初めてマトモな投資手法が日本人に伝わた記念碑書籍。失敗や損をした経験者が、反省のために読むべき本『世界一わかりやすい米国式投資の技法 』広瀬隆雄

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著者紹介

広瀬隆雄

1959年広島県生まれ
1982年慶応大学法学部政治学科卒業
1986年 三洋証券株式会社入社
1988年 S.G.ウォーバーグ証券会社(現UBS証券会社)入社
1996年 ハンブレクト&クィスト証券会社(現J.P.モルガン証券会社)入社
2003年 コンテクスチュアル・インベストメンツLLCを設立
現地米国でSGウォーバーグ(現在のUBS)、H&Q、JPモルガンと、常にADRに関連した業務に従事。2003年、投資顧問会社・コンテクスチュアル・インベストメンツLLCを設立。長年、外国株式関連業務に携わっており、特にBRICsをはじめとした新興国市場に詳しい。米国フロリダ州在住。

目次

  • 序章 1990年代のシリコンバレーとMarket Hack流投資術が編み出されるまで
  • 1 Market Hack流投資術
  • 2 ポスト団塊ジュニア世代のネストエッグ戦略
  • 3 デイトレーダーへの道
  • 4 長期投資のコツ
  • 5 2014年の投資機会

本書の基本理念「Market Hack流投資術10カ条」

1.営業キャッシュフローのよい会社を買え
2.保有銘柄の四半期決算のチェックを怠るな
3.業績・株価の動きが荒々しい銘柄と、おとなしい銘柄を上手く使い分けろ
4.分散投資を心がけろ(値動きの違う銘柄を買え)
5.投資スタイルをきちんと使い分けろ
6.長期投資と短期投資のルールを守れ
7.マクロ経済がわかれば、投資家としての洗練度が格段に上がる(ジョージ・ソロス)
8.市場のセンチメントを軽視する奴は、儲けの効率が悪い
9.安全の糊代(のりしろ)をもて
10.謙虚であれ(投資の勉強に終わりはない)

概要

広瀬隆雄氏の日本で唯一の著書が、2021年7月30日からAmazonオーディブルで読めるようになった。投資家は必読の本であると思う。ので、ぜひ読んでみて欲しい(1冊目は無料)

本書は2013年末に発行されており、後半の方の情報は時々情報が多い。しかしながら、著者のスタンスは今と変わらず、むしろ今ではわざわざ語ることがなかった、現在に至るスタンスの詳細を丁寧に解説してくれている。また、今では絶対拒否するであろう日本市場の分析もある。

証券会社・アナリスト・元トレーダーに騙され放題の日本人

ーーー決算書とは何か? なぜ、あのように難しそうな記述をするのか?
それは数字は嘘をつき放題でなんでもやれるからであるーーー

このことは、投資後進国の日本では知られていないが、アメリカでは暗黙の了解としてかなりの割合の投資家に共有されている。日本人は、世界的に見てもスーパーカモなのだ。

冒頭で広瀬氏は、日本や米国を含むほとんどの世界市場で、いかに決算書の数字が嘘ばかりであるかを示すとともに、その中でもどんな数字が “ウソ” をつきにくいかを解説していく。

決算書では実は、本当は見るべき数字は少ないのだ。
それが、『第1章の営業キャッシュフローのいい会社を買え』で語られている。
だから、決算書は逆に読めないとダメなのだ。
この冒頭で、読む気を無くす人はきっと多いだろう。

ユーチューバーやブロガーも殆ど全てがこの本以下

広瀬隆雄氏のSGウォーバーグ(名門投資顧問会社)のクライアントに、現在、CBSで全米で最も人気があり、敬意を持たれている投資家ジム・クレイマーがいた。相手はプロ中のプロで、騙せるような相手ではないのが、彼の職場だったのだろう。その経歴も語られる。

また、IPO(株式上場)を手掛けたの企業には、ジェフ・ベゾスのアマゾン、といった錚々たるものがあり、彼がIPOの全ての工程を熟知しているのも、そのせいだ。このように、本書の冒頭では、彼がいかに、日本人の私たちにとって投資を教えるのにふさわしい人物かということが語られる。

全米の多くの個人投資家が慕うジム・クレイマーも、広瀬隆雄氏の主要顧客であった。

広瀬氏のキャリアは、主にアメリカのドットコムバブルと新興国バブルがメインであり、当然、その崩壊から顧客を守らなければいけなかった。そして、その職務を果たしている。

本書にはそのために培われた彼のメソッドが余すとろなく、しかも端的かつ最小限で掲載されている。とは言っても、そのいずれもがジジくさく、地味で華がない地道なものだ。難しくもない。しかし、それらは非常に強固で、踏み固められた地面のようなしっかりとした知識である。

これと対極的なのは、派手なことばかり言うユーチューバー(高橋ダンなど)やブロガー、山崎元(予想が外れてばかりの評論家)たちだ。本書を読んでいると、広瀬隆雄氏の地道さに反して、自己正当化がばかりしている高橋ダンや山崎元に段々と腹が立つ人は少なからずいるだろう。

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株式投資、先物、FXなど全てに精通:失敗したら読む本

本書は、株式投資だけはなく、コモディティ、FX、先物、オプション、CFD、レバレッジETFなどほぼ全ての金融商品における、アメリカのトップトレーダーたちの暗黙のルールが記載されている。

特に第3章の『デイトレーダーへの道』では、現在のYouTubeライブから想像できないような、広瀬隆雄氏のテクニカルへの造詣の凄さが垣間見える。

私は株式のことしかよくわからないが、おそらく全てのジャンルで最先端(というか、アメリカら間違って伝わったテクニカル・ファンダメンタルのキチンとした知識)の内容が書かれていると思う。

と言うわけで、私にも興味深かった内容(株系:長期投資)をいくつか例に出してみよう

ホッケースティック理論(好決算でも、ダメ会社を見抜く理論)

期末に急いで売り上げを立てる会社は、業績がアイスホッケーの棒のようなチャートになる。このような業績チャートを慢性的に叩き出す企業は、粉飾や汚職を引き起こしやすい。本書ではその例を具体的に書いている(レンガを袋詰めして業者に送りつけて売り上げ計上した元一流企業)。夏休みの最後の1日で宿題の解答欄を、適当な言葉で埋めるの似ていると広瀬氏は言う。売るべき理論。

PERに騙されるな理論(急成長の良い企業を見逃す)

日本では、PER(低いものが割安と判断しがち)を重視する機関投資家やアナリストが多い。これは世界標準では間違っている。アメリカのような国全体が高成長な市場ではそれは成り立たない。

日本のようなドロドロの失われた20年相場で、過剰に評価されるようになったとのこと。それをバフェットの理論の輸入の工程で、日本人のアナリストが勘違いして定着させてしまったそうだ。米国ではPERを寿司屋の最後のアガリ(緑茶)程度に見るのが定石らしい。

このほかにも、彼流のわかりやすい言葉で、日本の通年と違うさまざまルールを本書では語ってくれている。なんとなくだが、全体を通して、経験者が自分の手法で失敗したときに立ち返ると言う側面が、本書には色濃くあるような印象を受けた。

投資家の成長工程 楽天投資家→悲観的投資家→現実投資家

アメリカでは、投資家の成長段階は、ほぼ3段階で決定していると言う。

それが、楽天投資家→悲観的投資家→現実投資家 だという。

楽天投資家は、なんでもチャンスに見えてしまい、PCで証券会社にログインしたら株を買ってしまうような初期状態だ。このときは、とことんつまらないことで損を被る。

それによって精神をズタズタにされた投資家は、悲観主義的投資家として再デビューし、タイミング、指値にこだわりすぎて多くのチャンスを見逃すようになる。

最終的には、現実投資家になる。自分のエントリーがそうそううまくいかないことを理解しながら株を購入できるようになり、損切りも平気になる。

だが、日本人にはここまでなる人がほとんどいないらしい。

日本経済からの脱出が本書の裏テーマ

本書では、トレーディング以外にも、さまざまな経済資料が提示され、株式投資にはファンダメンタル・テクニカル以外にも政治や経済成長といった、広い視点を要することが語られる。

その中でフューチャーされるのが、スーパーマクロ投資家としてのジョージ・ソロスに触れる第7章以降の内容である。ここで、暗に広瀬隆雄氏は日本の今後の展望を何度も語りかけてくる。

つまり、日本は終わっているのである。
そういえば、ジョージ・ソロスの近年の書籍もほとんどが「日本はオワコン」テーマだ。

投資を続け、経験と知識を着実につけていけば、誰もが市場が見えてくるようになる。が、その行き着く先は、日本という国が終わっているということだ。これをしつこく説いてくる。

この点は現在の彼のYouTubeライブでも一貫した考えであり、それが2012年から一貫して続いていることが本書でも把握できる。

この日本人の不幸を絡めた読後感が、なかなかシビアで愕然とするのも本書の特徴である。

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