米国人の性格を形作る。アメリカ人対策で読むべき米国版「菊と刀」。あらゆる米国分析に必読『話し方入門』デール・カーネギー

オーディオブック

こちらの書籍はオーディオブックやアマゾンオーディブルでも読むことができます。

著者紹介

デール・ブレッケンリッジ・カーネギー(1888年 – 1955年)

アメリカの作家で教師にして、自己啓発、セールス、企業トレーニング、スピーチおよび対人スキルに関する各種コースの開発者。

ミズーリ州の貧しい農家に生まれ、今日でも支持の高いベストセラー『人を動かす』(1936年)の著者として有名である。また、『道は開ける』(1948年)、『知られざるリンカーン』(1932年)なども著している。カーネギーの著書では、他者に対する自己の行動を変えることにより、他者の行動を変えることができる、という考えが柱のひとつとなっている。

本書に関わる雑学
本書『話し方入門』は、著名投資家のウォーレン・バフェットが、苦手だったスピーチの克服だけではなく、文章術や経営者としての部下との関わり方なども変えた書籍であると語った。まさに、伝説的投資家の彼の人生を変えた本として、投資家界隈では知られている。

目次

  • 第1章 勇気と自信を養う
  • 第2章 自信は周到な準備から
  • 第3章 有名演説家はどのように準備したか
  • 第4章 記憶力を増進する
  • 第5章 スピーチの成功に欠かせないもの
  • 第6章 上手な話し方の秘訣
  • 第7章 話し手の態度と人格
  • 第8章 スピーチのはじめ方
  • 第9章 スピーチの終わり方
  • 第10章 わかりやすく話すには
  • 第11章 聴衆に興味を起こさせる方法
  • 第12章 言葉遣いを改善する
  • 訳者あとがき

概要(ブログ主の勝手なまとめ)

ネクラで悲観主義だったアメリカ人を変えたD・カーネギー

1900年代前半のアメリカ合衆国を描いた小説を何か読んだことがあるだろうか?

例えば、スタインベック(『怒りの葡萄』で1962年にノーベル賞受賞)や初期のヘミングウェイ(『老人と海』で1954年にノーベル賞受賞)などがそれらの代表作に当たる。

読んだ人ならわかると思うが、1900〜1930年代くらいまでのアメリカ人は、とてつもなく暗いし悲観主義だった。今の陽気で、自己主張が強いイメージは微塵もないのだ。

それはなぜか? 理由はこの国民的な書籍にある。

大不況時に書かれたカーネギーの三部作を代表する書籍

アメリカ大陸は、コロンブスによる発見のあと、主にヨーロッパ人の下層民族(アイリッシュ・イタリア系など)の追放先、職探しの放出先であり、犯罪人などが多く流された地域だった。

そのため、経済的に豊かになるまでに、欧州の下のポジションで、特にイギリスやドイツ、フランスへの劣等感がすごく、それはある程度の経済発展を遂げた後でも続いた。

本書が出版された1920〜30年代の世界恐慌でもこてんぱんにされたあとのアメリカにも、その空気は重くあった。今のポジティブなアメリカ人のイメージは微塵もなかった。

欧州式の権威主義を拒否。わかりやすさ・効率主義を唱えたアメリカ

簡単にいう。アメリカ人の特徴は、陰湿な小難しいヨーロッパ的な権威主義を否定し、わかりやすさと効率性を重視したポジティブさであり、それらは大恐慌の克服によって生まれたものである。

そして、それが自己啓発書というジャンルを生み出した。

その生みの親の一人が本書の著者:デール・カーネギーである。

『話し方入門』とは何か?:アメリカ版『菊と刀』

アメリカは、他の国に先駆けて、国民全員で政治を運営し、特性の富裕層や権威層ではない国家運営を目指した国である。そのベースとなったのが『パブリック・スピーキング』である。

アメリカ人は、ヨーロッパ人がしないような頻度で、国民が人前で話す機会を作り出した。それがキリスト教会礼拝時の説教(牧師だけでなく、参加者全員がする)や街頭演説、デモなどの民衆運動である。本書『話し方入門』は、この情勢の中でのニーズにより誕生した本だ。

わかりにくい話をした、あなたが悪い=だから努力をしよう

『話し方入門』などのスピーチノウハウ本の登場で、何が変わったのか?

それは、パブリック・スピーキングの評価基準である。つまり『わからないのは話者の責任』だというのを明確にしたのだ。

『話し方入門』は、×話し方の書籍 ◯アカデミック・ライティングの演説導入

『話し方入門』がすごいのは、すでに近代論文の形式を形作っていたところだ。学術論文は世界標準として、その情報の提示の仕方が定義されている(日本人はほとんど知らないが)。

つまり、アカデミック・ライティングの技術が『話し方入門』で導入・一般化された。

  • 要約(本文の内容を要約した文章)→結論を先に言う
  • 序論(背景、研究の動機や意義、成果の位置づけ、重要性など)→興味を誘う
  • 本論(理論、実験、調査の過程及び得られた結果など)→わかりやすく解説・証明
  • 結論(本論で得られたデータの叙述的な説明)→結論を繰り返し印象付ける

この形式は、一般的な人間の脳の理解力と記憶力をベースに生まれたものだ。これをカーネギーは、自らの力で、貧困層も含む大多数のアメリカ人に伝え、一般化した。

「楽しい」「わかりやすい」と「学習」は両立する

本書では、スピーチの内容面から、ゼスチャーやジョーク、絵画的な言い換え方法などのあらゆる「飽きさせない」ノウハウが掲載されている。

古い書籍だが読んだ人は、ここまで人間のコミュニケーションを深掘りしているのに驚くだろう。と、同時に、いかにすれば相手が「眠くならないか」「暇しないか」とか、「一度聞いただけでわかるか」「わかりにくいところをどうやって言い換えて伝えるか」のノウハウも解説している。

また、人前で話す人間の精神性、現代の持つアメリカ人のポジティブさの必要性を説いて、それがあって当然と言うアメリカ人の土台となる基盤を作った痕跡が見て取れる。

『話し方入門』=アメリカ人の民族性がわかる本

結論を言うと、日本人がノウハウを取得するために読む、と言うよりは、アメリカ人がなんであんないい加減でポジティブで攻撃的なのか、を知るのに最適な本だといえる。つまりアメリカ版の『菊と刀』(ルース・ベネディクトが日本占領のために日本人を分析した本)なのだ。

この本を読めば、例えば日本では絶対に総理大臣になれないキャラクターのドナルド・トランプが、なぜ大統領になってしまったのかもよくわかるのだ。

よって、むしろアメリカ対策としてお勧めしたい本である。

Q:どんな人が読むべきか?

A:アメリカの動向を知る前提知識として必読だと思う。

彼らがなぜあのような選挙方法をするのか? 
なぜビジネスであんなミーティングをするのか? 
株式投資家がどうしてああいう行動をするのか? 
戦争とか外交がなんでああもアメリカっぽいのか?
などが、全てこの一冊に集約されている。

もちろん、話し方に自信がない人が読んでも効果があるだろう。

だが、間違ってはいけないのは、日本人が自分の意見を通したり、会社で出世したり、クラスの人気者になる時には、この本とは全く違うノウハウが必要となるということだ。

大衆の前で話を上手にしたい人には役に立つが、そもそも戦後の大衆前のパブリックスピーキングのルールは、アメリカ人が形作って世界の人がそれに勝手に従っているところも大きい。

それよりは遥かに、本書をきっちり裏読みした方が、メリットが大きい。

こちらの書籍はオーディオブックやアマゾンオーディブルでも読むことができます。

タイトルとURLをコピーしました