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著者紹介

クリスティー・シェン(おそらく1982〜)
中国出身でカナダへの移民の家庭に育つ。
ひどい貧困で1日44セントで過ごし、ごみの山から毎日古品を回収するなどの子供時代を経験。大学名などは非公表だが、自身で学費と卒業後の収支を計算したPODスコアによって、プログラミングを学ぶために大学に入学。
在学時にプライス・リャンと知り合い、卒業後は同棲を始めながら株式投資を開始する。二人の世帯収入が合計で2000万円となった25歳の時に、残り9年でのFIRE計画を立てる。
FIREをした2013年以降の特に2015年のシェール掘削技術の登場によるコモディティ市場の混乱で、リーマンショック以来の暴落パニックになりかけるがその後も資産を増やしながら世界中を旅する生活を送っている。
目次
- 第1章 お金のためなら血も流す
- 第2章 桃のシロップ、段ボール箱、コーラの缶
- 第3章 (まだ)自らの情熱に従うな
- 第4章 IOU=I Own you(あなたは私のものだ)
- 第5章 誰も助けにきてはくれない
- 第6章 ドーパミンについてわかったこと
- 第7章 マイホームは投資ではない
- 第8章 本物の銀行強盗
- 第9章 株式市場の暴落をいかに乗り切るか
- 第10章 私を救ってくれた魔法の数字
- 第11章 現金クッションと利回りシールド
- 第12章 お金を浮かすために旅行をする
- 第13章 バケツ・アンド・バックアップ
- 第14章 インフレ、保険、医療費:恐るるに足らず
- 第15章 子どもはどうする?
- 第16章 早期リタイアの負の側面
- 第17章 自由になるのに100万ドルは必要ない
- 第18章 我が道を行け
概要
著者は元々は中国人であり、貧困層だといえども受けている教育は、日本人と近い。ということは、お金との距離感もかなり似ているということになる。
著者のクリスティー・シェンは、当初、貧困の中であがきながらも、金銭を稼ぐことに思考を巡らすことを躊躇していた。だが、母親の度重なる経済的な地獄を見るにつけ、一人の女性として生きていくために、お金に対する思考を極度まで高めないと生きていけないことを悟った。
細かく分かれた18の目次は何を示すのか?
一般的に本書はFIRE(早期退職)の聖書的な扱いをされているが、読んでみるとイメージと大きく違う。それはなぜかというと、お金に関する全てを盛り込もうとしているからだ。
それが目次に表現されている。細かく、気難しいほどまで範囲が広い。
再現性の低いビジネス書籍が99.9%の中で、本書の再現性は極限までに高められている。
節約は学生時代に遡り、株式投資は20代の折れ安い心で語られる
本書が世界中で共感を生んでいるのは、心の弱さを隠さない著者によって、全てをあからさまに公開したものであるところが大きい。
例えば、人生で最も緊張したのは、初めてのインデックスファンドを購入するボタンを押す時だったという。こんなナイーブな投資本はなかなか無いと思う。
こういう微細な精神を描く描写が本書にはふんだんに含まれる。多くの日本人は共感できるだろう。
株の暴落は、ミリオネアになってもパニックを引き起こす
本書では2度の株価の暴落を経験する。一度目はリーマンショックだ。著者が初めて10万ドル分(1000万円相当)のETFを購入したのは2007年から2008年にかけてだ。
直後に、あのコロナショックの数倍すごかったリーマンショックがやってくる。
クリスティー・シェンは、夜も眠れず、幻覚を見たり、部屋中がストレスで抜け毛だらけになったという。ここでの描写は、どんなプロの投資家も共感させる。
だが、彼女は伴侶のブライス・リャン(共同執筆者)の冷静なアドバイスにより、現代ポートフォリオ理論を実践して、被害の少ない債権ETFを売却して、ボロボロに暴落した株のETFを買い増した。
その結果、株価がまだ中途半端な回復しかしていない1年後の2009年にプラスに転じ、2013年には予定よりもかなり早く、総資産が年の生活費の25倍を超える1億円(100万ドル)を超えた。
両学長や高橋ダン、もふもふ不動産などの語るキーワードの多くは本書が始まり
年4%のインデックス株資産切り崩しで、生涯資産を減らさず過ごせるいわゆるトリニティースタディーや、インデックス投資王道のVTI(ヴァンガード社のETF)、現金を万が一の暴落に備えてプールする現金クッションなどは、本書によって初めて日本に伝わったものだと言っていい。
それだけではなく、節約方法や資産運用のメンタルなど、本書から学べることは多い。とてもFIREという特定したテーマの本として紹介するにはもったいない書籍だと言える。
文字通り、お金に関する全ての情報がまとまっている書籍で、さらにお金に関する教育や親との関係、儒教的な初等教育などを考えると、さまざまな面で日本人向きだと言える。
Q:どのような人が読むべきか?
A:私は長らく本書を、FIREに特化した本だと勘違いして敬遠してきた。私自身が別にFIREしたいから資産運用をしているわけでは無いのだ。
だが、読んでみると、お金に関する全てが書いてあった。ので、読むべき人という質問には、一生使いきれない金持ちの子供以外の全ての人、という感じで答えることができる。
しかも、できるだけ幼少期からの記述があるので、小学生くらいから子供に読ませたい書籍だと思う。なかなか子供にまともに読ませることができそうなこの手の書籍は少ない(子供に向けて書かれたふうな書籍は山ほどあるが笑)。
Q:注意点はないか?
A:ある。
本書は、あくまで、右肩上がりの経済成長を遂げて、第二次世界大戦の戦勝国であり、日本の旧支配国でありつつ、覇権国でドルを扱うアメリカの人間の発する情報だ。
確かに日本人がそのまま著者と同じ行動をすればいいかというと、それは全くのデタラメということになりかねない。だが、本書は着実に教科書となる基礎知識を積み上げている。
それに、内容の簡単さから日本流にアレンジするのは難しくないだろう。
また、コロナショック前後で日本の株式投資の敷居がだいぶ下がった。
本書に登場する金融商品は、少し前までは取引できないものが少なくなかったが、今となってはどれも簡単に見つけて購入することができる。しかも、手数料もアメリカ並みに安くなった。
いいタイミングで出版されたこともあり、この本はそれほど疑いの目を向けなくても、再現性が高い作りになっている良書だと言える。
本書はアマゾンオーディブルやオーディオブックで読めます。