著者紹介

ジム・クウィック
学習・記憶コーチ
記憶力の改善、加速学習の分野で知られる世界的エキスパート。幼少期に学習困難に悩まされるも、学習のパフォーマンスを劇的に高める手法を開発。以来、コーチング歴20年以上。グーグル、ヴァージン・グループ、ナイキ、ザッポス・ドットコム、スペースX、ゼネラル・エレクトリック、20世紀フォックス、国際連合、カリフォルニア工科大学、ハーバード大学、シンギュラリティ・ユニバーシティなどの機関まで実績は多岐にわたる
記憶・読書法・自分に最適な学習法の探究(コンプレックス解消)
本書は主に、読者の経験談とメソッドで構成されている。
そしてそのメソッドは、記憶法・読書法・学習法の3分野だ。
いずれも身体的かつ科学的なエビデンスが豊富で、納得がいくものが多い。メソッドに関しては、具体的なワークアウト・プログラム例(25分学習法)もあり、試してみることができる。
学校では覚える方法、記憶の定着法を教えない
本書は、主に学校・大学教育の欠損した部分を、自分たちでいかに考えていくかという概念で構成されている。その具体的なものは、例えば学校は記憶する素材のバラマキはするが、それらがどうすれば記憶に定着するか、どういう記憶方法が適しているか、みたいなことは全く教えない。
著者は、自らの学習能力・記憶能力が低下するとある経験により、これらを自分で探求する必要があった。だから、それらのバリエーションを驚くほど多彩に持っている。
例:車種を多く記憶できる人は、エンジン音、デザイン、手触り、内装なども記憶している
本書の例で登場するのは、人間は幼少期の記憶を長期間忘れずにいるケースが多く、それらには匂いであったり、ヒーロー的な荒唐無稽なストーリーであったり、いろんな情報が紐づいている場合が多いということを示す。つまり、覚える内容が4文字2キロバイトのものより、映像・手触りの5ギガくらいのものの方が、よっぽど沢山記憶に残るという人間の記憶能力の不思議さである。これは容量が軽ければたくさん放り込めるパソコンと全く逆で面白いところである。
可能な限り五感と結びつけて記憶する訓練をする
本書ではこの例をもとに、自らいかにして五感と結びつけた記憶を訓練して実践し、ときには自ら自分いあった記憶方法を考案するところまで教えてくれる。この辺は、とても感動すると思う。
読書の邪魔とサブローカライゼーション(声変換)を解除する
人間はなぜ読書が遅いのか?
逆にいえば、なぜ、読書が異常に速い人がいるのか?
その辺についても本書は実に明確に答えている。
その理由は以下のふたつだ。
- 返り読みを無意識的にしている
- サブローカライゼーション(声変換)が起きている
本を読むのが遅い人の代表例は、無意識の戻り読みである。
これを克服するには、例えば指でなぞりながら読むだけでもものすごくスピードが改善する。だが、もっというと、文字を図形として、ぼんやりとした意味として把握する訓練方法が必要である。この辺は、本書に具体的なメソッドが書かれているので読んで欲しい。
また、先程の車の記憶の例にも戻るが、車に詳しければ詳しい人ほど、その車のボディのデザイン・質感、エンジン音、ステアリング、内装を瞬時に思い出せる。それはなぜかというと、記憶は文字ではないからだ。それに対して、普通の人間は記憶をするために文字変換がマストだと勘違いしている。場合によっては、理解度を上げるために頭の中で自分の声に置き換えたりする。これが、記憶を妨げていると筆者は語る。納得である。だが、どうすればいいのか?それに関しても本書に書かれてある。
天才を類型化して、自分と類似する学習方法を探す
最後に、自分は勉強ができない、あるいは才能がない、というネガティブなイメージを持っている人に向けたメソッドも本書には書かれている。
自分の能力を固定してしまうこれらの自己問いかけを、本書ではセルフトークと定義しており、これがあるためにどんなことをしても、良い結果を残せない人が多いらしい。ではどうするか?
本書の一例を出すと、過去の天才たちを細かく分類して、自分が誰のタイプかを考えることだと解説している。例えば、勉強があまり出来ずに夢想家のところがある場合はアインシュタインタイプ、泥臭くても強い意志を持って継続できる人はヘレンケラータイプなどといった具合につけていくのだ。
これによって、自分にあった学習パターンがわかるだけではなく、自身の中にあるコンプレックスも消えていくという。
このような形で、本書にはあらゆる痒いところに手が届く、学習能力を拡張していくノウハウが書かれている。ちょっと長い書籍だが、本書を読むことで、その後はいろんなことの時間短縮なることは間違いない。そういう意味でも、眠くならず、ハンズフリーで繰り返し読むことが可能な、オーディオブック版がおすすめである。