著者紹介

橘 玲
日本の男性作家。本名は非公開。
早稲田大学文学部ロシア文学科を卒業。元・宝島社の編集者で雑誌『宝島30』2代目編集長。
経済書籍での脅威のベストセラー出版率を誇る。
目次(主なものを抜粋)
- 1 中国人という体験
(ひとが多すぎる社会;幇とグワンシ;中国共産党という秘密結社) - 2 現代の錬金術
(経済成長を生んだゴールドラッシュ;鬼城と裏マネー;腐敗する「腐敗に厳しい社会」) - 3 反日と戦争責任
(中国のナショナリズム;謝罪と許し;日本と中国の「歴史問題」) - 4 民主化したいけどできない中国
(理想と愚民主義;北京コンセンサス;中国はどこに向かうのか;「超未来世界」へと向かう中国)
本書を読むべきひと
- 株や不動産などで中国投資をしている人
- 中国への転勤、移住を考えている人
- 周囲に中国人の子供が多い家庭
- 中国が覇権をアメリカら奪うと思っている人
中国の腐敗・汚職と、グワンシ
中国人を知る上で、参考になる書籍は非常に少ない。なぜなら、日本人の書いた中国に関する書籍のほとんどは”隣国としての感情”を起点としているからだ。だからと言って、学者が書いた書籍も参考にならない。なぜなら、感情に近い”ムード”を無視する傾向があるからだ。ましてや、中国に行ったことがあるから、とか、中国人の友人知人が多いというのは、もっと意味がない。
その点、橘氏の書籍はそのムードを、様々な歴史や現在起きている現象を、あらゆう方面から繋げることで表現できており、よくわかる。また、彼の場合は、中国人の観察前提で、深く懐に入り込んで、リサーチをするため、距離感の適切なレポートが多い。
橘氏は、本書では『グワンシ』と『汚職・腐敗のメカニズム』を書くことに重点を置いている。グワンシとは、日本語の「関係」のことだ。
中国人は、日本人よりはるかに「関係」に弱い。それは人口と面積が大規模すぎて「定住の概念」が全くないところから来ている。その定住の概念がない、というのが、日本人には、中国人同士、常に嘘や騙し合いをしながら、商売を競っている、というような印象を与える。
また、共産党の影響力の限界も本書では細かく記載されており。それが『汚職・腐敗のメカニズム』を、ばっちり、わかりやすく教えている。中国共産党は、人の繋がりだけでは、実は税金も正確には取れず、固定資産税など、日本にはあっても中国では、存在しない、あるいは、中国にもあるのに、実質的には機能していない税金が、多数あるのを、著者は指摘している。
日本と大きく異なる点:失敗を指摘する文化・組織がない
上記のことからわかること、それは中国には『失敗を指摘する文化や組織が実質的にない』ということである。「グワンシ」が出来上がった人間同士は、縁を切られることを嫌うため、お互いの悪いところを、指摘し合うということはない。また、共産党の目の届かないところを、正確に国民全体が知っているため、そのエリアでは、不正はやらないと損、むしろ、しないことが罪だという意識が、中国人にはあるのだ。
民主化を目指して、共産化するということ
中国政府は、ソフトパワー(文化的な影響力:映画や美術、スポートといった人気実力主義で構築されるもの)の構築と、二大政党制の選挙制度を作らなければ、中国がアメリカから覇権を奪えないということを熟知している。
そして、そのために一番の障害となっている汚職・腐敗を撤去しようとしているが、そのために、どんどんと共産主義が強まるというジレンマを抱えている。だが、共産党支配が強まっても、腐敗・汚職が減れば、確実に経済は発展しているのが今の中国である。
このような、中国の文化背景がわかれば、なぜ中国人があのような謎めいた人種に見えるのかが、大体わかると思う。どうだろう? また、同氏の話によると、こういうものをギリギリ理解できるのは、日本人や北朝鮮人など、隣接している一部の民族だけで、白人は中国人を理解できないのだという。このことは、私もよくわかった。
そして、例えば、このような前提がわかれば、中国企業の傍若な米国市場での振る舞いなどやその後の展開も把握しやすいため、私にとって、米国株の取引などでかなり有利に働いている。
橘氏がリサーチした「反日」具合
最後に、著者が実際に中国大陸でリサーチした反日教育について触れておく。
どうやら、共産党の反日教育は徹底しているらしい。中国には「知日派」はいても「親日」は絶対的にあり得ないと、しっかりと記述されている。ただ、著者の街中の商売人や知人友人、タクシードラーバーたちのリサーチなどを考えると、もはやその反日のイメージを維持することに限界が来ていることが窺える。だが、それでも共産党の懲罰が怖いため、この先もずっと「反日」の仮面を中国人が被り続けることは既定路線のようだ。
以上が、本書に書かれたことの要約・まとめである。よかったら、参考にして欲しい。
これ以外にも、使える知識が豊富なので、できればお読みいただくのおすすめする。