日本人を外から分析した本として読めば、秀逸。『ウォールストリート流 自分を最大限運用する方法』高橋ダン

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著者紹介(本書でのバイオグラフィのまとめでもある)

高橋ダン(1985〜)

小学生低学年まで東京の江東区に在住。その後、父の仕事の影響で海外に移住し、最終的にはアメリカで少年時代を過ごす。

高校時代は成績が悪く、入試が間に合わないことを念頭に独自の試験対策を模索。推薦入学制度の歪みを利用してアイビーリーグの末端であるコーネル大学に入学を成功させる。

21歳の時に、株式投資サークル(『ウォール・ストリートクラブ』)の創設者としてのアピールポイントを利用して、モルガン・スタンレーに入社。アジア部門のセールスを担当するも、能力がないことを自覚(1年で退社)。リーマン・ショックを機にヘッジファンドに転職し、アジアを転々とした自身の生い立ちを活かせる東南アジアのコモディティ市場で裁定取引トレーダーとして従事する。
26歳の時には、メンターの独立に合わせてヘッジファンドを設立。しかしここでも才能の無さを痛感する出来事を多数経験する(1時間で7億円の損失など)。30歳で自分の持ち株を売却し、シンガポールへ移住。

その後、2019年秋に日本に帰国。2020年初頭にグローバルの金融や経済を解説するYouTubeチャンネルを開設。このチャンネルがのちに、コロナショックの『二番底論争(二番底は来ないと予想し的中)』を経て、大ブレイク。その勢いで準国産ソーシャルプラットフォーム『Post Prime』をリリース(2021年9月〜)し、現在に至る。

目次

  • 0 「逆張りの戦略」が僕の人生を切り拓いた(良い読むべき)
  • 1 「自分」こそが唯一無二の“投資商品”である(良い読むべき)
  • 2 自分を“上場”させるための「マインド」(良い読むべき)
  • 3 市場で生き残り続けるための「キャリア戦略」(良い読むべき)
  • 4 ライバルに勝ち抜くための「統計学的思考」(良い読むべき)
  • 5 「人間関係」の“複利効果”を最大化する(良い読むべき)
  • 6 「英語」で新たな市場を切り拓け
  • 7 最高のパフォーマンスを生む「時間術」
  • 8 「健康」こそ最も重要な“投資対象”である(ゴミ文章)

ブログ主の勝手なまとめ

専門外の株式・FXで予想を外しまくり「実はコモディティ専門だ」と言い出した高橋ダン

投資系ユーチューバーとしての高橋ダンは、正直クソだと思う。

政府機関などによる金融緩和や利上げが行われるときに無意味であることが世界的に常識であったテクニカル分析を行い、大事な時期に予想を外しまくって日本人の素人投資家に多大な損失を与えた。

それもそのはず、彼はコモディティの専門家であり、株式・FXの専門家ではなかったのだ。

テクニカル分析は、相場に外的要因が少ないときにのみ通用する分析手法。株式やFXなどの政府関連団体による“介入”がある分野では、その時期には絶対使ってはいけないというのは、世界の常識である。コモディティにはそれがない。

そんな初歩的なこともわからず、素性を半ば偽って、ユーチューバー活動を行なっていた。私のようなその産業の近くにいるブロガーやユーチューバーによって、正体をバラされそうになったとたん「自分はコモディティーの裁定取引の専門家でした(2021年10月頃)」と急に言い出した。

彼は決算書も読めなければ、企業分析もできない。英語ができても関係ない。

現に、彼がまともに企業分析をした動画はほとんどない。

人間性は悪くないし、日本人分析はしっかりしている

ただし、私はこの記事においては、彼の本を誉めたいと思う。

特に前半部分は、日本人の1980年代以降の行動様式・考え方を実に丹念に調べて、注意深く書いている。最初はゴーストライターが書いたのか?と思ったが、だが、このような深い内容は、実質アメリカ人で分析的に日本人になった高橋ダンにしか書けない内容だと思って納得した。

日本人が投資をしない理由=2012年までは投資をしないことが正しかった

例えば、経済評論家の山崎元やリベ大の両学長が間違っていて、高橋ダンが間違っていない考え方がある。それは、日本人は投資嫌いではなく、投資を正しい期間に避け続けた、という分析だ。

2012年のアベノミクス誕生までは、日本はデフレ・株暴落社会であり、銀行預金が一番資産を安定的に増やせた(相対価値:円高で)。この国民感情は恐ろしく優れている、と高橋は分析している。

この時期までの意識が強すぎて、今、投資を急いでしている、というのが正しい日本人像だ。

“アメリカ型の能力主義”も“日本式の年功序列に近かった”という優れた分析

また、高橋ダンの優れた分析に1980年に始まった“アメリカ型の能力主義導入の失敗”への分析があり、これに関しては、未だ誰もしたことがないような的確さで私は驚いた

超簡単に説明すると以下のようになる

アメリカ型の能力主義

  • 新人時代は下働き・人間関係づくり(低賃金)
  • 30代〜40代は出来高制で最高年俸を叩き出す(人によっては青天井状態)
  • 50代からはエグゼクティブを兼任し、効率よく労働する(官僚化)
  • しかし、50代からはリストラに会いやすく、セミリタイヤ勢も多い(低収入化)

日本の終身雇用

  • 新人時代は下働き・人間関係づくり(低賃金)
  • 30代〜40代は係長・課長制度・家族手当等で国際標準給与を緩やかに抜く(賃金急上昇)
  • 50代からは役員・子会社重役になるか、教育係として勤務(官僚化)
  • 社内人事に負けると、左遷か名ばかり役職で定年(低収入化)

高橋ダンは実はここまで細かくは解説はしていないが、実は「アメリカ型の能力主義」も「日本の終身雇用」も、賃金カーブはほぼ同一(ただし、金額はGDP・格差規模に比例)と結論づけた。

この見方は、日本になぜか根付かなかった“能力主義”の正体を見破った唯一のものだと感じた。

他の書籍と違い、本書には「高橋ダン式の日本人分析」が収録

以上が本書に書かれた内容の一部の例だが、これらは彼の他の本には全く書かれていない内容だと言っていい。彼が日本で事業を始めると決めたときに、独自に仕入れた分析だろう。

だからと言って本書は、別に「日本人を分析しました」とは書いていない。

あくまで高橋ダンが自分史を語るときに、知らず知らずに漏らした情報だ。

だが、勘のいい人はこの辺のことは一瞬でわかるだろう。

Q:どんな人が読むべきか?

A:騙されにくく、カンのいい人が読むべき。

正直、高橋ダンに騙され続けている日本人は非常に多い。

だが、高橋ダンという人間自体は別に悪人ではなく、陽気で真面目な人物だ。

しかし本物の悪人も同様に「陽気で真面目な人物」であることが世の常だ。

それでも、ある程度人生経験があって、騙されにくい人間が彼のような訳ありの人材の本を読むと、他の書籍では味わえないようなものを感じ取る、と私は予想している。

ある意味「要注意人物であるのに、開けっぴろげな大胆さで内情ダダ漏れ」なのだ。

私は、目の前に高橋ダンがいれば、いい友達にはなれると思う。だが、彼のやっていることは常に日本人にとって恐ろしいことを孕んでいるのは、それでも瞬時に感じるだろう。

とはいえ、本来、日本人はこういう「危険な友人」との付き合いが苦手ではないはずだ。

だから、多少注意深いという自覚あれば、読んでみてもいい書籍だと思う。

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