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著者紹介
中村 淳彦(1972〜)
東京都目黒区生まれ。専修大学経済学部卒業。大学在学中の1996年より雑誌編集業務に従事し、大学卒業と同時にフリーライターとして活動する。実話誌や男性娯楽誌での執筆が多かった。2008年から高齢者デイサービスセンターを運営したが、2014年に廃業。
デビュー作『名前のない女たち』以降、女性の性風俗やアダルトビデオに関するルポが多かった。近年では、さらに女性の年齢層や職業範囲を広げて、貧困、介護、風俗、超高齢社会などをテーマにノンフィションを執筆している。
東洋経済オンラインMVP賞(2016年)東洋経済オンラインルポルタージュ賞(2017年)
最新刊は「パパ活女子」(幻冬舎新書)
目次
- 第1章 女子たちが没頭する「パパ活」とはなにか?(日常の延長としてのパパ活;(1)パパ活と援助交際の違い。パパ活は売春なのか? ほか)
- 第2章 パパ活の模範として機能する「交際クラブ」(「パパ活」という言葉をつくった交際クラブの目的;パパ活市場は女性同士の競争が激しい ほか)
- 第3章 パパ活男性をウンザリさせる「茶飯女子」(セックスを一切拒否するパパ活女子;方言で男性をかわす20歳のパパ活女子 ほか)
- 第4章 パパ活サイトの女性会員は31パーセントが「女子学生」(戦後の戦争未亡人のような女子大生;パパ活という「自助」 ほか)
- 第5章 日本社会からこぼれ落ちる「中年パパ活女子」(若い女性好きの男性の価値観がはびこるパパ活市場;中年パパ活女子たちの証言 ほか)
概要(ブログ主の勝手なまとめ)
著者にしては珍しい“企画本”
まず初めに、この本は編集者から中村 淳彦氏に依頼が来た“企画者の書籍”ということだ。
中村氏は女性の貧困問題を扱った特殊なライターで、私は信用する数少ないライターである。彼の本は、独自の取材方法で、闇に隠れたさまざまな問題を、明るさと暗さのちょうど気が滅入らないようなトンの使い分けで上手く表現されており、映画業界では好んで読まれている。簡単にいうと、海外進出を企画する時に、日本の女性文化は人気があり、その素材として彼は第一人者なのだ。
このようなキワモノの分野で、そもそも保守的な社員編集者からは、中村氏のような系統の書籍を企画することはほぼない。現在の出版社の編集会議は、そのくらいの保守さなのだ。
関連書籍:予想外の衝撃作。高学歴・好職歴の女性の転落。日本は男性社会『東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか』中村淳彦
パパ活は社会現象:圧倒的なニーズがある
この“パパ活”企画を引き受けた中村氏の元に、突然、業界最大手の「ユニバース倶楽部」から直接の連絡がある。ユニバース倶楽部は、おそらく、担当編集者からの依頼で中村氏に連絡をしてきたのが読み取れる。そして、ここでユニバース倶楽部担当者から直々にシステムや、パパ活の歴史などが語られていく。
ここまでの経緯を見ただけでも、本書は「ヒット間違いなし」の、企画当初から予算が潤沢についたであろう企画であることがわかる。そしてその予算の中に、ユニバース倶楽部の“広告料”が入っているのは、おそらく疑いない。それだけ、パパ活の書籍は圧倒的なニーズが見込めたのだ。

肉体関係が基本:ユニバース倶楽部のシステムで明らかに
システムの詳細は本書を読んでいただくとして、そのシステムの全体層からは次のことがわかる。
- 茶飲み友達だけの女性を避けるシステム
- モデル・美人を高回転させるシステム
- 慣れると、男性側がかなりリスクを避けることができるシステム
これらは、枠まで本書を読んで深読みしないとわからないが、決定的なのが本書で取材を受ける男性利用者のコメントである。彼らのコメントからは“長期利用すれば、上手くいく女性は大体把握できる”という傾向である。
しかし、その逆に女性側は“男性を評価しずらい”あるいは“年齢を重ねるごとに肉体関係リスクが高まる”システムだということである。
このことを業界最奥手の社員が書籍で堂々というのに、私は驚きを覚えた。当然、自社の広告の目的もあるだろうが、これに関しては女性にバレたらやばい、という意識を完全に欠いている。むしろ、そんなことを覚悟していて当然という意識が、ユニバース倶楽部側に存在している。
20〜30代前半以降は、逆に風俗より低価格になる現実
本書ではその後、次々と利用者女性のインタビューが続く。
その中で、さまざまなケースが語られはするものの、結局は年齢で全ての傾向が確定しており、30代前半を過ぎると、むしろ風俗やキャバクラよりも全然稼げない実態が明らかになる。
それもそのはず、人間の男の傾向は、日本だけではなく世界的にも、20代の女性を好むという、変え難い科学的な統計結果が存在しているのだ。つまり、男性は若い女性しか好まないのだ。
そのことが、橘玲氏の書籍にも研究データ付きでしっかり公表されている。
関連記事:読んで得られるメリットは自分に使える「お金」と「時間」が増えること。しかし、デメリットも大きい『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』橘 玲
誰のために書かれた本なのか? 答え=男性
この本は一体誰のために書かれたのだろうかを考えてから、締めくくりたい。
ざっと、推察するに“パパ活アプリ”の利用者の割合は、女性20:男性1だと推察できる。その根拠は以下の通りだ。これらは本書に書かれている情報である。
- パパ活は1回の肉体関係につき、約14万円のコスト
- 年収2000万円以下の男性は、長期ユーザーに離れない
- 貧困層・一般層の20代までの女性の半数以上が利用したことがある
年収2000万円以上の男性は、全男性の30人に1人の割合だ。ちなみに、年収1000万円の男性は、100人に2人弱存在している。いろいろ譲歩しても単純に100人に1.5人程度の男性しか、パパ活アプリの長期ユーザーになれない。
そして女性に関しては、20代の女性の約半数を100人中20人が20代以下その半分で、10人程度と推定し、それ以外の年代の容赦を20人(30代+40代以降)を考えると、女性サイドは30人となる。
パパ活アプリ利用者
女性:男性= 30:1.5 ≒ 20:1
ここからわかることは、男性の方が”パパ活の情報を得にくい”という事実だと言える。
近くにパパ活を話せる男友達は少ないだろうし、そもそもパパ活をやっている男性の母数がかなり小さい。地方都市に行けば、さらに少ないはずだ。
ここから考えると、本書はどう考えても「男性に向けて書かれた書籍」ということになる。
Q:金持ちおっさん以外で、どんな人が読むべきか?
A:もちろん保護者だろう。
ただし、予防したり、抑止のために読むのではなく、見逃すために読む。自分の娘は、大丈夫だろうという想像をするために読む、という少し悲しい読み方になる。
パパ活という行為の性質上、どんな性格でも状況でも、何が起こるかわからないし、最悪のことは結構頻繁に起きていることが、本書を読んでもわかる。だとしたら、今の自分が娘に対して、何ができて、何ができないのかを、せめて知っておくべきだ。
いくら怒りを感じても、娘を養う金銭がないのなら、どうやってもパパ活は防げない。このせいぜい数百円の本を読んで、むしろパパ活を防ごうという考えは、甘過ぎる。
だとしたら、次に打つてはなんなのか? そのために読むべきだと思う。
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