない。それくらい、この形式の本は、本来要注意の類なのだ。
だが、本書『うまくいっている人の考え方 完全版』は、よく練られており、内容の吟味も随分とされている感じがする。中には、世間的には非常識な考えだが、金持ちや有能な人が、隠れてこっそり実行しているタブーな思考も少なく無い。そういう機密情報のようなものあるのだ。
この著者は、いわゆる“あばき系の言論人タイプ”である可能性が高いのだ。
100項目あるが、何度も読める使い勝手の良さとリスク
目次も見たらわかるだろうが、非常にストレートな目次で、明らかに再読するために付けられている。本来、心が弱った人間にはこういう本がいいのは間違いない。
だが、本書にはリスクもある。
それは、ずっとこの本を読み続けるべきではない、ということも暗に示されているところから推測できる。本書は、あくまでも“心を病んだ人間がリスタートするための書籍”である。
そこから先の、本当の学習をするためには、もっとちゃんとしたエビデンスのある難しい本を読めるようにならなければいけない。
言い方が悪いかもしれないが、この本は一種の甘えの要素と言える極度の読みやすさを備えてしまっている。いつかは、手ばなすべき本だということを忘れずに読んでもらいたい。
だが、最初のうちはあまり警戒も心配もする必要はないが。
Q:どのような人が読むべきか?
A:概要でも述べたが、心を病んでしまった人向けの本だ。また、内容の平易さから10代の青少年にも向いているだろう。だが、30代から上はかえってこの内容だと、警戒するかもしれない。
つまり、人生のそれなりの荒波を過ごすことに慣れた人間にとっては、疑いたくなるような、あまりにも内容を短縮しすぎた本であるというはどうしても書いておかなければいけない。
それでも、編集者と著者の親身な姿勢がある、いい内容ではある。
そういう意味で、この本を他人に勧めたり、読んでいるのを公言してしまうと、もしかすると変な誤解を与える可能性があるので、そういうのは注意したほうがいい。
これは、買って本を手元におくとわかることだ。
Q:なぜこのような本が書かれて、売れているのか?
A:ビジネス系の本というのは、野望であったり、欲であったり、そういう何かを得るために作られている場合がほとんどである。
映画や音楽、文芸のように“泣ける”とか“癒し”というのは、安易だし怪しまれる。
しかしながら、読者の状態として、もちろん打ちひしがれている人も少なくないし、むしろ野望や欲を持ちながらも、同時に打ちひしがれている人というのが多いのかもしれない。
そういう層に受けた可能性がある。
そして、そういう層に向けて書かれた本自体が極端に少ないのも事実だ。
甘さのあるビジネス本は、いとも簡単にペテン師的な扱われ方をしてしまう。
本書『うまくいっている人の考え方 完全版』は、それらをひっくるめて、さらに深い内容でリスクをとりにいった、ちょっと珍しい本である。
おすすめする人は限定されるが、それでも該当する人は迷わず読んでもらいたい(というか、本当にこの類の本でこんなに売れているのはかなり珍しいと思う、その分、かなり時間をかけて売れてはいるが)。
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