いよいよだが、不動産という、詐欺が横行し、個人投資家を食い物にしてきた業界を暴露し、時代を変革する作品としての道を歩んでいるこのシリーズを本格的に取り上げたいと思う。
本書『正直不動産』(1)(2)読むべき人
- 都心・人気エリアで部屋を賃貸している人
- 不動産投資に興味がある人
- 親の家や土地資産を相続する可能性のある人

『正直不動産』(1)内容
- タタリで嘘がつけなくなった不動産営業の話
- 環境・情勢の悪化により、ヒアリングが必要になってくる傾向
- 空家数増加・人口減少に挑んだ内容
- 過剰な演出はあるもの、かなりリアルな内容
登場する項目
- サブリース
- 敷金・礼金(オーナー嫌がらせ激安物件)
- 現状復帰
- 囲い込み
- 売却(専任・一般)
- 店舗物件
- 三為(前半部)
関連記事:『正直不動産、読んでます』で詐欺から身を守れ。現代を生き抜く防御マンガ。正直不動産:全巻解説
私の所属する大家の会で非常に好評だったっため読んでみることに。
内容は、上記の通り。
嘘がまかり通っていた不動産業界にて、ほこらを壊したことでタタられた優秀嘘付き営業マンが、「嘘をつけなくなる」というストーリー。ただ、この裏には、バブル信仰がもたらした、営業スタイルの転換も込められている。
人口減に伴う空き家率急増が見込まれ、コンクリート物件の老朽化や、タワーマンションの問題、楽待・健美家といった情報サイトの充実化による業界内の暴露など、今後バブリーな嘘つき営業スタイルを阻害する要素が増える中、現実より先に「漫画がパラダイムシフトを予想」する内容となっている。
小学館はかなりのリスクを冒してこのシリーズを出している
タタリで嘘をつけなくなった主人公の永瀬は、馬鹿正直な新人、月下と組むことになり、物語はこの「チーム正直」で動くことになる。
漫画のバランスを維持するため、過剰な演出と主人公が逸脱しない作りとなっているが、ところどころで、かなりリアルな局面も出てくる。また、漫画の巻末にある企画者とシナリオを担当する夏原武氏のコラムもかなり読み応えがある。全体的に、この著書を読むと「不動産投資をしたくなくなる」という傾向はあるが、それでも今後、注目するべき本だと言える。

『正直不動産』(2)内容
- 主人公の永瀬は正直さゆえに売り上げは急降下
- それに対して営業ナンバーワンがクビ
- 現実ではありえない設定だが、大地主が入社という展開
扱われる項目
- 中間省略(三為 前号の続き)
- 建築条件付土地売買
- 瑕疵担保(土地)
- 瑕疵担保(殺人)
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内容が一気に過激化
結果的に、2巻を読む限り1巻は手ぬるいことに気がつく。この巻から急速に実務面が強くなるのだ。
主人公の永瀬は引き続き、神社にお祓いに行くわけでもなく、タタリが継続したまま、馬鹿正直に営業を重ねる。扱う物件は、物の見事に問題山積みの物件ばかり。
中盤で大地主の息子(藤原課長)が入社してくる。この地主が、問題を大量に抱えた物件を、さらに問題を増やして、それを問題のある売主にドンドン売っていく。
現実の世界では、というか、特に関東近隣ではこのような大地主が多い、というイメージで藤原キャラクターが造形されている。
過激なキャラクターたちが現実感を一気に引き寄せる
過剰なキャラクターが登場したことで、私的には若干、浮世離れし始めた感じがするが、そこで扱う瑕疵担保や告示事項などは、そのくらいでやらないと一般人に対してキャッチーにはならない。
おそらくこの作品の方向性が固まってきたのだなあ、と感じる。
1巻のように問題の解決方法や対処方法は、提示されることなく、問題が問題を呼ぶ物語の設計。正直、不動産投資をする初心者には、あまり為にならないエンタメの様相を呈してきている。
だが、人物の描き方の側面で、これはまさに不動産業を「生業」だと感じて労働している、長期従業者の真理に迫っている。
つまり、不動産を「接客業」として、この2巻からはかなり正確にみることができるようになったと感じる。