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目次
- 第1章 親の声かけ次第で、子どもは変わる
(そのほめ言葉が、子どもの自主性を奪う?;「条件付き子育て」の怖いデメリット ほか) - 第2章 自分でできる子に育つほめ方
(安易な「ほめて伸ばす」には要注意!;3種類のほめ方、どれが正解? ほか) - 第3章 自分でできる子に育つ叱り方
(罰を与える叱り方がNGな4つの理由;褒美と罰、2つの落とし穴 ほか) - 第4章 子どもとつながる聞く習慣
(子どもがのびのび育つアクティブ・リスニング(傾聴)アクティブ・リスニング4つのポイント ほか) - 第5章 こんなとき、どうすればいい?Q&A
(年齢別に対応を変えるべき?;厳しく叱らないと言うことを聞きません。 ほか)
著者紹介
島村 華子
モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育法、児童発達学研究者。
上智大学卒業後、カナダのバンクーバーに渡りモンテッソーリ国際協会(AMI)の教員資格免許を取得。カナダのモンテッソーリ幼稚園での教員生活を経て、 オックスフォード大学にて修士号(児童発達学)、博士号(教育学)取得。現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わる。
専門分野は動機理論、実行機能、社会性と情動の学習、幼児教育の質評価、モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育法。著書『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2020年4月)は10万部のベストセラー。
ブログ主の勝手なまとめ
モンテッソーリ、レッジョ・ミリア教育法を正しく批判し、日本人の幼児教育に組み込む
本書の概要をざくっとまとめると、モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育法をベースにしながらも、それらに足りないところを補い、また、過剰なところを削った素晴らしい本だと言える。
モンテッソーリ本やレッジョ・エミリア本にも、ことの本質を見逃し、ただ単に海外の教育をありがたがっているだけの本で溢れているのに対し、本書は読み込むとこの二つの教育法に盲目的に従うことを避けている記述も何気に多かった。
これは並大抵の知識や経験ではできない書籍だと感じる。
最小限のページ数で全てを網羅し、繰り返し読めるので知識も定着しやすい
しかも、ページ数は最小限に収まっており、内容もわかりにくいところがいっさいない。
多くの課題に対して対応できるように、ほとんど一問一答形式に近い書かれ方をしているが、その一問一答の精度が高いために、それぞれがかなり応用が効く。
本書の要点:プロセス褒めを習得する
では、どんなことを書かれているのかをここでは紹介したい。
本書の要点はズバリ「プロセス褒め」にかかっている。
子育てにおいて、プロセスを省いてしまうと、たとえその子のためを思って褒めたとしても、全てが台無しになる可能性があるのだ。そして、場合によっては生涯つづく親との軋轢を作り出してしまう。
では、そのプロセスを褒めるというのはどういうことなのか、を次で語っていく。
「プロセス褒め」とは何か?
例えば、ある子供が書いた絵を誉める時に、やってはいけない褒め方がある。
それは、結末やその時に偶然あったことをワンストップで誉めてしまうことだ。
- 才能があるね(容姿や才能を誉めると責任を放棄したり、プレッシャーに弱い子供になる)
- 制限時間内にかけて偉いね(単純な行動を繰り返すようになる)
- 他の子供より上手だね(明言できないものに縋りやすくなる)
というのが、子供にとって悪影響を与える可能性が高い。
才能を誉めると、努力をしなくなるし、少しでも上手くいかなくなると簡単にやめてしまう。場合によっては評価されなかった時に「僕は才能はあるんだ」と、意固地になったり評価した他人や評価された人に対して否定的になってしまう。
また、制限時間や早いことを誉めると、そこに集中してそればかり守る子供になってしまう。
他人との差異を誉めると、あいまいなものにすがったり、他人を見下すようになることも増える。また、普通が大事な場合に気づかなくなるケースも出てくる。
では、プロセス褒めとは何かを例に出してみる。
- 描く対象を凄く研究したね
- たくさんの色をうまく使い分けてか描けたね
- 他の人とはだいぶ違う絵になったけど、描いてみてどうだった? 楽しかった?
これらが、本書で書かれているいわゆる“プロセス褒め”に該当する
答えだけ見ると、その言葉を捻り出すのに高度な技が必要に思えるが、実はそんなことはない。なぜなら、それらは子供との会話の最後で、自然と出る褒め言葉の例であるからだ。
プロセス褒めの前提は、質問の意味(苦情の内容)を聞き返すこと
では、その次に本書で語られる“プロセス褒め”のコツについて書いていく。
例えば、絵の例に戻るとするとこういうことになる。
- 親として、子供の持ってきた絵を見て、違いを探して口に出しながら会話をする
- 子供にいつもとどの辺が違うのかを聞く
- 子供に、自分がその絵に対して、興味を持っていることを伝える
- 興味を持っていることを伝えたら、子供に喋りたいだけ喋らせる
上記のリストは、著者が子供との会話の例で引き出したものを、私なりに勝手にまとめたものだが、要は興味を持って子供を見つめ、子供にも興味を持っていることを伝える、という基本がある。
そして、子供が喋り出したら、たとえ同じことを繰り返し言っても、遮らず、喋り終えるまで聴き続けるという、時間的な忍耐力を持つ必要がある、ということである。
これらの概念自体は、さまざまな本で確かに語られている。
だが、本書では“プロセス褒め”というわかりやすい旗印を立てている点に注目してもらいたい。
この“プロセス褒め”という単語としての記憶装置が、子供に有害なことをしてはいけないという親のプレッシャーも減らし、子育ての真の意味を継続的な方法で提供する優れたキーワードになっているのだ。
“プロセス褒め”以外にも読みどころが多く、内容領域は非常に広い
要点を上記のように述べてきたが、何よりも本書が優れているのは、その情報の簡素さと、的中率が高いトピックが非常に多いことだと思う。繰り返し読めて、忘れにくい文章も素晴らしい。
ぜひ手元に置いておきたい書籍だと思う。
Q:どんな人が読むべきか?
A:子育てしている人なら、限定しない内容だと思う。
それに親というのは、日々、その声の掛け方に悩んでいるものだから、頼りになる書籍を手元に置いておきたいと感じることは誰にでもあるはず。なのに、初等教育というのは、いわゆる教則本というスタンダードを作ることを、業界的にためらっている。
その点で私は、この本ならそう言った辞書的な使い方もしやすいのではないかと感じる。
私はこれまで20冊ほど初等教育本を読んでいる2児の父だが、この本以上の本はないと断言できる。
(まわしものではないですよ笑)
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