逃げ切り年金世代を癒すために書かれた本。読む必要はほとんどない。『Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法』ロルフ・ドベリ

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著者紹介

ロルフ・ドベリ

1966年、スイス生まれ。 スイス、ザンクトガレン大学で経営学と哲学を学び、博士号を取得。 スイス航空会社の複数の子会社で最高財務責任者、最高経営責任者を歴任後、ビジネス書籍の要約を提供する世界最大規模のオンライン・ライブラリー「getAbstract」を設立。

目次(長すぎるので抜粋)


・なんでも柔軟に修正しよう──完璧な条件設定が存在しないわけ
・大事な決断をするときは、十分な選択肢を検討しよう──最初に「全体図」を把握する
・戦略的に「頑固」になろう──「宣誓」することの強さを知る
必要なテクノロジー以外は持たない──それは時間の短縮か? 浪費か?
・幸せを台無しにするような要因を取り除こう──問題を避けて手に入れる豊かさ
・自分の感情に従うのはやめよう──自分の気持ちから距離を置く方法
買い物は控えめにしよう──「モノ」より「経験」にお金を使ったほうがいい理由
・自分の向き不向きの境目をはっきりさせよう──「能力の輪」をつくる
静かな生活を大事にしよう──冒険好きな人より、退屈な人のほうが成功する
SNSの評価から離れよう──自分の中にある基準を見つける
・自分と波長の合う相手を選ぼう──自分は変えられても、他人は変えられない
性急に意見を述べるのはやめよう──意見がないほうが人生がよくなる理由
・嫉妬を上手にコントロールしよう──自分を他人と比較しない
・解決よりも、予防をしよう──賢明さとは「予防措置」をほどこすこと
・「心の引き算」をしよう──自分の幸せに気づくための戦略
組織に属さない人たちと交流を持とう──組織外の友人がもたらしてくれるもの
内なる成功を目指そう──物質的な成功より内面の充実のほうが大事なわけ

など、52項目(も)ある

概要

今の人生は複雑化しすぎて、疲れ果てる。
それをとにかくシンプルにするべきだ。

が、本書の概要だと言える。

その中で、
ITはやめよう(PCスマホは見ないように)
嫉妬をコントロールしよう
ネットで買い物をするのはやめよう
……やめよう、……やめよう、
新しいことは大体やめよう……、的なことを繰り返す。

もちろん、正しくて建設的なことも多く書かれており、なるほどと思うものはあるにはある。52項目もあり、とんでもなく長いのでそれくらいのことはできるだろう

だが、本書に書かれていることは、若年層は特に、老人から言われすぎてうんざりしているものばかりだ。しかも、タイトルにあるように『最新の研究結果から〜』というには、あまりにも古すぎるように思えるしエビデンスはほとんど示されない無責任ぶりだ。

全体的に、とってもトンチキでとんまな本だ。

この本が書かれた背景は?

ではなぜこの本が書かれたのか? を考えてみる。

その答えは、時代に取り残された人を癒す、ということだと思う。

それは、時代に取り残された人ほど、それなりの生活安定性と財産を持つというケースが少なくなく、社会生活をしているとそういう人が、人口の割合でも恐ろしいほど多いのは実感できるだろう

実はそのゾーンに向けて権威的な人の著作を出してほしいと、むしろ(私たち)編集者サイドが思っているのだ。日本の出版界は、ずっとそれをやってきた。

そして、私はこれが日本人だけだと思っていたが、本書で世界的に起きていることだと知った。それだけ、IT革命はあるゾーンの“人間の精神や脳みそ”を世界一斉に破壊したのだろう。

無料画像サイトで「Cleary」でイメージ検索して出てきた画像その1

Q:なぜそこまで悪くいうのか?

A:私は編集者なので実感があるが、出版社によってはこういう本が、編集会議で通りやすいのは間違いない。また、アマゾンレビューを見てみるとわかるが、Amazonで購入していないのにかかわらず、レビューをだいぶ真剣に買いている人が多い。これが何を意味するか冷静に考えてほしい(ネトウヨと仕組みはかなり似ているのではないかと、私は疑念を持っている※詳しくは言わない)。

また、同書の結末で、著者による責任は私が全て持つから、正直に評価してほしいというような問いかけもったので、正直に書いてみようというつもりになった。できたらこういうアフェリエイト的には単なる徒労でしかないことはしたくない。

Q:著作のダメさはわかった。なぜそれを紹介するのか?

A:サンマーク出版の『Think〜』シリーズは、名著もあるが、こういう駄作も出すので、ノリで買っている人に事前に伝えておきたいと思ったからだ。特に『Think CIVILITY「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』は、同シリーズの中でもかなり良書だった。

とはいえ、保守的な考えが強く、人生に積極的ではないという意味では、『Think CIVILITY』も同書も一緒で、ひどいところはある。もっというと、『Think CIVILITY』は、たまたま時代に適合しているだけで、10年前だったらクソ本の類に入りかねない。

私は、その点を事前に伝えておきたいと思う。

この記事のようなレビューを書くからには、責任を追わなければいけない。読む人による〜、などという日本では常識的だが「変なこと」を私は言わない。

それに、この書籍はそれなりに値段が高い。無駄な出費はするべきではない。

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Q:あえていいところを書けるか?

A:能力の輪という考え方は、スティーブン・コヴィー『7つの習慣』の影響力の輪のパクリだが、まあまあ納得できる。それに必要だとも思う。

あなたの周りにも、最新ツールを使って周囲に一方的に仕事の指示とかを出す割に、本人が忙しすぎて、全然捕まらず、責任が取れない「トラブルばっかりを引き起こす、部長とかリーダー、上司」はわんさかいるだろう。そういう人間による被害というのは、IT革命特有のものである。

同書はITによって肥大化した、情報力というか影響力の範囲について警鐘を徹底的に鳴らしている書籍だ。これは、ある種、現実社会に求められている。これから求められていくことだと思う。

Q:それでも本書を買いたい人に一言

A:別に止めない。

特に、リタイアした途端、元部下にも息子にも孫にも、そして妻にも無視される団塊世代が日本にはほんと尋常じゃないくらい存在している。そういう人は、この本を読んだり、進めたりして、自分の正当性を示すのも一つのお金の使い道だろう。

だが、今の若い世代は、そんな甘い世の中では生きていない。

もっと混沌として、恐ろしい世の中に生きている。その苦しさは、本書を買って読んで感心するような人間には一生わからないだろう。それが嫌なら、どうか、そのお金で他の本を、できたらあなたに抵抗感があるような本を買ってほしい。

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