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著者紹介
高橋 ダン(たかはし ダン、英: Dan Takahashi、1985年7月 -)
日本の投資家、起業家。DKT株式会社創業者、CEO。東京都生まれ。YouTubeと自身が運営するPostPrimeにて投資についての解説をする番組を配信している。
本書に沿ったプロフィール
コーネル大学を成績優秀者として卒業後、21歳の時にモルガン・スタンレーに入社。トレーダーへの転身ができずに、わずか2年弱で退職。その後、ヘッジファンドに転職し、日本市場とコモディティ市場をメインとした裁定取引などを専門に行うトレーダーとして従事。
26歳の時には、メンターらと共にヘッジファンドを設立。28歳の時に、10分で8億円の損失を計上し、損失補填まで12ヶ月かかる。
30歳で自分の持ち株を売却し、シンガポールへ移住した。その後、東南アジアにおいて不動産投資や鉱山や貴金属に投資する会社を経営(不動産投資は失敗したと書かれている)。
約60カ国を旅した後、2019年秋に日本に帰国。2020年初頭にグローバルの金融や経済を解説するYouTubeチャンネルを開設し、2021年にはPostPrimeを設立。現在に至る。
目次
- 1 億り人になるための8つの法則―ウォール街で得た知識をすべて伝えたい
- 2 ウォール街から東南アジア、そして日本へ
- 3 ライオン戦略1 億り人に必要な資産を知る
- 4 ライオン戦略2 ベースは本気の長期積み立て
- 5 ライオン戦略3 短期投資でパフォーマンスを上げる
- 6 ライオン戦略4 チャート、テクニカル分析
概要(ブログ主の勝手なまとめ)
本書が刊行される3ヶ月前に発行された『世界のお金持ちが実践するお金の増やし方』(2020年9月16日、かんき出版)の焼き直しだが、かんき出版の編集者が力量がなく、彼の悪い面ばかりが目立ったのに対し、本書『僕がウォール街で学んだ勝利の投資術 億り人へのパスポート渡します』は、金融に詳しく、優秀な編集者が編纂した可能性が高い。
『僕がウォール街で学んだ勝利の投資術 億り人へのパスポート渡します』が10点だとすると、『世界のお金持ちが実践するお金の増やし方』は2点くらいのひどい本だ。
ダメな編集者がつくと、ダメな本に仕上がり、それが金融系の内容になってしまうとかなりひどい状態になることの恒例だと思う。本書は、第6章(テクニカル)以外はおすすめできる。
関連記事:リベ大の両学長を意識しすぎ、偏った&誤った知識を流布。でも良い面も若干。全体的に残念な本『世界のお金持ちが実践するお金の増やし方』高橋ダン
現代の株式投資はインデックス全盛:トレーダーは全滅
前回も触れたが、再度、トレーダーという人種について触れておく。
AIに仕事を奪われた元ゴールドマンの株トレーダー、いまは何をしている?=矢口新
かつて米証券会社大手ゴールドマン・サックスには500名のトレーダーが在籍していたが、AIトレードの普及で今では3名になっている。彼らはどこに流れたのか…。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)
上記の機序通り、現代のトレーダーとは、つまりAIプログラム(通称アルゴ)だと言われている。
実際にそうらしい。ただ、金融商品を作成することも含めたディレクター的トレーダーは今も存在している。それは、巨大な証券銀行に属しているエリート社員のことだ。
(これには機関投資家も含まれる)
これは、高橋ダンのようなヘッジファンドのトレーダーポジションではない。高橋ダンは、最初に大手銀行のモルガン・スタンレーの営業職だったので、勘違いしている人がいるが、彼は一度も機関投資家だったこともない。
高橋ダンは、ファンダメンタルを読まないのではなく「読めない」可能性が高い
本書でも彼は、いろいろと誤魔化しているので書いておく。
高橋ダンは『ファンダメンタルは、市場でどんな時もすでに織り込まれているので、使わないし、(決算短信などを)読んでも意味がない』と公言している。
だが、米国では、実はファンダメンタルの市場の折込み速度は、速くはない。それに、誤読があったりし、再調整なども頻発している。つまり、アメリカの金融業界で働く人は、そこそこファンダメンタルを読めない。金融エリートであっても、決算短信をきちんと読める人間はかなり少数派だ。
ましてやモルスタの営業を新卒2年でやめているのであれば、テンケー(米国決算短信)を読み込めるようになる前にファンダメンタル市場から撤退しているに等しい。
また、高橋ダンのYouTubeチャンネルをほぼ全部見ているが、彼がテンケーを見ながら話しているところを私は見たことがない。つまり、彼は基本的にファンダメンタル逃げのチャーティストなのだ。
決算資料を読めなくてOK。本書の長期投資方法は役立つことが、多く書いてある
そんな彼のことだから、逆言えば、彼のいう“テクニカルを除いた”本書のライオン戦略は、実に初心者に優しい、米国個人投資家の鉄則がまとめられている。ここは非常に役に立つ。
これは彼にとって恥ずかしく・認めたくないことだろうが、彼が“市場を知る”素人レベルだから、素人にいい本になっているのが本書だと言える。
MACD・RSI・ボリンジャーバンドは、使えない
最後に、第6章のテクニカルに関してだが、ここは個人的に読まなくてもいいと思う。
高橋ダンは『ボクのMACD、RSI、ボリンジャーバンドの使い方は独特。というか、世間一般の使い方は間違いだらけ』という、スタンスが何を表しているか?
勘のいい人ならわかると思うが、これは、MACD、RSI、ボリンジャーバンドというものが全くのいい加減なもので、使えず、使用者がただ酔っているだけ指標ということを逆に暴露している。
大手トレーダーや機関投資家は「移動平均線」しか使わない
AIのアルゴリズムや資金管理をする形で、全滅したトレーダーが、いわゆる投資部門長としてまだ、ごくわずかだが、投資銀行に生き残っている。
これに加えて、大銀行の機関投資家が、市場でうごめく、個人投資家以外の専業の株式担当者ということになる。その数は、二つを足しても10年前の数百分の1だろう。
MACD、RSI、ボリンジャーバンドの各種ツールは、2000年代後半のアルゴリズムや金融緩和マネーの登場でほぼ死滅した。今使うと、逆にトラップになってしまう可能性がある。
今のテクニカルは実質「移動平均線」という、1年〜6ヶ月でチャートを見るアナログな手法のみだ。これに関しても本書でわかりやすく書かれているので、そこは熟読してほしい。
Q:前作『世界のお金持ちが実践するお金の増やし方』(2020年9月16日、かんき出版)との違いは何か?
A:前作との大きな違いは、高橋ダンという存在が、日本人にとってどういうメリットがあるか?を丁寧に書いているところだと思う。ここは読み応えがある。
私は、彼のクソみたいなテクニカル談話は嫌いだ。そして、この本の編集者である角川の人間も、おそらく同じ考えだと思う。なぜなら、本書は高橋ダンのテクニカル節はたったの一章分(第六章)だけだ。しかもかなり端折っており、これを読んでテクニカルを使う人はおそらく少ない。
それ以外は、高橋ダンという人間の特殊な人間性にスポットが当たっている。
テクニカルにこだわる限り、高橋ダンという人間は日本人に悪戯に大損をこかせるだけの害悪でしかないが、投資全体の考え(例えばライオン戦略とか)は、実は日本人にとても必要な考えだと思う。
そもそも、日本人にとって彼が来てくれたことは、かなりハッピーなことは間違いない。
そういう傾向がある本書は、前作と内容は全く同じでも、意味的に全然違う。


Q:巷で高橋ダンは嫌われているが、彼が日本人を裏切る可能性はないか?
A:私個人的には、あまりその心配はしなくてもいいと思う。
ただ、サッカー日本代表監督のジーコのように、日本サッカーの父みたいな扱いをされていたのに、最後に決別して以来、ずっと日本を敬遠するような存在になってしまう可能性はある。
それでも、日本でまず、投資の啓蒙をすること自体が、とんでもなくリスクが高い。
それに彼は、自分の肩書きを大ぴら(怪しい肩書きでもあるが)にしながら、さらに大きなリスクをとりながら啓蒙をしている。
YouTubeに関して言えば、彼は2年間ずっと1日に5-6本の動画を平均して出しており、これは「金が欲しい」だけではできない作業だと思う。そこは私も評価している。
本書は、そんな「あやしまれ損」の高橋ダンをフォローする作りになっている。角川の編集者が、中長期的に本を売れやすくするため、そこのゾーンを狙って作ったのだろう。
彼の性格や発言とは別に、高橋ダンという存在の有用性を考えたい、そんな人に向けた本だ。
私はお勧めしたいと思う。
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