瀧本哲史推薦。イーロン・マスクの最大の敵・盟友の独占市場の作り方を学ぶ:『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール 要約

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映画ジャンル

著者について

ピーター・ティール

1967年10月11日生まれ。ドイツ・フランクフルト出身。

PayPalの創業者。シリコンバレーで大きな影響力を持つ「ペイパル・マフィア」の中では、「ドン」と呼ばれている。リバタリアン。ドナルド・トランプ支持者。ビルダーバーグ会議運営委員メンバー。テスラのイーロン・マスクの能力に、最も早くから着目していた人物でもある。

初期のフェイスブックに多額の投資をした卓越した目利きのエンジェル投資家でもある。

本書を読むべき人

  • スタートアップ(企業)をしようとしている人
  • 独立するための業務分野を探すしている人
  • NASDAQやマザーズ企業などのグロース株投資をしている人
  • 独占市場を作りたいと考えている人

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ドットコムバブルの生き証人でグローステック企業のプレジデント

 ドットコムバブルというのを知っているでしょうか?

 会社名に「.com」がついているだけで上場した株価が数十倍に膨れ上がるという盲目的なバブルが1990年代後半から2000年代前半にあり、その後株価が70%近く暴落したという現象です。その時期に誕生したIT企業の中で、ペイパルという企業があり、現在もネット決済企業の最大手として君臨しています。その設立者が著者のピーター・ティールです。

なぜ、初期ペイパルメンバーであった若者たち(テスラのイーロン・マスク)が、現在のネットバブルの中心人物になれたのかが本書のテーマ。

 ピーター・ティルが企業に求める7つの質問が本書に記載されています

  • 1 エンジニアリング(段階的な改善ではなくブレークするとなる技術を開発する事)
  • 2 タイミング(そのビジネスを始めるのに今が適切なタイミングか)
  • 3 独占(大きなシェアが取れるような、『小さな市場』から始めているか)
  • 4 人材(正しいチーム作りができているか)
  • 5 販売(製品を作るだけでなくそれを届ける方法があるか)
  • 6 永続性(この先10〜20年と生き残れるポジショニングが出てきるか)
  • 7 隠れた真実(他社が気づいていない独自のチャンスを見つけているか)

 ティール曰く、これらの質問に全て解答できれば、どんなバブル崩壊が起きても、必ず世界的な成功を勝ち取れると言う。確かにこれは納得できます。

 ティールのこの質問に答えることができたのは、今のところ全米の企業でイーロン・マスクの「テスラ」だけだと言われています。この上記の質問に答えるような準備ができていれば、それは大成功するスタートアップであるし、エンジェル投資家やそれ以外の銀行などからの融資も得られる可能性が、当然高くなります。
 これが、本書に書かれている最大の要点。
 本書の中では、ティールの経験談などを通じてこれらをより詳しく解説しています。

映画の世界に置き換えてみる。1970年代にこの7つの質問に答えられたのは、恐らくスピルバーグだけだった

 私は映画監督をしているので、映画の世界でわかりやすく考えてみます。本書を読んだ後、ご自身の目指す業界でこのような置き換え作業をしてみると、本書をより一層効果的に理解できると思うので、やってみてください。

 1970年代まで、世界の映画市場を考えると先進国や日本はうまい具合に分散していて、どちらかと言えばフランスやイタリア、ドイツの市場が巨大でした。それはひとえにカンヌやヴェネチア、ベルリンの映画祭がセールスマーケットとして機能してたからです。一方、アメリカはハリウッドを軸に映像アカデミー(英国から分家)を中心に、発展はしていたものの、世界マーケット的には不十分でコンテンツもあまり売れていませんでした。
 そんな中で、アメリカではスピルバーグが登場します。
 私の中でのスピルバーグのポジションは、ジョージ・ルーカスとともにアメリカ映画の特撮・CGを推進した、というか独占していました。また、この技術独占をベースに、それまで世界的な映画流通でマストだった「映画祭評価」をスルーして、つまり「権威」をスルーして、映画をアメリカが旗艦となった人気産業にするということに貢献しています。今でもシネコンはハリウッド作品に独占されていますよね? 現代で見ても、これに成功しているのは、アメリカだけです。

1970年代の特撮・CGのように、ピーター・ティールの言う7つの質問に解答可能な分野を映画で探すのが、若手監督の私の役割

 スピルバーグは最初こそ「激突」という作品でヨーロッパの映画祭での評価を求めましたが、その後はひたすら、アメリカの映画オタクたちを相手に、映画の特撮技術の研磨とコンピューターの演算機能を応用した映画技術の開発に力を注いでいきます。そのため、80年代のスピルバーグは「権威」を失ってしまいます。だが、ピーター・ティールの7つの質問のようなものを恐らく把握していた彼にとっては、そんなことはどうでもよかった。のちに、「権威」を『シンドラーのリスト』などの社会派作品で簡単に取り戻します。

 では、私のような弱小の作家は、この本を読んでど売ればいいか?

 このピーター・ティールの言うような、また、スピルバーグがやったような『独占できる小さな市場』から始めて世界市場で勝つためのプランを計画すればいいのです。(残念ながら、今のところそのアイディアは私の中にはできていないですけど涙)

ティールの7つの質問に答えることができるのは村上隆

 私は、東京芸大時代にその芸大生と言う立場を利用して村上隆の博士論文を読んでおこうと思って、横浜から遥々上野まで何度も通ったことがあります。今回、このティールの本を読んでこのことを思い出しました。村上隆の博士論文「意味の無意味の意味」は、彼の現代美術家としてのマスタープランがマッピングを使用した論文で描かれ、今の彼のやっていることと寸分の狂いもないものです。そして、それは、紛れもなく現代美術業界の漫画系美術の独占市場形成のストーリーでした。
 やはり、成り行きで世界戦略ができることはないということです。それをティールの著作を通して、再度認識しました。これから、私もじっくりマスタープランを考えて行こうと思ういます。

オーディオブック版がオススメ。ハンズフリーで最短4時間程度で読了可能

巻末には貴重な瀧本哲史のトクショーも収録
※この本は読み放題プラン(750円)には含まれていません

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