本書はオーディオブックの読み放題に収録されています(期間限定かも……)
著者紹介
瀧本哲史(1972〜2019)
日本のエンジェル投資家、経営コンサルタント。株式会社オトバンク取締役(オーディオブック)、全国教室ディベート連盟副理事長等を歴任した。
東京大学を卒業後、同大学の助手を経てマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、エレクトロニクス業界のコンサルタントを担当。2000年より、多額の債務を抱えていた日本交通の経営再建に取り組む。主な著書に『君に友達はいらない』『僕は君たちに武器を配りたい』(2012年ビジネス書大賞受賞)など。
目次
- 14歳のきみたちへ
- 「メイド・イン・ジャパン」から「メイド・イン・世界へ」/現在進行形の未来に備えようほか
- ガイダンス――きみたちはなぜ学ぶのか?/きみたちが学んでいるものの正体/魔法はどこから生まれるのか/世界を変えた数学者、ニュートン/哲学ではない「あたらしい真理」へ/最大のキーワード「知は力なり」/人間を惑わす4つの「思い込み」ほか
- 1限目 世界を変える旅は「違和感」からはじまる
- きみが「冒険」に出る理由/問題解決から「問題発見」の時代へ/「戦場の天使」の意外な素顔とは!?/偉大なる統計学者、ナイチンゲール/頑固な医学者、森鴎外/未知の課題には「論より証拠」で取り組む/世界をひっくり返した男の正体/コペルニクスはなぜ30年も沈黙したのか? ほか
- 2限目 冒険には「地図」が必要だ
- 自分だけの「仮説」を証明しよう/仮説の旗は「空白地帯」に立てる/ごくふつうの高校教師だった世界的化学者/あえて選んだイバラの道/空白地帯から大逆転のノーベル賞へ/中学一年生で起業を考えたビル・ゲイツ/マイクロソフトの社名に込められた想いほか
- 3限目 一行の「ルール」が世界を変える
- 柔道が世界で愛されるたったひとつの理由/22歳の女性が日本社会を変えた/第二の故郷で憲法をつくる/日本の女性を救うために/世界にも類を見ない先進的な憲法/孤児院から世界的デザイナーへほか
- 4時限目 すべての冒険には「影の主役」がいる
- 勇者は仲間と「パーティ」をつくる/星を見上げる男、伊能忠敬/日本地図をつくったほんとうの理由/仲間と共有すべき「目的」と「手段」/忠敬の遺志を継いだ弟子たち/「鉄の女」と呼ばれた女性リーダー/サッチャーを陰で支えた「もうひとりの主人公」ほか
- 5時限目 ミライは「逆風」の向こうにある
- 変革者はいつも「新人」である/世界一の小説家になった「新人」/ハリー・ポッターが生まれた魔法の列車/逆境のなかで下したふたつ決断/8歳の少女に救われたハリー・ポッター/「小さな巨人」と呼ばれた日本人女性/困難に直面したら基本原則に立ち返る/誰からも期待されなかった国連難民高等弁務官ほか
- ミライのきみたちへ
概要(ブログ主の勝手なまとめ)
本書は、『君に友達はいらない』『僕は君たちに武器を配りたい』という二つのビジネス書でベストセラー作家の仲間入りをした京都大学准教授の瀧本哲史氏が、全国の中学を回って「未来をつくる5つの法則」と銘打った講演をまとめた書籍だ。
彼自身のオリジナル書籍は、本書が実質的に最後となる。
瀧本氏は2019年に47歳の若さで、ガンによりこの世を去っている。
本書で語られるのは、ニュートン、緒方貞子、J.K.ローリング、大村智(ノーベル賞受賞者)、森鴎外(ダメな例)といった歴史的な人物である。その切り口が彼らしい。
テーマは『未来を切り開く人間を阻止する大人たちの存在』である。
要するに、これらの歴史的人物がいかに邪魔されたかを語る。どのように『未来を潰す大人たち』に向かっていったのかを研究し、子供たちにその知られざる内実を語るのである。
テーマに反して内容は明るい。文章も読みやすさを重視。
前提は日本が世界最大の人口減少国であり、ほぼオワコンになりつつあるという、凋落国としての存在をベースにしている。内容は、それでもかなり明るいものだ。
その意味で、大人向けに書かれたものではないが、大人でも落ち込んでいる時などに読む本としていいかもしれない。また、案外読み聞かせの書籍としても面白いかもしれない。
Q:どんな人が読むべきかを再確認したいが?
A:基本は中学生だとは思うが、書籍自体はビジネス書に分類される。
それによって当たり前のことながら専門的な内容となるし、対面ではないので、交互形式にも限界がある。部分で難しい内容があり、記述を中学生が独学で読み取ることは多少難しいと思う。
最適なのは、年長者でビジネスに詳しいものがテキストとして使うか、いつでもわからないことを教えられるように待機しつつ、読み聞かせるような感じもいいと思う。
単独だと、やはり最低でも高校生向けくらいの難易度かもしれない。
Q:大人として読んでいてよかったと思うところは?
A:ニュートンやコペルニクスに関するところかなと思う。
私もうっかり信じこまされていたが、例えばニュートンに関しては「万有引力」を発見したのではなく、「万有引力」を表現する数式を発見した、ということで、実は、ニュートン以前から「万有引力説」を支持する人間が多くいた。
彼の業績の中心は、その「万有引力」をどう伝えるかの重要性を担保したことである、という内容がためになった。
また、コペルニクスに関しては、地動説をすぐにおおやけに出さずに、最初は知人・友人に向けて書籍を作ったところ、その作戦などが丁寧書かれており、さすがだと思った。
コペルニクスは、ローマンカトリックが認証している「天動説」を覆す当時の犯罪と言える「地動説」がもたらす、世間の批判を心得ていたわけで、そうなると、単純に「真実」を表に出す行為が、評価されるべきではなく、どうやって「真実」を歴史に残していくのか、ということが、こういう初等教育で重要となる。
日本は、副島隆彦や小室直樹、苫米地英人などのような「ただ単に真実を表に出せばいい」という暴力的な論理性がこれまで支持されてきたが、若い世代に大事なことは、決してそんなことではない。社会に認められながら、もしくは社会を説得しながら「真実」が定着するのが、一番大事なのだ。
そういう意味で、本書でも瀧本哲史氏独特の真実カウンター主義のようなものが説かれており、これは本当に、若い世代が知っておくものだと感じる。
Q:子供が読んでためになる部分は?
A:最後に書かれたJ・K・ローリングがハリポッターを生み出すまでの経緯だろう。これはかなり子供達にわかりやすい、興味を持ってもらえると思う。そして世の中をひっくり返す方法だと思う。
J・K・ローリングは大学を出て銀行員として働きながら、本当は小説を書きたいのに何もできない自分に思い悩み、精神的に病んでしまう。結婚して出産し、ふとしたことがきっかけで頭に浮かんだ魔法少年の物語を、失業保険を受給している期間を利用して書き上げるのだった。
そこにいたる経緯や、親や親族、友人といった身近ではあるが、取り合ってくれない大人たちに対する、彼女の出世の仕方は、この世の中の本質を、とてもわかりやすく伝えている。
特に彼女の場合は、親や友人、世間からずっと「夢をあきらめろ」という間接的な指導をされてきた中での成功だというのも大きい。これはおそらく、日本の小学生、中学生、高校生はの多く、というかほぼ全ての子供たちが経験している内容だと感じる。
本書は、そういう子供たちへの福音書的な内容がしっかり書かれている。
こういう書籍は、私の知る限り他には存在していない。
稀に見る良書で、もしかすると瀧本氏のベストワンの書籍かもしれない。
本書はオーディオブックの読み放題に収録されています(期間限定かも……)