読まなければ。と思っている人必見。古典的名著解読『カラマーゾフの兄弟』はどんな人が読むべきか?

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出版情報

著者:フョードル・ドストエフスキー(1821〜1881)

ロシアの小説家・思想家である。代表作は『罪と罰』『白痴』『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』など。レフ・トルストイ、イワン・ツルゲーネフと並び、19世紀後半のロシア小説を代表する文豪である。

出版:1879年〜1880年にかけて執筆・連載

本書を読んだほうがいい人

  • 歴史的大著と呼ばれるものを、人生で一つは読んでおきたい人
  • 10代の学生
  • 相続の弁護士、資産家・金融業界で働く人
  • スッチーや水商売など男性を数倍相手にする仕事に従事する女性

ロシアが共産主義化する前書かれた書籍

本書が書かれたのは、ロシアが2月革命でソビエト連邦になる約40年前だ。だが、当時から既に、社会主義への傾倒がインテリ層にあったのか、本書は後半の残り10ページほどでかなり違和感のある形で社会主義的なクライマックスとなる。そういう意味では、のちのロシアの革命に影響を与えた書籍なのかもしれない。だがそれ故に、その後半部は現代人が読む限り、違和感がある。

資本家の父、長男、次男、三男の関係を描いた

単純な話としては、本書は金持ちの家族の話である。だが、何が面白いかというと、金持ちの家族のほうが、一般人より金で苦しむ、という描写で埋め尽くされているところだと思う。貧困層の間では、いつの時代でもアンハッピーな裕福層のストーリーが好まれる傾向がある。

ユダヤ人が迫害が始まった時期に、裕福層の話のヒットが増えた

政治的な側面でも、富裕層を描いた意味は大きいと思う。
1900年代に入ってユダヤ人が本格的に迫害始める前の時期の書籍であるが、本書でもこの一家は、職業や性質的にユダヤ的な要素を持っている。特にこの時期は、名指しはせずに、ユダヤ人を批判的に描くことでなにがしかの支持を得られた可能性は高い。そのような芸術作品が世の中に同時多発し始めた時期でもある。
そういう面で暗喩的な芸術作品は、ヨーロッパやロシアのものとしても、主流でありオーソドックスなものだと言っていいだろう。

テーマは性欲。男は生涯20代女性が性欲対象

これはネタバレになるが、本書構成は一人の女性を親と子で奪い合うという形式を取る。日本で言うと、源氏物語などの型と同じである。
一般女性は、えてして男性の性欲の真実、つまり男性は生涯にわたって”二十代の若い女性が性欲の対象”である事実を、きちんと頭で理解しようとせず、反射神経でばかり反応しているが、本書はその意味で女性をターゲットとはしていない。つまり、本書は男性対象の小説だ。
しかしながら、逆の意味で、男性を知るのにはベストでかつ、世界的にも歴史的にも重厚な扱いを受けていることから、無駄のない教則本となり得る。その意味で、私としては水商売など、通常よりも何倍もの男性を相手にする必要のある商売に従事する女性には、いい作品だと思う。

現代人が受け取れるメッセージは? 相続の困難さ

現代人でも通じるところは、親の遺産をどう考えて、息子たちは暮らすべきか、親と接すべきか、と言う点に尽きると思う。さまざまな状況は現代に通じていない。そのエキゾチックさは、歴史的な小旅行を得るくらいの楽しさはあるが、それだと読み続けるには少々、ページがありすぎる。

だが、この本には、資産家(しかも意地汚い)を持つ、自分たちを真っ当だと思っている3タイプの息子(1:陽気でアグレッシブ、2:インテリで皮肉屋、3:普通でおとなしい)が登場し、一般人ならその息子像のどれかには大体当てはまる。また、面白いのが、父の金が盗まれると言う後半の展開で、家族と近しい友人や関係者の反応も、かなり詳細に描かれているところである。

それはそうである。これは、ドフトエフスキーがロシアで当時起きた親殺しの事件をベースに、様々なケースの親殺しを取材して書いたもので、親子関係のイザコザのある種、普遍的な要素がてんこ盛りなのだから。

実際、資産家がなくなり、子供がその遺産を争ったりした場合は、現代でもこの小説に書かれている状況になるケースは間違いなく多いと思う。そう言う面で、親が存命中の人や時間を持て余している若いときに読んでおくと、かなり有意義な小説だと思う。

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