著者紹介

クレイトン・クリステンセン(1952年4月6日 – 2020年1月23日)
アメリカ合衆国の実業家、経営学者。初の著作である『イノベーションのジレンマ』によって破壊的イノベーションの理論を確立させたことで有名になり、企業におけるイノベーションの研究における第一人者である。彼の博士論文は、最優秀学位論文賞、ウィリアム・アバナシー賞、ニューコメン特別賞、マッキンゼー賞のすべてを受賞。母校のハーバード・ビジネス・スクール(HBS) の教授も務めた。
クリステンセンのTED動画
目次
- 謝辞
- 序章
- 第一部 優良企業が失敗する理由
第一章 なぜ優良企業が失敗するのか
-ハードディスク業界に見るその理由-
第二章 バリュー・ネットワークとイノベーションへの刺激
第三章 掘削機業界における破壊的イノベーション
第四章 登れるが、降りられない - 第二部 破壊的イノベーションへの対応
第五章 破壊的技術それを求める顧客を持つ組織に任せる
第六章 組織の規模を市場の規模に合わせる
第七章 新しい成長市場を見出す
第八章 組織のできること、できないことを評価する方法
第九章 供給される性能、市場の需要、製品のライフサイクル
第十章 破壊的イノベーションのマネジメント-事例研究-
第十一章 イノベーションのジレンマ-まとめ- - 『イノベーションのジレンマ』グループ討論の手引き
解説
訳者あとがき
本書を読むべき人
- 移り変わりの激しい業界でリスク管理をしたい人
- 経営者・技術開発者
- 新卒で入社する企業をいい条件で決めたい人
- 流行語である『破壊的イノベーション』を知りたい人
破壊的イノベーションとは何か?
私は結構驚いたのだが、グロービズ大学院サイトやビジネス系用語解説サイトで、はっきりいって全然間違っている記述がされている、もしくは、わかりにくく意味不明なことが多い。専門職の人たちでもこんな感じだから、難しいのだろうと本を読んだが、あれ?わかりやすい?と感じた。ほんとに、この本を読んだ人が、ウェブでいろいろ書いているのか疑問だ……?
ということで、ざっくしり『破壊的イノベーション』を解説すると
企業・業界がイノーベーションだと思っていやっていた研究・開発が、ある日突然、ゴミクズになってしまい、そして、場合によっては、後ろ向きな考え(古い・安いとか)が主流となったり、今までと全く違う市場が登場し、あれ〜〜れ〜、なんだったんだ今までは! となることである。
©️ PIT監督
いかがだろうか?
めちゃくちゃわかりやすくないでしょうか?
破壊的イノベーションの事例:ラジオ
本書の中では、
- 3.5インチディスクドライブ
- 油圧式掘削機
- 電気自動車
などが、メイントピックとして登場するが、私としてはラジオの例が最もわかりやすいと思う。
かつて1960年代、ラジオは高品質な音声を楽しむための真空管の精度、どんな状況でも安定的に電波をキャッチできるアンテナ精度という、真空管とアンテナの開発がメインであった。
そこに登場したのは我が日本のソニー。ソニーは、AT &Tからトランジスタの特許を買い取ると、アンテナの精度も低く、音声も悪いが超小型のトランジスタラジオを発売して大ヒットさせる。
つまり、これによって真空管とアンテナの精度はユーザーから見向きもされなくあり、軽さ・小ささ、電池の持ち、などが重視され、アメリカ産の高品質ラジオ駆逐して破滅させてしまったのだ。
つまり、既存の産業構造が破壊されるほどのパラダイムシフトが起きたわけである。
これが、日本人にとって一番、わかりやすい破壊的イノベーションの事例だと思う。
発生メカニズムは定義できない。歴史を遡る意外に手立てはない
通常のイノベーションのサイクル 一般的な技術のSカーブ

破壊的イノベーションが起きる時の状況 破壊的イノベーションのSカーブ(A・B両方)

この二つの図は、私が本書の中で一番大事だと感じた図だ。
通常のイノベーションは過去や既存ものと繋がっており、ある種の理想的な切り替わりがあって時代を進めていく。しかし、破壊的イノベーションは、今まで続いていたものがそのまま固まるか衰退する、あるいは突然、別のSカーブが登場する、というイメージだ。
本書ではこのほかにも、さまざまなケースを図で掲載している。
しかし、こういう図式はできるが、破壊的イノベーションとは何か?という定義・定説は、実はできないというのも本書で書かれている。
つまり、破壊的イノベーションは、条件・時代・市場・国民性などによって全く異なるものが生まれるので、今起きている、これから起きるであろう破壊的イノベーションを確認するためには、本書のように歴史を遡ってさまざまな事象を見て、なんとか近そうなものを探していくしかないのだ。
日本の『破壊的イノベーション』関連本の乱立ぶり
この「破壊的イノベーション」の捉え所の無さが、現在ビジネス界で起きつつある、日本的企業に向けた「破壊的イノベーション」本の乱立につながっている。しかしながら、この原点本のようなわかりやすさはそれらにはなかなか見られない。
難易度の高い本だが2回読めば正確に把握でき、3回読めば自ら運用側に回れる。本としての精度は本書が飛び抜けて高い
おそらく、グロービス大学院やビジネス用語サイトのトンチンカンな解説は、要点だけ読もうとして本を開きながら記事を書いたからだと思われる。しかし、本書はきちんと読めば頭に入りやすく、記憶にも残りやすい特徴を持っている。その点で、私はやはりオーディオブックをお勧めしたい。ただ、図が多いので、手元に書籍があるのが理想である。