『正直不動産』(9)(10)を読むべき人
- 管理費・修繕積立金が高騰しているマンションに住んでいる人
- 近々賃貸から引越しする人
- 賃貸物件からの退去で過大な請求を受けたことがある人
- 武蔵小杉のタワーマンションに住んでいる人
- その他、風評被害を物件で受けたことがある人
コロナ初期に描かれた巻
正直、この(9)(10)に関しては、ここまでずっと読んできた(3)や(5)(6)のような熱量はない。それはおそらく、このセットに関してはコロナが発生した時期に書かれたと言うのも大きいと思う。世の中がどうなるのかわからない。また、新規案件も激減し、実際に漫画の世界であってもあげける内容が減ったのかもしれない。それでも、いずれの項目も基礎的な内容だ。

『正直不動産』(9)内容
- フラット35
- 管理費滞納マンション
- 水害マンション
- 搾取マンション
- 通行地役権
関連記事:『正直不動産、読んでます』で詐欺から身を守れ。現代を生き抜く防御マンガ。正直不動産:全巻解説
舞台は武蔵小杉。ウンコ逆流マンションが辿った売買末路
具体名は伏せて置かれているが、ダイレクトに武蔵小杉の水害マンション問題を扱っている。
ここを読めば不動産は、実は噂や風評に弱い資産であることがわかる。しかしながら、出口戦略を間違えなければ、ある程度は危険を回避できる。ここでは、不幸にも水害後にタワーマンションを手放さなければいけなくなった夫婦の話が出てくる。
財閥系のマンションに多い高額管理費の『搾取マンション』
しかしながら個人的には最も面白かったのはこの『搾取マンション』の内容である。通常、一般人はマンションを購入する経験を得るまではこの『搾取マンション』の恐怖に気がつかない。そして、本書でも触れられているが、管理組合の惰性、財閥系の管理会社の暗躍などによって高額化した管理費を適切な水準まで下げるには、国の力を借りるしかないと言う結論に誰もが驚愕するであろう。
管理会社の現実社会での内幕は恐ろしい
ここで、私の知っている漫画には載っていない情報を一つ。
現在、日本には巨大なマンション管理市場が存在している。
管理会社が足りていない。ましてや、財閥系の管理会社の信用度は高く、それによって巨大なぼったくり産業となっている。また、規模の大きい管理会社が小さな良質の管理会社を広告費を使って潰すと言うことが日常茶飯事で起きている。そこまではこの漫画は描けなかった。だが、この問題はマンション事情の中で、間違いなく第一位の飛び抜けて恐ろしい問題である。今後、この問題でもう一度踏み込んでチャレンジしてもらうことを期待している。

『正直不動産』(10)内容
- 通行地役権
- 眺望悪化マンション
- 原状回復
- 未公開物件
- 狭小物件
関連記事:『正直不動産、読んでます』で詐欺から身を守れ。現代を生き抜く防御マンガ。正直不動産:全巻解説
注目すべきは120年ぶりの民法改正により変わった「原状回復」
一時期報道されたが、不動産屋は都合が悪いのでひた隠しにしているのが、民法改正による「原状回復」のトピックだ。当然、『正直不動産』内では1トピックのみだが、実際は多岐にわたる。ただ、その内容をざっと知るには本書は役に立つ。あとは、経済系ユーチューバーのリベ大などで詳細を知るのがいいと思う。
強引な展開が少しずつ増え始め、劣化が懸念される
狭小物件や未公開物件のトピックは、あまり現実味がなかったり、これまでのトピックの焼き直し感が見られる。この『正直不動産』は、全て案件名で章立てをしているため、いつかネタがなくなるか、ネタによっては取り扱っても面白みのないものばかりになるリスクが待ち受けている。ただ、それでも、日常生活にリンクしている部分はあり、追っていく必要はある程度あるのでは、と思う。