この記事の執筆者のプロフィール
東京藝術大学映画専攻で修士号取得。2児の父。普段は金融系の書籍の編集をしているが、企画書が通るとその都度、映画監督として映像の現場に身を置く。フリーランスの編集者時代に、ベネッセなどの教育系の出版社との仕事の経験と、自らの子育て経験からたまに育児系の記事をブログで書く。
VYM・HDV・SPYDの運用歴は2020年2月から現在まで。その間、一度も売ったことはなく、値動きはほぼ毎日見続けている。そのほかにも、過去成績に関してずっと調査し続けている。
はじめに
私は、2020年3月の大暴落時に400万円を投入してVYMとHDV、SPYDに投資をすることをスタート。その後一度もうることなく、2021年、2022年は一般NISA枠を使って約120万円分を追加投資する形でこの三つのETFを保持。トータルでの高配当三兄弟の投資資金は1,400万円ほど。
その中で、コロナショック、世界的なロックダウン、ワクチンの開発成功による世界経済の回復期、アフターコロナ、ロシアによるウクライナ侵攻などのさまざまな局面があった。
その中で、この日本でも有名な高配当ETF三兄弟である(VYM・HDV・SPYD)は、それぞれ違った表情を見せており、能力が全然違うのを実感している。
含有銘柄が被っているからといって、運用成績は共通しない
高配当ETF三兄弟である(VYM・HDV・SPYD)はいわゆるバリュー株で構成されており、新鮮なグロース株とは毛色が違う。熟成された、追加の設備投資が少なくて済み、配当に資金を回すことができる銘柄で構成されているため、当然、含有銘柄が似通ってくる。
そこをついて、巷のユーチューバーやブロガーは、銘柄が被っているからVYM(400銘柄)一択でいいとか、逆にHDV(70〜80銘柄)とSPYD(80銘柄)の組み合わせが効率的という話しているケースが目立つ、だがこれは完全に間違いだと言えます。
完全に間違っている世間の認識一覧
- 銘柄が被っているから、SPYD、HDV、VYMを三つ揃えるのは無駄
- SPYDはクソ株の寄せ集め、株価成長があるからVYMを買うのが正しい
- 長期的に見ると、VYM・HDVだけが正しい
では、一体どうやってこの高配当ETF三兄弟(VYM・HDV・SPYD)付き合っていくべきか?
それぞれの特徴を私の考えを述べていこうと思う。ただし、ここでは高配当ETF三兄弟である(VYM・HDV・SPYD)の基本情報はいちいち解説しない。必要に合わせて他で調べてほしい
SPYD:インフレ時はS&P500を上回る

利上げ局面で強いSPYD:好景気が継続すれば増配も継続
ステイトストリートがSPYのスピンオフとして提供しているSPYD(SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF)は、以下の通りの特徴を持っている。
- S&P500高配当指数に連動
- 経費率が0.07%(高配当系最安)
- 米国高配当ETFの中でも最も高い配当利回りを実現
逆にいうと、以下の弱点がある
- エリート市場のクソ株の集合体
- 暴落しやすい
- 銘柄が倒産しやすい
- 値上がりしにくい
- 分配金が減配しやすい
- 危険なリートが入っている
SPYDの銘柄入れ替えの基準として、均等に利回りの高いものを上位80銘柄組み込むというのがある。この特性は、簡単にいうと、株価の伸び率が低い時期にS&P500やVTIなどを上回る成績を収めることがわかった。つまり、インフレ期にピカイチの成績を残す。
- 全ての株に均等に資金を振り分ける
- S&Pの馬鹿にされたクソ銘柄は、インフレ・好景気時にグロース株なみの復活をしやすい
- 株価低迷期に、安定して規模を拡大
SPYDの優れた運用方法とは、大暴落時だけに購入し、この強い時期までホールドし続けるということに尽きる。ではその暴落時とは、どんなものか少しづつ見ていく。
高配当ETF三兄弟で最も買い時が難しいのがSPYD
不況突入期、オイルショックなど局地側面で買うべき:値戻りが最も高速
では、SPYDはいつ買うべきか。実は買い時が高配当ETFで最も難しいのがこのSPYDである。なぜなら、最も暴落レンジが深く、また、値戻しスピードが超高速だからだ。
値戻しが超高速な理由は以下の通り
- 低位株を多く含む:8→10ドルにすぐ戻るが、800→1000ドルにはすぐ戻らない
- 高配当上位は、そもそも業績と無関係:見通しが悪くても値が戻る
- 配当利回りも上昇(4とか5が、10%になる)するので、お買い得感で素人に買われやすい

市場平均暴落時に常に暴落するわけではない
ただし、これまた厄介なのは、SPYDは市場平均が暴落ショックに見舞われても大体3回に一回くらいしか暴落しない、といいう点だ。それは最大80銘柄という数も関係している。
むしろ、暴落率に関しては私の肌感覚だとVYMの方が高い気がする。よく、VYMの方がSPYDよりもディフェンシブだというユーチューバーがいるが、それは間違いだ。400銘柄と80銘柄では、ダーツの的マトな意味でも、80銘柄の方が直撃を回避できることも少なくないのだ。
めんどくさいが、暴落の初動を注視する癖をつける
では、どうするかというと、平時は徹底的に買わないことを貫く。そして、暴落時の初動でSPYDがどう動くのかを見極める癖をつける。という、この二つの対策をするしかない。
そして、初動があった場合は、市場平均の暴落が落ち着くまで要するを見る。
本来なら構成銘柄を常に把握しておいて、そのショックの質を見極めて対策すべきだが、非英語圏の日本人が簡単にできることではない。
そして、市場平均にSPYDが連動して暴落した場合、相場の安定を示す3営業日の上げを見極めてから購入するのが最も安全だろう。
HDV:暴落・不況で鬼の銘柄入れ替え:ピンチに大増配を繰り出す
高利回りをより多く組み込む:複雑怪奇なプログラムを持つHDV

次に、高配当三兄弟の次男的な役割を担うと言われるHDVを見てみよう。
私的にはこのHDVが最も、日本の投資家に誤解されているETFだと感じている。
上記のSPYD全力マンというユーチューバーが、過去にHDVを深く分析しており、私的にはここでの分析が今の日本で一番HDVの要素を深く分析できていると感じる。ただ、分析結果とHDVの特徴の紐付けは、おそらく彼がホールドしている期間が短いので中途半端だ。
これらを踏まえたHDVの主な特徴は以下の通り
- 好財務企業から配当順で70〜80銘柄への投資
- 配当利回りが高いものほど、保有比率が多い
- 三兄弟で最も多い年4回のリバランス
そして、注目してほしいの2番目の『配当利回りが高いものほど、保有比率が多い』と3番目の『年4回のリバランス』である。
HDVの配当履歴

上記を見てもらうとわかるが、米国株が大きく株価を下げたコロナショック(2020)、チャイナショック(2015)に大きく配当額を伸ばし、利回りも急上昇するという特徴が見受けられる。
これは、先に述べた2番目の『配当利回りが高いものほど、保有比率が多い』と3番目の『年4回のリバランス』が作用して、効率よく高配当株を底値で拾うという機能が作動した形跡でもある。
これに関しては2022年9月の直近の60%の増配でも同様のことが言えるだろう。米国の利上げやロシア情勢の不安定さが、言い方に作用しているのだ。
値動きが緩く、株価も上昇傾向でいつでも買いやすいHDV
以上が主だったHDVの特徴だが、それに加えて、いつ買っても大損しにくいというのも実はHDVの特徴だと言える。よって、買いたいものがない時に買っても火傷を負いにくいETFとしても重宝する。

買い時がわからない時に買う:VYM
最後に、米国株の中から平均以上の配当を出す400銘柄を時価総額加重型で購入するVYMについて。このETFはいわゆる安定型という言われ方をしているが、高配当ETF(SPYD・HDV・VYM)の3者を買っている人にとっては、付き合い方の最終結論のようなものは導き出される。
VYMの付き合い方
- 買い方の難易度 SPYD→HDV→VYM
- ただしSPYD・HDVに負ける局面が多々ある
- 常に増配する
- ただし大幅増配はない
- タイミング購入ではSPYDやHDVを上回ることはほぼない
- 若い人が長期ホールドするのに向いている
- 逆に言えば、SPYDとHDVは、タイミングで時間の差を埋められる
VYMはインデックスファンドであるVTIやSPY、VOOに限りなく近い株価値動きをする高配当ETFだ。だからと言って、これらのインデックスファンドより優れているかというそうでもない。
むしろ、SPYDやHDVに抜かれる局面も多々ある。ただ言えることは、難しい付き合い方をしなくていい。買う時に緊張しなくていい安定さ、つまり継続的に微増配をするという側面がある。

まとめ
以下、まとめとして要点だけ書く。
- 大不況・暴落時に逆張りするSPYD(好景気ETF)
- 景気と無関係な価格低迷時に拾うHDV(暴落時に頑張るリスク資産ETF)
- 積立専用VYM(10年以上ホールドのダラダラETF)
最初にも述べたが、構成銘柄が重複しているからと言って、性質が似ているということはない。むしろ、高配当三兄弟のSPYD、HDV、VYMは、全くの別人で似てすらいない。黒人、宇宙人、犬、くらい全然違う。
ゆえに、使いこなし、短時間でリッチに貼るためには性質を正しく把握することが必須となる。この記事の中で書かれていることは、私がこれらの3年近くETFを長期ホールドしてようやくわかったことを、やや暴力的に極端にまとめたものだ。
ぜひ参考にしてもらいたい。