本記事はシリーズ「映画作品における国際映画祭の応募・上映・評価について」のパート2です。前回の記事をお読みで無い方は、「映画作品における国際映画祭の応募・上映・評価について(1)映画祭の権威性と選定基準」をお読みください。
本記事を読んでわかること
- 新人・無名監督は国際映画祭で戦うために必要なこと
- 映画祭へのエントリー工程(ヒエラルキー)と時間
- もし、思うようにいかなったらどうすればいいか?
- 最後に利用するのはFilmFreewayといった自己応募型プラットフォーム
新人・無名監督は国際映画祭で戦うために必要なこと
ここでは主に、国際映画祭で長編メインコンペに入る60分もしくは72分以上の作品を前提に解説しますが、短編や実験映画、アートビデオ作品にも共通することが多くあるので、よかったら読み進めてもらえればと思います。
映画を作った初期段階では、映画の評価は不明である
映画を完成すると自然と、映画祭に出品するという流れに最近ではなっています。
そこで知っておいていただきたいのは、いきなり新人が大きな国際映画祭でかかることもありますが、その影ではずっと映画祭が決まらない、ということも往々にしてあります。というか、そっちがむしろ多数派で、その比率は、1:50くらい。
つまり、映画祭で上映されるのは、50本に1本以下です。これは、実は著名でかつ権威的な映画監督でも悩んでいる問題です。それゆえ、この『映画祭でなかなか上映されない問題』は、有名無名関係なくあり、特に有名な映画監督のそのような状況は表面化しずらいのです。
よって、私は、国際映画祭にどのような流れで作品が決まっていくかをここに書いていくことで、その正体を皆さんにお伝えしたいと思います。

関連記事:国際映画祭の応募・上映・評価について(1)権威性と選定基準
映画祭へのエントリー工程(ヒエラルキー)と時間
国際映画祭にエントリーするまでのルートは4種類あります。上からエントリー確率高い順です。
- ①元々持ってるコネクション(バイヤー・ディストリビューター・映画祭関係者)
- ②コネクションのある人に依頼:有料高額(バイヤー・ディストリビューター)
- ③新人育成組織・新人育成映画祭からの推薦
- ④公募(公式サイトもしくはFilmFreewayなどのプラットフォーム)
①に関してですが、このルートが一番選ばれやすいです。
有名映画監督はこのコネクションを持っている。新人監督でも有名映画祭にねじ込める場合は、公募ではなくほぼこれです。ごくたまに監督自身や映画プロデューサーもこのコネクションを持っているケースがあります。しかしながら、新人や無名の監督はその前提はほぼないと思います。
では、①は駆け出しの人は全員望み薄かといえば違います。
倍率はかなり低いのですが、映像系の財団、支援組織による無料のものがないわけではないです。例:川喜田財団
しかしながら、財団や組織関係者ですら、近年の制作映画本数が激増したケースではバイヤーやディストリビューター経由になることが増えてきています。作品が多すぎるのです。
ただ、もし学生さんなら大学や大学院経由でその敷居は低くなる可能性も高いです。
②についてですが、費用はピンキリ(私の周りでは30万円〜50万円)です。
ちゃんとしたバイヤー・ディストリビューターに依頼すると助成金が出るケースがあります。ただし、本当に業界で正式に認められるような団体・個人は少ない。
もし、ちゃんとしたところに依頼したいのであれば自分が国際映画祭経歴を参照したい映画のエンドロールに注目してください。「海外担当」「ディストリビューション」といったクレジットで、エントリーされている人名や組織名が、それに当たります。そこに連絡してください。
③上記の二つのルートに比べて、こちらはかなり過酷です。
なぜかというと、たとえ入選しても、そのさらに上位3本くらいに選ばれないと、たとえPFFやSKIPシティ国際映画祭であっても、海外枠に推薦されることはほぼないからです。つまり、倍率が異常に高い。しかも、国内映画祭の入選は、はっきりって審査員の好みとコネクションです。それでも上手くいけば、このルートは、いきなりカンヌやベルリンへのルートにつながる可能性があります。
日本でこの新人育成部門の映画祭は、今のところ、ぴあフィルムフェスティバル、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭のみです。東京国際映画祭は、スプラッシュという育成系の部門がありますが、ここは私が見る限り、ディストリビューターとのコネクションと大学や専門学校が融資して買っていると思われる枠(選出にウラがある)で、公募の可能性は低いと思います。
国際映画祭応募は、2年ほどの長期戦になるケースが多い
次にかかる時間です。
これは一瞬で決まることもありますが、大体1〜2年半だと思っていいです。
結構時間かかります。
このため、映画は再編集や整音、字幕作成などの追加工程を利用して、製作年度を2021→2022年などに繰り上げるケースが見られます。大体の映画祭は、映画が完成してから1年以内のエントリーを好みます。ここを、経歴詐称ロンダリングするケースが実は非常に多いのです(宣伝時に『構想から10年』みたいな作品はこのロンダリングのケースも多い)。

もし、思うようにいかなったらどうすればいいか?
映画監督はえてして、この興行の前におこなれる映画祭エントリーでうまくいかないと「自分の映画は失敗したのではないのか?」と考えるようになってしまいがちです。
しかしながら、それは間違いです。
映画祭選びの初期段階でつまづいて、渋々劇場公開を行った後で、著名な映画祭にかかるということは少なくないからです。それはなぜかというと、前の記事でも述べたましたが、映画祭は実力主義ではないからです。
例えば、Googleの検索ワードの年間トレンドがあるとします。
その中で、どこかの国の暴動がトップワードとしてヒットしていれば(特にアメリカ・ヨーロッパ)、当然映画祭は「暴動」をテーマとする映画を選ぶ可能性は高まります。
また、映画祭側が上映したい作品候補のうち「女性の権利」をテーマとした最終選出作品が10本あって、SFが1作品しかなければ、SFは確定です。「女性の権利」をテーマにした作品は2本程度に絞られるだろう。どんなにレベルが高くても8本落選するのです。
映画祭のプログラムというのは、こういうデリケートなものなのです。
ではどうすればいいか?
私はここにきて、やっと『FilmFreeway』といった映画祭応募プラットフォームを利用するべきだと考えます。
頼れる味方「FilmFreeway」自己応募型プラットフォーム

数年前までは、コネクションと新人映画祭での受賞以外道はなかった
国際映画祭応募プラットフォームの登場と本格的な使用は、大体2010年くらいからだと言われています。それまでは全く国際舞台への道はありませんでした。ただ、その分、国内で劇場公開までたどり着けば次第点という、考え方がありました。←これは今でもあります。
プラットフォームので応募の注意点
ここではFilmFreewayを使用するときの注意点として以下を挙げておきます。
- 経歴にならない映画祭に気を付ける(10年未満、公式サイトに履歴なし)
- できるだけ有力な映画祭から応募する
- 予告編やプロフィールを充実させる・国内の上映は随時プロフィールに掲載する
- 有力な映画祭から入選通知が来たときのための英語人脈を確保しておく
まず、一番大事なことクソ映画祭に応募しないこと!
FilmFreewayでは、5年未満の映画祭が多数エントリーしています。それらは有無を言わず避けましょう。そんな若い映画祭からいい映画祭を選ぶのは不可能で、ほぼ全てがクソ映画祭です。
また、公式HPに上映履歴のない映画祭も要注意。実際開催されているか怪しいのです。

トップレベルの映画祭も、ダメもとで応募していこう
FilmFreewayでは、前のブログでも述べたようなフランスの国際映画製作者連盟(FIAPF)にクレジットされているような大きく権威性も高い映画祭があります。
例えば、トランシルバニア国際映画祭やナント三大陸国際映画祭、ワルシャワ国際映画祭などがあります。大きな映画祭は、意外にも資金問題が少ないせいか、エントリー料金が安いところが多いです。ぜひ、エントリーしましょう。落ちてもいいから!
予告編、プロフィール情報などを充実させていきましょう
配信サイト(YoutubeやVimeo)などに本編をアップロードしてから応募することになりますので、その準備をしつつ、予告編(英語字幕入り)や監督・スタッフプロフィールを充実させていきましょう。初めから充実している方がいいのですが、やりながらでも構わないと思います。

Google翻訳でも構わないので仮で作っておくことをお勧めする
有力な映画祭から入選通知が来たときのための英語人脈を確保しておく
もし万が一、自分がゲストでいきたい映画祭からの採用通知が来たときのために、英語ができないのであれば英語人材を用意しておくのも必須です。
FilmFreewayの映画祭は、映画祭への来場がマスト風に書かれてあってもマストではないケースが多いです。しかしながら、権威的な映画祭に入選した場合は必ずいった方がいいでしょう。その際には、英語で素材送付、宿泊、旅程確認など膨大なやりとりをすることになります。
最後に
いかがでしたでしょうか。これらのことはあまり映画・映像系の大学でもシェアされていることがないと思いますし、どうしてもビジネスとしての側面があるので値段を釣り上げるために、情報開示が求められていないという実情があります。そんなことを今回、私は開示しました汗。
みなさまのお役に立てることを祈っています。
次回は、FilmFreewayのことをもう少し掘り下げて書こうかなと思っています。
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