著者紹介
副島隆彦(そえじま たかひこ、1953〜)
福岡市生まれ。本籍・佐賀市。早稲田大学法学部卒業。
大学卒業後、銀行員(インタビューなどで英国:ロイズ系の金融機関勤務だと答えている)として英国に勤務するも3年ほどで退職し、帰国する。
その後、代々木ゼミナール講師(受験英語)、常葉学園大学教授を歴任。
専門はアメリカ政治思想と政治史。
選挙や米国政治人材に詳しく、オバマ当選(2008)、トランプ当選(2016)の予測を的中させたが、バイデン当選(2020)を外す。リーマンショックを予測した『連鎖する大暴落』、『逃がせ隠せ個人資産』、『世界権力者シリーズ』はベストセラーに。
目次
第1章 ウクライナ戦争は核戦争まで行く。だが日本は大丈夫だ論
第2章 プーチンは罠に嵌〔は〕められた
第3章 ゼレンスキーはネオナチで大悪人
第4章 人類(人間)は狂ったサルである
第5章 ウクライナの歴史
ブログ主の勝手なまとめ
ウクライナ・ロシア情勢を外していないのは、佐藤優と副島隆彦の二人だけ
グーグル様の規定によって、ロシア・ウクライナ戦争についてのブログを書くと大きく、アクセス数をコントロールされてしまう。しかも、ロシアサイドに立ったものを書くと特に。
よって、最初はこの本の書評を書くかどうか非常に迷った。だが、書くことにする。
現在、ロシア・ウクライナ戦争の報道が一息ついて、低迷しつつある。参院選挙のせいもあるが、日本人全体的に、大手メディアの報道に違和感を感じる人が増えつつあるのかもしれない。

東京大学の小泉悠や元ウズベキスタン大使の河東哲夫、防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏といった専門家たちも、当初の見込みを大きく外した。私も当初はこの三氏を、定期的に調べて動画などをみていたが、言ってることがずれてきたせいで見なくなりつつある。
むしろみるようになったのは、当初はロシア寄りで批判されていた佐藤優の動画である。元外交官の佐藤優は、ウクライナ戦争が勃発してからは、大手メディアの取材を全て断っている。その理由は、彼が何度も経験している戦時の日本の報道体制による、ということらしい。
本書で語られる副島隆彦氏の分析も、当初は気持ち悪がられたら、今となっては正確性がだいぶ担保されているものだということが、有識者の間で広がってきた。それについて、触れていく。
日本人がもっと心配していることから順に答えた本である

本書で私的に最も大事だと思われた画像を載せておく。これは、ネット上でも出回ったがSIPRI(ストックホルム国際平和研究所)が行った、核戦争シミュレーションである。
この写真と、英語圏の情報によって副島氏は、核ミサイルが日本に落とされる可能性は“あることをすればゼロ”だと言い切っている。これに関しては本書を読んでほしい。今のところ、この条件を自民党の岸田政権はなんとか維持しているが、この“あること”は、岸田文雄が変わる変わる可能性が高いのだ。
また、安倍晋三が開戦当初、盛んにまくし立てていた“核シェアリング”論争に関しても、急激に世論がしょぼんでしまった経緯についても本書で書かれている。
これに関しては、台湾有事の件や、アメリカが核シェアリングを行っていると言われているデンマークなどの欧州の最新事情を、日本の官僚が知ったというのも大きい。
この点に関しても、どうしても詳細情報はメインメディアに登場しないため、興味ある人は本書を読むのが手取りばやいかもしれない。
なぜゼレンスキーが“ネオナチ”だと言われたのか? ウクライナの優生学思考について
また、ウクライナ侵攻の当初、ロシアがゼレンスキー政権をネオナチ政権と揶揄したことが、日本でも話題となり、“なぜユダヤ人なのにゼレンスキーをネオナチと呼んだのか?”という、疑問に対しての解説がある。そこには、優秀で美しい選ばれたロシア人(スラブ系)とドイツ系(ザクセン系)の国民意識をたくみに利用したゼレンスキー政権の運営手法が関わっているとのことだ。
これらの一般的な優生学(他の民族よりも特定の民族が優っている論)を利用した政治手法であり、まさにドイツ発祥のユージニックス(優生学)を指したプーチンの的確な言葉であったことが本書で語られている。
プーチン自身は、ロシア+モンゴル系の混血であり、この容姿面での“さげずみ”がウクライナ全般であるという話だが、これはニュースではもちろん報道されない。ただ、最近公開され始めているYouTubeの動画では、たまに目にする(女性たち)ようになってきたので、納得度が高かった。


日本の有事における立場:台湾やフィンランド、スウェーデンとの比較
個人的に、今回の副島氏の戦略評論家しての最大の読みどころは、有事におけるアメリカの傘に入った国々と、日本の比較の部分だろう。
関連記事:フィンランド、スウェーデン両政府、NATOへの加盟申請を発表
副島氏によると、日本と比較すべき妥当な国として、台湾とフィンランド、スウェーデンとことが挙げられている。今回、ロシアの侵攻で有事に怯えてしまったフィンランドとスウェーデンは長らく凍結していたNATO加盟を申請。しかし、これは逆に危険性をさらに生むと副島氏は指摘した。
これからは、核ミサイルとがあるところに有事が発生する可能性が増える

再び、冒頭の写真に戻るが、この写真の本質は“核配備施設”にロシアの先制攻撃がシミュレーションされているという点だと副島氏は語った。このことが、とても重要で、むしろその重要さが関係者を驚かせたという。この画像は一旦、ウェブから全て削除されたが、その依頼をしたのはストックホルム国際平和研究所で、その後、予測アプリがアメリカの研究機関に移った後、復活したらしい。
ということは、日本のとるべき立場は意外に間違っていないということになる。
また、中国との詳細な分析は台湾を使ったものが本書には掲載されている。総じて、副島氏がこの20年近く言い続けてきたことだが、本書の分析は有事に書かれている分、その分析や証明のレベルが非常に臨場的で精度が高いと感じた。
Q:どんな人が読むべきか?
A:ロシアによるウクライナ侵攻の陰謀論ではない、冷静な分析のものを読みたい人。
本書の情報は、副島氏が主にネットから集めたものだ。
その中には、陰謀論めいた論説も数多くあったという。だが、それらの情報には読み解くべき要素がないわけではない。とはいえ、それが一般的な人にはそう簡単にわかるものでもない。
長らく自民党のブレーンを行ってきた副島氏は、40年間アメリカの政治学を専門に大学教授まで一時期勤めていた経歴もある。しかも、元々は金融マンであり、為替や株価、コモディティの動向から、世界政治の分析を裏付ける思考も持っている。
何よりも過去に、トランプ当選、オバマ当選などの政治予測の業績も上げてきており、都度、証拠付きのベストセラーを誕生している。
全てが万事正確というわけではないが、その点で、他の論者よりはだいぶ読む価値はあると思う。